自分のお店ではお気に入りの音楽を流して、心地よい空間を作りたいもの。しかし店舗内でBGMを流す際は、著作権に気をつけなければなりません。トラブルを回避し、安心して音楽を楽しむにはどうすればいいのでしょうか?

著作権制度の仕組みとは?

はじめに、著作権制度の仕組みを説明していきます。

著作権を侵害するとどうなる?

まず、音楽の営利目的での無断利用は、著作権の侵害にあたります。著作権を侵害してしまうと、それによって発生した損害の賠償を著作権者から求められるだけでなく、刑罰の対象にもなるため10年以下の懲役または1,000万円(以下の罰金(またはその両方)、法人の場合は3億円以下の罰金の対象になります。

著作権の侵害は一部を除き、権利者の告訴を必要とする「親告罪」です。しかしそれをいいことに「バレなければ……」と放っておくと、大きなトラブルに繋がる可能性もありますので十分に注意しましょう。

店内BGMとしての使用も「営利目的」扱い

ここで気をつけたいのが、たとえ自分で購入したCDを店内BGMとして無料で流す場合も営利目的と見なされ、許可なく無断で使用した場合には著作権侵害になるということです。

JASRAC(日本音楽著作権協会)などの一部の管理事業者は、当面の間、従業員のみが視聴する場所や医療や福祉、教育機関などの使用の場合には使用料を免除していますが、そのような免除をしていない管理事業者もあり、またルールが変わる可能性もありますので注意が必要です。

実際に2017年には店内BGMの使用料を払わなかった理容店をJASRACが提訴。翌年3月には全国初となる判決が札幌地裁で言い渡され、著作権侵害による支払い命令が下されています。

著作権とその保護期間

そもそも著作権とは、特許権や商標権などを含む産業財産権と同じ「知的財産権」の一つで、文学や美術、音楽作品といった著作物の作者である「著作者」に与えられる権利のことです。産業財産権とは異なり、申請や登録の必要はなく、著作物が創作された時点で自動的に権利が発生するのが特徴です。

なお著作権には保護期間が設けられており、著作者が死亡した年の翌1月1日から70年が経過すると権利が消滅(一部の著作物は公表後70年)します。そしてその後は原則として許諾なしで利用することのできる著作物「パブリック・ドメイン(P.D.)」へと切り替わります。

著作権をクリアして店内BGMを流す方法

それでは著作権を侵害せずに店内で音楽を流すには、どうしたらいいのでしょうか。

著作権管理団体に申し込む

購入した市販のCDを店内で流すには、作曲者や作詞者といった著作者から利用許諾を得る必要があります。しかし著作者がみずからすべての作品の権利を管理し、一つ一つの利用申請に応えることはごく稀です。ほとんどの場合、著作者本人や音楽出版者などからの委託により、著作権管理団体が代わりに著作権者として管理を行なっています。その代表的な団体がJASRACです。

JASRACと包括契約を結ぶと、同団体が管理している楽曲をすべて使用することができるようになるため、購入したCDに収録された楽曲の著作権をJASRACが管理していれば、店内で流せるようになります。なおJASRACでは海外の著作権管理団体とも互いのレパートリーを管理し合う契約を結んでいるので、外国の音楽であってもその多くを使用することができます。

ただしApple MusicやSpotifyなどの音楽配信サービスで購入した楽曲については要注意! 個人での視聴に利用が限定されているため、楽曲を店内BGMに使用することはできません。

JASRACの使用料は下記のとおり。店舗の広さなどによって変動しますが、小規模のお店であれば年額6,000円ほど。なお著作権管理団体に支払われた使用料は、著作者本人にも分配される形で支払われることになります。

使用料の詳細は「JASRAC・各種施設でのBGM」で確認できます。

店舗向けBGM配信サービスを利用する

著作権管理団体と直接契約する以外にも、店舗向けの音楽配信サービスを利用することで著作権問題をクリアすることができます。こうしたサービスは事業者側が著作権管理団体と契約を結んだ上で音源を提供しているため、利用者側は著作権処理を行う必要がありません。

中でも広く利用されているのが有線放送です。専用の機器をケーブルや衛星放送、光回線などに繋ぐことで音楽を流すシステムで、『USEN』や『キャンシステム』、『スターダム』、『ミュージックバード』といったサービスがあります。幅広い音楽ジャンルを網羅しているだけでなく、各ジャンルにおいて、さらに専門性の高いチャンネルが数多く用意されているため、お店の雰囲気にあった統一感のあるBGMを、いちいち選曲をせずに流すことができます。

また近年では『モンスター・チャンネル』や『OTORAKU』など、店内BGM用のインターネットラジオや、スマホやタブレットから店内BGMを利用できるアプリサービスなども展開されています。専用機器が不必要なため、導入コストや設置スペースを抑え、リーズナブルかつ気軽に利用することが可能です。

著作権処理の必要がない音源を流す

そもそも使用料を支払いたくない!という場合には、初めから許諾を必要としない音源を利用するという手段もあります。

テレビやラジオ放送をリアルタイムで流す

飲食店などでテレビやラジオをそのまま流しているケースがありますが、著作権法第38条では、放送中の番組を無料でリアルタイムに「通常の家庭用受信装置」を用いて流す場合、許諾は不要。つまり家庭用のテレビやラジオで流す分には合法としています。各放送局はJASRACとの年間包括契約を結んで音楽を使用しているため、音楽を含む放送であっても問題がありません。

ただしスポーツバーなどでパブリックビューイングを行う際には、注意が必要です。大型スクリーンやプロジェクターなど「映像を拡大する特別の装置」を用いての上映には、権利者である放送事業者の許可が必要になるためです。

またリアルタイムではなく、放送を録音・録画しての上映も禁じられています。なおインターネットラジオやYoutubeの映像はこれらのルールの適用範囲外であるため、許可なく使用することはできません。

著作権フリーの音楽を流す

このほかにも著作権が消滅しているパブリックドメイン作品などを使用する方法があります。著作権の保護期間が切れた楽曲、古くから歌い継がれてきた民謡や伝承音楽などの著作者が存在しない曲、国際条約に加盟していないため保護の対象になっていない国の曲、そして著作権フリーとして制作・提供されている音源は、著作権処理の必要がありません。

フリーBGMやフリー音楽素材は、CDやダウンロード音源として販売や無料配布がなされています。著作権利用料を支払うことなく使用できるので、お店の雰囲気に合うものを探してみるといいでしょう。ただしこれらは決められた範囲内での使用が認められているだけで、著作権そのものを完全に放棄しているとは限りません。それぞれの利用規約をしっかりと把握し、それに従うようにしましょう。

このようにBGMを流す際は、著作権によく気をつけなければなりません。規則を守ることで余計なトラブルを避け、気持ちよく音楽を楽しみましょう。

※本記事内の情報は2020年2月28日現在のものです。

 

監修者プロフィール:

太田洋子(双京知的財産事務所 弁理士/行政書士) 都内特許事務所、化学メーカーの知財法務部門勤務を経て 2010 年独立。 ベンチャー企業及び中小企業の知財・契約法務支援を中心としたサービスを提供。