新型コロナウイルス感染症が経済に大きな打撃を与える中、政府や自治体、民間金融機関などによって、さまざまな支援対策が講じられています。この記事ではその中から、事業者へ向けた資金繰りに対する融資制度についてご紹介します。

※掲載情報は2020/7/13時点

特別利子補給制度(無利子化融資)による無利子・無担保融資

「特別利子補給制度(無利子化融資)」は、以下の融資に対する利息を実質的に無利子化する制度です。

  1. 新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫等)
  2. 新型コロナウイルス対策マル経融資(日本政策金融公庫等)
  3. 危機対応融資(商工中金等)

※ただし、新型コロナウイルス対策マル経融資は、別枠1,000万円の範囲内

対象となる3つの支援制度は、いずれも無担保・無保証人で一律金利とし、融資後の3年間限定で0.9%の金利引き下げが実施されています。これに特別利子補給制度を併用することで、各融資制度の支払利息が返済後に別途返還され、実質的に無利子となる仕組みです。公庫などの既往債務の借換も、無利子化の対象となります。

対象要件

対象となるのは、各融資制度の借入申込時点の直近1カ月、またはその後2カ月を含む3カ月の内、いずれか1カ月と、前年または前々年同月の売上高を比較し、次のいずれかに該当する方。

①小規模個人事業主(フリーランスを含む): 要件なし
②小規模事業者(法人事業者): 売上高15%以上減少
③中小企業者(上記①②を除く事業者): 売上高20%以上減少

なお、小規模の要件は次の通りです。

  • 製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員20名以下
  • 卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下

利子補給対象上限

  • 中小事業: 日本政策金融公庫等および商工中金で2億円(中小企業向け)
  • 国民事業: 各種制度の合計で4,000万円まで(個人事業主や小規模事業者、非営利法人向け)

利子返還の対象となる借入期間はいずれも借入後、初めの3年間。なお上限額は、新規融資と公庫などの既往債務借換との合計金額です。

問い合わせ先

中小企業基盤整備機構

特別利子補給制度の適用対象となる3つの支援制度についても詳しく見ていきましょう。

1.新型コロナウイルス感染症特別貸付

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、日本政策金融公庫および沖縄振興開発金融公庫による、中小企業に対する設備資金もしくは長期運転資金のための無担保の融資制度です。

対象要件

対象者は、次の要件のいずれかに該当、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方。

①業歴が1年1カ月以上の場合
最近1カ月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して5%以上減少

②業歴が3カ月以上1年1カ月未満の場合
最近1カ月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少

  • 過去3カ月(最近1カ月含む)の平均売上高
  • 2019年12月の売上高
  • 2019年10~12月の平均売上高

小規模個人事業主(フリーランスを含む)には、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応してくれるそうです。

融資限度枠

中小企業事業: 別枠6億円まで(中小企業向け)
国民生活事業: 別枠8,000万円まで(個人事業主や小規模事業者、非営利法人向け)

なお「別枠」とは、既存の借入とは別という意味です。既にコロナウイルス以外の理由で借入をしていても、追加で融資を受けることが可能です。

返済期間

設備資金: 20年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内5年以内)
運転資金: 15年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内5年以内)

利下げ適用限度額

中小事業: 2億円まで
国民事業: 4,000万円まで(新型コロナウイルス対策マル経融資、生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付および新型コロナウイルス対策衛経との合計)

なお「新型コロナウイルス対策衛経」は、通常、融資上限2,000万円の「生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付」に、コロナ対策として1,000万円の別枠を設けたものです。生活衛生同業組合などの経営指導を受けている生活衛生関係の事業を営む小規模事業者が経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できます。

利率(年)

①中小企業事業

  • 2億円超: 貸し付け年数に応じた基準金利(1.11〜1.30%)
  • 2億円以下: 当初3年間は基準金利1.11% − 0.9%で0.21%、4年目以降は基準金利(1.11〜1.30%)

②国民生活事業

  • 4,000万円超: 貸し付け年数に応じた基準金利(1.36〜1.75%)
  • 4,000万円以下: 当初3年間は基準金利1.36% − 0.9%で0.46%、4年目以降は基準金利(1.36〜1.75%)

問い合わせ先

日本政策金融公庫・沖縄振興開発金融公庫

2.新型コロナウイルス対策マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資)

「小規模事業者経営改善資金融資(通称マル経)」は、商工会議所や商工会、都道府県商工会連合会による経営指導を原則6カ月以上受けている小規模事業者を対象とした無担保・無保証人の融資制度です。

商工会議所などの長からの推薦を受け、日本政策金融公庫と沖縄振興開発金融公庫が審査、融資を行います。

対象要件

対象となるのは、各区域内で1年以上事業を行っており、最近1カ月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して5%以上減少した小規模事業者。

融資限度枠

別枠1,000万円まで

返済期間

設備資金: 10年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内4年以内)
運転資金: 7年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内3年以内)

利下げ適用限度額

4,000万円まで(新型コロナウイルス感染症特別貸付、生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付および新型コロナウイルス対策衛経との合計)

利率(年)

当初3年間は特別利率1.21% − 0.9%で0.31%、4年以降は特別利率(1.21%)

問い合わせ先

日本政策金融公庫・沖縄振興開発金融公庫または最寄りの商工会・商工会議所

3.危機対応融資

危機対応融資は、商工中金による「業況が悪化した事業者に対する資金繰り支援」です。

対象要件

対象者は、次の要件のいずれかに該当する中小企業および小規模事業者。

①業歴が1年1カ月以上の場合
最近1カ月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して5%以上減少

②業歴が3カ月以上1年1カ月未満の場合
最近1カ月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少

  • 過去3カ月(最近1カ月含む)の平均売上高
  • 2019年12月の売上高
  • 2019年10~12月の平均売上高

融資限度枠

別枠6億円まで

返済期間

設備資金: 20年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内5年以内)
運転資金: 15年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内5年以内)

利下げ適用限度額

2億円まで

利率(年)

当初3年間は基準金利1.11% − 0.9%で0.21%、4年目以降は基準金利(1.11〜1.30%)

問い合わせ先

商工組合中央金庫

民間金融機関における実質無利子・無担保融資

2020/5/1より、民間金融機関においても実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免の融資が可能となりました。

信用保証制度を利用した、都道府県などの制度融資を国が補助。併せて信用保証の保証料や利子が半額またはゼロとなります。また民間金融機関の信用保証付き既往債務の実質無利子融資への借換えも可能です。

対象要件

対象となるのは、1〜3いずれかの制度の認定書を取得した事業者の内、前年同期比と比較して下記の売上減少要件に該当する方。

  1. セーフティネット保証4号
  2. セーフティネット保証5号
  3. 危機関連保証

①小規模個人事業主(フリーランスを含む)
売上高5%以上減少: 保証料・金利ゼロ

②小・中規模事業者(上記を除く)
売上高5%以上減少: 保証料1/2
売上高15%以上減少: 保証料・金利ゼロ

融資限度枠

4,000万円

返済期間

10年以内(利息のみを支払いできる据置期間は、この内5年以内)

補助期間

保証料は全融資期間、利子補給は当初3年間

問い合わせ先

最寄りの信用保証協会

対象となる支援制度についても詳しく見ていきましょう。

1.セーフティネット保証4号

自然災害などの突発的事由により、幅広い業種で経営の安定に支障が生じている「地域」を経済産業省が指定。指定地域に属する中小企業者を対象に、信用保証協会が一般保証の限度額(2億8,000万円)とは別枠で、最大2億8,000万円の借入債務を100%保証する制度。2020/3/2より、全都道府県が対象に指定されています。

対象要件

指定地域において1年間以上継続して事業を行っている中小企業者の内、下記の要件をどちらも満たし、市区町村長の認定を受けた方。

①最近1カ月の売上高が、前年の同期と比較して20%以上減少
②その後2カ月を含む3カ月間の売上高も前年同期と比較して20%以上減少することが見込まれる

保証内容

  • 対象資金:経営安定資金
  • 保証割合:100%保証
  • 保証限度額: 一般保証とは別枠で2億8,000万円まで

※セーフティネット保証5号とは同枠、併せて上限2億8,000万円の範囲内で併用可

問い合わせ先

取引のある金融機関または最寄りの信用保証協会

2.セーフティネット保証5号

全国的に業況の悪化している「業種」を経済産業省が指定。指定業種に属する中小企業者を対象に、信用保証協会が一般保証の限度額(2億8,000万円)とは別枠で、最大2億8,000万円の借入債務を80%保証する制度。現在は、2020/5/1より全業種が指定されています。

対象要件

指定業種に属する中小企業者の内、下記いずれかの要件を満たし、市区町村長の認定を受けた方

①最近3カ月間の売上高が前年同期比で5%以上減少
②製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにも関わらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

保証内容

  • 対象資金: 経営安定資金
  • 保証割合: 80%保証
  • 保証限度額: 一般保証とは別枠で2億8,000万円まで

※セーフティネット保証4号とは同枠、併せて上限2億8,000万円の範囲内で併用可

問い合わせ先

取引のある金融機関または最寄りの信用保証協会

3.危機関連保証

東日本大震災やリーマンショックのような大規模な経済危機時に実施。全国・全業種を対象に、信用保証協会がセーフティネット保証とはさらに別枠で最大2億8,000万円の借入債務を100%保証する制度です。

対象要件

コロナウイルス影響に起因して下記いずれかの要件を満たし、市区町村長の認定を受けた中小企業者

①最近1カ月の売上高が、前年同期と比較して15%以上減少
②その後2カ月を含む3カ月間の売上高も前年同月比で15%以上減少することが見込まれる

保証内容

  • 対象資金: 経営安定資金
  • 保証割合: 100%保証
  • 保証限度額: 一般保証およびセーフティネット保証とは別枠で2億8,000万円

問い合わせ先

取引のある金融機関または最寄りの信用保証協会

認定基準の運用緩和

なお、これら1〜3の各制度については現在、認定基準が緩和され、業歴3カ月以上1年1カ月未満の事業者や経営拡大などによって単純な売上高の前年比較が難しい事業者でも利用が可能です。

以下①〜③いずれかの条件で、各制度の要件を満たす方が対象です。

①最近1カ月の売上高と最近1カ月を含む最近3カ月間の平均売上高を比較
②最近1カ月の売上高と2019年12月の売上高を比較、さらにその後2カ月間(見込み)を含む3カ月の売上高と2019年12月の売上高の3倍を比較
③最近1カ月の売上高等と2019年10〜12月の平均売上高等を比較、さらにその後2カ月間(見込み)を含む3カ月の売上高等と2019年10〜12月の3カ月を比較

  1. セーフティネット保証4号: 20%以上売上高減少
  2. セーフティネット保証5号: 5%以上売上高減少
  3. 危機関連保証: 15%以上売上高減少

長期的な視点で活用のご検討を

このように、いくつかの融資制度が用意されていますが、事業規模によって以下の利用が一般的です。

  • 個人事業主:セーフティネット保証や危機関連保証
  • 小規模事業者:マル経
  • 中小企業:新型コロナウイルス感染症特別貸付、新型コロナウイルス感染症特別貸付(商工中金)、セーフティネット保証4号

感染拡大第2波も懸念され、まだまだ予断を許さない状況が続いています。長引くコロナ渦を乗り越えるためにも、ぜひこれらの制度の活用していきましょう。

監修:武井 綾子(中小企業診断士)
女性や若年層をターゲットとした商品・サービスに関する売上施策およびSNSを活用した集客施策を得意とし、現在、全国各地で創業支援・事業改善支援・事象承継支援を実施中。