宿で提供しているワーケーションプランを利用し、旅先で業務を行う企業が増えています。
しかし、宿のインターネット環境が不十分で「部屋まで電波が届かない……」「通信速度が遅くビデオ通話ができない……」などのトラブルに遭うと、まともに業務を行えなくなってしまいます。お客様のリピートがかなわないことはもちろん、クレームにもつながりかねません。
今回は、宿でワーケーションプランを提供するための、ネット回線の見直しや対策について解説します。
今のネット回線はワーケーションに適している?
まずは、今のインターネット環境が整っているかどうか、評価するチェックポイントを解説します。
チェック①各部屋でネット回線を快適に使える?
場所やシーンごとに、快適にネット回線を利用できるか、以下の点でチェックしておきましょう。
・お客様が利用する部屋、共有スペースで快適にネットを利用できるか
・インターネット検索からビデオ通話まで、通信量が増えてもスムーズに動作するか
・会議室・研修ルームなど広めの部屋全体でネットが利用できるか
・複数人が同時接続してもスムーズな通信を保てるか
※施設の規模により、同時接続人数を想定ください。
チェック②光回線を導入している?
主なインターネット回線を以下にまとめました。
特徴 | 最大通信速度 (下り) |
通信制限 | 工事 | |
光回線 | 光ファイバーを使ったインターネット回線 | 1Gbps〜2Gbps | なし | 必要 |
モバイル回線 | 屋外でも通信できる回線 | 400Mbps〜800Mbps | あり | 不要 |
ADSL | 電話回線を使ったインターネット回線 | 50Mbps | なし | 不要 |
※最大通信速度は事業者により異なります。目安としてご参考ください。また、各事業者が提示している最大通信速度は、技術規格上の最大速度です。利用環境等により、実際の通信速度は異なります。
光回線は工事を必要としますが、他と比べて最も早い通信速度を誇ります。
モバイル回線は屋外への持ち運びができる一方で、通信速度が光回線よりも遅くなります。また、ビデオ会議のようにデータ通信に負荷がかかる使い方で、複数名の同時接続には不向きです。
ADSLは、以前は多く使われていましたが、現在の状況から考えると、通信速度は非常に遅いです。
以上から、大量のデータ通信にも対応できる光回線がおすすめです。
チェック③Wi-Fiルーターは宿の規模に適している?
Wi-Fiルーターとは、パソコンやスマホなどの複数の端末を、無線でインターネット接続するための装置です。ほとんどの宿や施設で、すでに導入されているのではないでしょうか。
Wi-Fiルーター(無線LANルーター)を使えば、電波の届く範囲内のパソコンやテレビ、スマホ、タブレットなどの端末を無線でインターネットに接続できます。
このWi-Fiの電波は、ルーターを中心に球体状に届きます。電波の届く範囲はルーターの種類によって異なりますが、基本的にルーター本体とスマホ・パソコンの位置が近ければ近いほど、通信速度は速くなります。
フロア・部屋の数など、施設の規模が大きくなると、ルーターのスペックによってはカバーできないエリアも出てきてしまいます。今使っているルーターが、宿や施設の規模に適しているのか、きちんと確認しておきましょう。
ネット回線を強化する4つのポイント
ご紹介したネット環境のチェックポイントにおいて、まだ不十分なところがある場合は、実際に利用するお客様からマイナス評価を受ける可能性があります。そのままにしておくと、お客様が別の宿を選ぶ理由にもなりかねません。
ネット回線の強化には、以下の対策を行ってみてください。
①光回線を導入する
昔契約したままのADSLを利用していたり、小規模な宿では、家庭用の置くだけWi-Fiなどを利用している場合もあるでしょう。
前述の通り、より高速・安定的にネットが利用できるのは光回線です。ネット回線を強化するなら、光回線の導入がおすすめです。配線工事は数日で終わり、現場に立ち会うだけで特別な作業はありません。
※立ち合い不要なケースもあります。
②ルーターの台数を増やす
すべての部屋に電波が届かない場合、ルーターの台数を増やしてエリアを広げましょう。場合によってはルーターを増やさずともWi-Fi中継機を利用し、より広いエリアに届けることもできます。
③ルーター(Wi-Fi)の性能を高める
ルーターの性能は、「同時接続台数」「データの通信規格」などで決まります。同時に接続するパソコンやスマホの数が増えると、通信の障害・遅延の原因にも。大規模な宿では、同時接続台数の多いルーターが適しているでしょう。
データの通信規格によって、通信速度は異なります。無線通信規格の中でも、速い速度で通信可能なものは主に3種類あります。
最大通信速度 | 周波数帯 | |
IEEE802.11n | 600Mbps | 2.4GHz/5GHz |
IEEE802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz |
IEEE802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz/5GHz |
最大通信速度では「IEEE802.11ax」が最も速いですが、2020年に策定されたばかりでまだパソコンやスマホなどの端末側が対応していない場合が多いため、注意が必要です。
おすすめは「IEEE802.11ac」ですが、周波数帯にはそれぞれ以下のような特徴があるため、宿泊施設の部屋の作りなどに合わせて選ぶとよいでしょう。
2.4GHz帯
メリット:障害物に強く、電波が遠くまで届きやすい・対応機種が多い
デメリット:家電などの他の電子機器の電波干渉を受ける
5GHz帯
メリット:Wi-Fi専用の電波であるため、家電などの電波と干渉しないため通信が安定
デメリット:壁などの障害物に弱い
家庭用より法人向けのルーターの方が、基本的に性能は高まります。建物の作りなどにも左右されるため、明確な基準はありませんが、10部屋を超える宿は家庭用より法人向けのルーターを選ぶことをおすすめします。詳しい性能については、専門業者に確認してみましょう。
④電波の飛ばし方を工夫する
Wi-Fiの電波が届きにくい場所がある場合、以下のポイントを抑えましょう。
ビームフォーミング機能のあるルーターを選ぶ
ビームフォーミング機能とは、ルーターがパソコンやスマホの位置を判別し、そこへ目掛けて電波を届けるものです。ルーターとの距離や障害物のある場所へ電波を届けられます。
アンテナの角度を変える
アンテナ付属のルーターは、アンテナの角度を変えることで、電波の向きを最適化できます。球体状になっている電波を、横または縦方向に特化して飛ばせます。
横長に部屋を構える宿では横方向、フロア数の多い宿では縦方向に電波を飛ばし、調整してみてください。
新規格の光回線に注目!
宿や施設で快適にインターネットを利用してもらうなら、法人向けの光回線がおすすめです。
「ビッグローブ光」の場合、従来のIPv4(PPPoE方式)ではなくIPv6接続(IPoE方式)を採用しています。IPv4は、多数の利用者がいるため通信の障害・遅延を起こしがちでした。IPv6は、新たな方式を採用し、快適な通信環境を提供しています。
道路でたとえるなら、大勢が利用して渋滞している一般道(IPv4)ではなく、新しい高速道路(IPv6)を使ってスムーズな移動ができるようになります。詳しくは以下のページからご確認ください。
お客様が安心して快適に使えるネット環境を整えて、ワーケーションプランの提供を推進していきましょう!