CMSを運用するためには、Webガバナンスや方針が大切です。CMS運用のガバナンスや方針がないと、あとあと問題になることもあります。今回はCMS運用時のWebガバナンスの必要性とガバナンスが導入されるようになった背景、Webガバナンスを実行するための考え方などを解説します。
Webガバナンスとは
Webガバナンスとは、Webサイトを企業の戦略やルールに則って効率的に運用しながら、統一感あるサイト・ユーザー体験を提供するための仕組みです。
Webガバナンスという考え方自体は、企業がWebサイト運用を始めたころから存在しており、その意味は市場環境や技術発展とともに変化しています。
Webガバナンスが導入されるようになった背景とその移り変わり
第1段階:デザインなどサイトの見た目を統一
Webガバナンスの初期は「サイトの見た目を統一すること」を目的としていました。従来の紙媒体であれば、整備されたマニュアルのもと、適切なプロセスやチェックを経て顧客へと届けられていましたが、Webサイトの場合はこれらを経ずに運用が開始された例も多くありました。
例えば、同名企業なのに異なるドメインやロゴ、デザインやレイアウトが採用されたことで、統一されたブランドを顧客に届けられないといった問題が発生したのです。こういったロゴやドメインなどに関するルールを明確化し、それを担当者に周知し順守させるものとして、ルールが確立されました。
この段階のWebガバナンスは、ガイドライン化されただけにとどまらず、HTMLのテンプレートとして部門ごとに配布され、デザインやドメイン、ロゴが統一されたWebサイトの実現に用いられました。
第2段階:コンテンツの品質や顧客体験の統一
この段階では「サイトの運用や更新業務、インフラ、コンテンツの品質や顧客体験の統一」といった “裏側の統一” を目的としていました。
この時期は、各企業がHTMLコーディングによるサイト更新から、CMSを用いたサイト更新へと移行し、運用と業務効率化を目指した頃です。
コンテンツ公開時の承認プロセスや、緊急時のサイト更新・アップロード作業などの業務プロセスを明確化しただけではなく、「サーバの仕様に基準を確立する」「セキュリティ基準のルールに適したものだけを使う」などのインフラ面にもガバナンスが定められました。
そしてコンテンツ品質を一定に保てるよう、ユーザビリティやCMS等のシステム運用などに品質基準を設け、顧客体験の快適さを損なわないようにすることも行われてきました。
このWebガバナンスの導入は、万が一の事態に対応できるようにルールを明確化しただけではなく、サイト運用のコスト面での最適化においてもプラスになりました。またこの時期のWebガバナンスは、CMSの運用によって実現されてきた側面があり、担当者がルールを意識しなくてもシステムを利用するだけでルールを順守できるといった利点も享受できました。
第3段階:データの分析と活用
第3段階では「データの分析と活用」が重視されています。現在のWebサイトは単なる企業宣伝のカタログではなく、新規顧客獲得にも使えるマーケティング機能を有したツールと捉えられるようになり、それを実現するためのマーケティングテクノロジーも存在しています。
こうした背景を受け、この段階のWebガバナンスでは、顧客データやマーケティングテクノロジーをどうサイト運営に最適化していくかが重視されています。例えば社内全体で統一されたWebマーケティングプラットフォームを構築し、コスト削減と効果を最大化させ、SNSやブログなどの各メディアから得られる顧客データを管理し、その活用を推進することなどが重視されています。
Webガバナンス実行のためのポイント
Webガバナンスの妨げとなるもの
Webガバナンスを実行するために最も必要なことは、各自の取り組みです。Webガバナンスが実行されない理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 担当者間の知識やスキルの差
- コミットメント不足(経営層のWebガバナンス実行への理解不足)
- Webガバナンスを熟知している担当者の異動
Webガバナンスを実行するために必要なこと
先述のとおり、Webガバナンスはサイト運営の統一化を目的としたものです。しかし、Webガバナンスは統一すればよいというものでもありません。
Webサイトを運用していると、当初に予定していた内容がすぐ変更されることも珍しくなく、その変更内容がWebガバナンスにおいて許容されるものかどうかを判断する場面も出てきます。サイトの内容を変更してもそれを許可する人間は誰か、Webガバナンス上許容できるものかを判断するため、ルールを明確化することが大切なのです。
まずは、自社にとって最適な戦略を定め、企業全体でのサイト、コンテンツに関する統一された基準を設けたあとは、「地域や国、部門単位で誰が何を、どこまで自由にしてよいか」を明文化しましょう。
また、個々人がルールとそれを実行する意味を認識することも重要です。つまりWebガバナンスの範囲内で、個々人が自律的にサイトを運用できるようにすることが大切なのです。
自社のWebガバナンスの現状把握と適切な対策がカギ
企業がどの程度Webマーケティングを実行しているかによって、以下のステージが存在しています。自社が以下のどの段階にあるかを把握することで、最終的に「顧客体験と安定性、効率性がバランスよく保たれたWebガバナンス」の実現へと近づきます。
戦略策定
企業全体の活動を戦略として定め、計画の全体像を時間軸ごとにロードマップへ落とし込みます。
UI統一
レイアウトやデザイン、機能性や操作性を統一し、顧客体験を均質化させます。
運用基盤整備
ルールとして担当者が意識しなくてもWebガバナンスを守れるようにし、サイト運用の安全性、効率性、継続性が自動的に保たれる運営基盤を構築します。CMS導入を考えるのはこの段階です。
データ統合とその活用
統一した運営基盤に沿って、各メディアを駆使して得た顧客の動向や購買傾向を蓄積します。
Webガバナンスの強化で効果的なCMS運用を
CMSの課題と考えられていることが、実はWebガバナンスや運用体制の問題だったということもあります。Webガバナンス強化への取り組みの第一歩は、CMSやインフラ等の運用基盤と体制の整備から進めていくとよいでしょう。
「運用ルールの統一」「グループ会社への展開」「コンテンツや証跡ログ、アクセス権限の管理」「属人性の排除」「Web運用の持続性・機動性確保」など、Webガバナンスや機動的な運用強化を目的にクラウド型CMSを導入するところからスタートする企業が増えています。
CMS運用の現状を把握し、Webガバナンスの強化と実行に努めていきましょう。