新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、売上が減り資金繰りに逼迫する中小企業が増えています。

中小企業が資金調達を行う場合、大別すると「融資」「社債」「出資」「補助金・助成金」の4つの方法がありますが、政府では「融資」や「補助金・助成金」を通じた資金繰り支援を強化しています。また、納税猶予や納付期限の延長などの支払い猶予の支援策を実施しています。

資金繰りを改善するためには、これらの支援策を活用することが有効です。本記事では、最新の資金調達方法や支払い猶予について解説します。
※掲載内容は2020/7/1時点

「融資」による資金調達

融資とは、金融機関などが資金を融通することで、中小企業の資金調達で最もポピュラーな方法です。金融機関には銀行や信用金庫、信用組合などの「民間金融機関」と日本政策金融公庫や商工中金などの「政府系金融機関」があります。

民間金融機関の保証付融資

中小企業が民間金融機関へ融資の相談に行くと、多くの場合、公的機関である信用保証協会が保証人となる「保証付融資」をすすめられます。信用保証協会の保証がつくことで、民間金融機関のリスクが減るため、信用の少ない中小企業でも融資しやすくなるからです。

経済産業省は、新型コロナウイルス感染症により影響を受けている中小企業への資金繰り支援として「セーフティネット保証(経営安定関連保証)」と「危機関連保証」を発動しました。これにより、信用保証協会から一般保証と別枠の保証が利用可能となりました。すでに保証付融資を利用中の中小企業も、この別枠を使って融資を受けることが可能となっています。

セーフティネット保証4号

自然災害などの突発的災害が発生した地域の中小企業を対象に、3カ月間の売上高等が前年同月と比べ20%以上減少見込みになるなどの基準を満たすと、信用保証協会が一般保証とは別枠(2億8,000万円以内)で融資額の100%を保証する制度です。新型コロナウイルス感染症の影響により、47都道府県が指定都市とされています。

セーフティネット保証5号

業況の悪化している業種の中小企業に対して、3カ月間の売上高等が前年同月と比べ5%以上減少見込みになるなどの基準を満たすと、信用保証協会が一般保証とは別枠(2億8,000万円以内)で融資額の80%を保証する制度です。

危機関連保証制度

東日本大震災やリーマンショックといった危機時に、3カ月間の売上高等が前年同月と比べ15%以上減少見込みになるなどの基準を満たすと、信用保証協会が一般保証やセーフティネット保証とは別枠(2億8,000万円以内)で融資額の100%を保証する制度です。全国・全業種を対象として、平成30年の制度施行以来、初めて発動されました。
※一部保証対象外の業種あり

「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」「危機関連保証」いずれかの認定を受けた中小企業に対して、民間金融機関での実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免の支援制度が開始されました。セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証を利用することになった際には、この制度も利用しましょう。

中小企業庁 – セーフティネット保証制度
経済産業省 – 民間金融機関において実質無利子・無担保融資を開始

民間金融機関のプロパー融資

民間金融機関から直接融資を受けることを「プロパー融資」といいます。保証付融資よりもハードルは高くなりますが、信用保証協会への信用保証料が不要なため、信用力が高い中小企業はプロパー融資を利用するという選択肢もあります。

現在、新型コロナウイルス対策として独自の融資・支援制度を実施している民間金融機関も多いので、資金繰りの相談の際は一度確認してみてください。

政府系金融機関による融資

政府系金融機関は、民間金融機関の金融サービスを補完し、国の政策に沿った金融サービスを提供するために、政府が出資している金融機関です。政府系金融機関でも現在、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業の資金繰り支援を行っています。

日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少するなどの基準を満たすと、個人事業者や小規模企業に小口資金を融資する「国民生活事業」では別枠で8,000万円、比較的規模の大きな中小企業に融資する「中小企業事業」では別枠で6億円を融資限度額として特別に貸し付ける制度です。

当初3年間、国民生活事業4,000万円、中小企業事業2億円を限度として、基準利率から0.9%引下げる特例措置をとっています。

日本政策金融公庫・沖縄公庫「新型コロナウイルス対策マル経融資」

マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資制度)は、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者に対し、日本政策金融公庫・沖縄公社が無担保・無保証人で融資を行う制度です。

最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少するなどの基準を満たすと、通常とは別枠(1,000万円以内)で融資を受けることができます。当初3年間、通常の貸付利率から0.9%引下げる特例措置をとっています。

商工組合中央金庫「危機対応融資」

直近1カ月の売上高が前年又は前々年の同期比5%以上減少するなどの基準を満たすと、当初3年間、基準利率から0.9%引下げる特例措置をとっています。商工中金による危機対応融資の既往債務の借換えも可能となっています。

また、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス対策マル経融資」「危機対応融資」により借入を行った中小企業のうち、一定の要件を満たすと、実質無利子となる特別利子補給制度が開始されました。日本政策金融公庫等の既往債務の借り換えも実質無利子化の対象となります。この制度も併せて利用しましょう。

日本政策金融公庫 – 新型コロナウイルスに関する相談窓口のご案内
商工中金 – 新型コロナウイルス感染症に関する特別相談窓口

「社債」による資金調達

社債とは、企業が発行する債券のことで、企業が直接、投資家から資金調達する方法です。募集方法によって「公募債」と「私募債」に分かれており、中小企業が利用しやすい社債は「少人数私募債」という私募債です。

少人数私募債とは

少人数私募債は、少人数(50人未満)の投資家を対象として発行する社債のことです。担保不要で利率・償還期間が自由に決定できるなどのメリットがあり、長期的な資金繰り改善や新規事業のための資金調達に有効な選択肢です。

「出資」による資金調達

出資とは、投資家から株式などと引き換えに資金調達する方法です。中小企業では既存株主や事業関係者からの出資が一般的でしたが、外部から資金調達できる機会も増えています。

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」を組み合わせた造語で、不特定多数の人がインターネットを通じて個別のプロジェクトに対して資金提供を行うものです。

プロジェクトの目的は「夢の実現」や「社会的課題の解決」など様々ですが、不特定多数の人の共感を得ることが成功の鍵となります。現在、コロナ禍に立ち向かう飲食店やイベント会社などのプロジェクトが多数立ち上がっているので、実施の際は参考にしてください。

ベンチャーキャピタル・個人投資家

将来性が大きい事業を営んでいる中小企業は、ベンチャーキャピタル(新興企業に出資する投資会社)や個人投資家から出資を募ることを検討してもよいでしょう。出資を受ける場合は、出資者へのリターンを含めた事業計画の作り込みが成功の鍵となります。

「補助金・助成金」による資金調達

政府や地方公共団体などが実施する補助金や助成金は、新型コロナウイルス感染症対策として強化されているため、資金調達の有力な選択肢といえます。

経済産業省「補助金」制度

経済産業省では、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「持続化補助金」などの設備投資や販路開拓をサポートする補助金制度を実施しています。詳しくは関連記事をご確認ください。

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厚生労働省「助成金」制度

厚生労働省では、「雇用調整助成金」「小学校休業等対応助成金」などの雇用維持や休業補償をサポートする助成金制度を実施しています。詳しくは関連記事をご確認ください。

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地方公共団体「補助金・助成金」制度

地方公共団体やその外郭団体では、地域の特色を反映した補助金・助成金制度を実施しています。詳しくは、本店所在地の地方公共団体のホームページや経済産業省が運営する中小企業向け補助金・支援サイト「ミラサポplus」を確認してください。

その他の資金繰り支援

新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの中小企業の売上が急減しているという状況を踏まえ、納税猶予や納付期限の延長などの支払い猶予の支援策を実施しています。

税務申告・納付期限の延長

令和元年分の申告所得税や個人事業者の消費税などの確定申告について、新型コロナウイルス感染症の影響により4月16日の期限内に申告することが困難な方は、4月17日以降であっても柔軟に受け付けてくれます。

また、法人税・法人の消費税の申告・納付についても、期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合は、申請することで期限の個別延長が認められます。

国税庁 – 確定申告期限の柔軟な取扱いについて

事業収入が減少する場合の納税猶予(国税・地方税)の特例

2020年2月以降、事業収入が前年同月比20%以上減少し、納税が困難となった事業者について、無担保かつ延滞税なしで納税が猶予される特例措置が行われています。法人税や消費税、固定資産税など、ほぼすべての税が対象となります。

財務省 – 納税を猶予する「特例制度」

また、個別の事情がある場合も国税・地方税の納付猶予が認められる場合がありますので、まずは各機関にご相談してみてください。

ほかにも様々な形のセーフティネットが存在

これらの他に、固定資産税等の軽減や厚生年金保険料等の支払い猶予、電気・ガス料金の支払い猶予等が行われています。支払い猶予は資金繰りの一つの手段となりますので、納税や公共料金の支払い前に、各機関・企業のホームページを確認してみてください。

新型コロナウイルス感染症対策として、政府の支援策は日々拡充しています。以下の参考記事をご確認いただき、まずは各窓口に相談してみてください。

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