新型コロナウイルス感染症が経済に大きな打撃を与える中、国や自治体、民間企業などによって、さまざまな支援対策が講じられています。この記事では、事業者の皆さまに向けて、税金や保険料の支払い猶予・減免制度についてご紹介いたします。
※掲載情報は2020/7/7時点。

国税の猶予制度

税金には、国に納める「国税」と、地方自治体に納める「地方税」があります。まずは国税の猶予制度について説明します。

国税の猶予制度は、従来の猶予に加え、新型コロナウイルス感染症の影響による特例制度が利用可能です。

1.納税の猶予の特例(特例猶予)

2020/4/30に「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(新型コロナ税特法)」が成立・施行されたことにより、新型コロナウイルスの影響によって収入が大幅に減少している方に向けた「納税の猶予の特例(特例猶予)」が創設されました。

所得税や法⼈税、消費税など、基本的にはすべての税金(印紙で納めるものなどを除く)を対象に、無担保かつ延滞税なしで1年間の納付猶予が受けられます。

猶予が適用されるもの

  • 2020/2/1から2021/1/31までに納期限が到来する、ほぼすべての税目
  • 上記の内、既に納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものも含む)

※2020/6/30、または、納期限(申告納付期限が延⻑された場合は延⻑後の期限)のいずれか遅い⽇までに申請が必要です。

支援内容

  • 原則1年間の納税猶予
  • 担保の提供は不要
  • 猶予期間における延滞税の免除

なお、標準的な税の納付期限は次の通りです。

  • 法人税: 事業年度終了から2ヵ月以内(3月末決算であれば5月末)
  • 消費税: 事業年度終了から2ヵ月以内(個人事業者は2020/4/16)
  • 申告所得税: 毎年3/15

対象要件

事業規模や個⼈、法⼈、フリーランスを問わず、以下の要件どちらにも該当する方。

  • 2020年2月以降の一定期間(1ヵ月以上)、収入が前年同期から概ね20%以上減少(譲渡所得などの一時的な収入は除く)
  • 一度に納税することが困難(半年先の事業資⾦など、状況により判断)

2.納税の猶予と換価の猶予(現行法)

特例猶予が受けられない場合でも、現行法における納税の猶予や、換価の猶予を受けられるケースがあります。
※換価の猶予とは、すでに差し押さえされている財産、あるいは今後差し押さえの対象となりうる財産の換価処分(公売)を、一定の要件に該当した場合に猶予する制度。

支援内容

  • 原則1年間の納税猶予(資力に応じて分割納付)
  • 担保の提供は不要(提供が明らかに可能である場合を除く)
  • 猶予期間における延滞税の軽減(年8.9%が年1.6%に軽減)

対象要件

  • 一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難になる場合
  • 納税について誠実な意思がある
  • 納期限から6カ月以内に申請がある
  • 猶予を受けようとする国税以外に滞納がない

国税猶予に関する申請・問い合わせ先

問い合わせは、各国税局の国税局猶予相談センターにフリーダイヤルで電話相談が可能です。申請は国税庁ホームページから申請書を入手し、所轄の税務署に郵送またはe-Taxで提出してください。

また、新型コロナウイルスによる医療費や棚卸資産の廃棄費用が発生したなど、個別の事情がある場合は、延滞税なしの猶予が認められる可能性があります。諦めずにまずは相談してみることをおすすめします。

地方税の猶予制度

地方税についても国税と同様の特例措置が用意されています。

1.徴収猶予の特例制度

2020/4/30に「地方税法等の一部を改正する法律」が公布・施行され、収入が減少している方に向けた「徴収の猶予制度の特例」が設けられました。

個人住民税や地方法人二税、固定資産税など、国税同様ほぼすべての税金(印紙で納めるものなどを除く)を対象に、無担保かつ延滞金なしで1年間の納付猶予が受けられます。

猶予が適用されるもの

  • 2020/2/1から20201/1/31までに納期限が到来する、ほぼすべての税目
  • 上記の内、既に納期限が過ぎている未納の地方税(他の猶予を受けているものを含む)

支援内容

  • 原則1年間の納税猶予
  • 担保の提供は不要
  • 猶予期間における延滞金の免除

対象要件

事業規模や個⼈、法⼈、フリーランスを問わず、以下の要件どちらにも該当する方。

  • 2020年2月以降の一定期間(1ヵ月以上)、収入が前年同期から概ね20%以上減少
  • 一度に納税することが困難(半年先の事業資⾦など、状況により判断)

※2020/6/30、または、納期限(申告納付期限が延⻑された場合は延⻑後の期限)のいずれか遅い⽇までに申請が必要です。

2.固定資産税等の軽減措置

さらに固定資産税と都市計画税については、厳しい経営環境にある中小事業者を対象に、2021年度に課税される1年分の償却資産および事業用家屋にかかる課税標準が、0または1/2に軽減されます。

対象要件

対象者は、2020年2月〜10月までの任意の3ヵ月間と前年同期の売上高を比べて、下記の条件を満たす方。

  • 30%以上減少: 1/2軽減
  • 50%以上減少: 全額軽減

申請・問い合わせ先

申請は各地方公共団体のホームページから申請書などの必要書類を入手し、担当窓口に提出、またはeLTAXで提出してください。

厚生年金保険料の猶予制度・国民年金の免除制度

新型コロナウイルスの影響による減収支援対策としては、年金保険料の支払い猶予や減免制度も特別に打ち出されています。

1. 厚生年金保険料の納付猶予の特例

厚生年金保険料については、2020/4/30に特例が施行され、税金と同様の猶予制度が用意されています。申請により厚生年金保険料等の納付を、1年間の猶予が可能です。

猶予が適用されるもの

  • 2020/2/1から2021/2/1までに納期限が到来する厚生年金保険料など
  • 上記の内、既に納期限が過ぎている厚生年金保険料(他の猶予を受けているものも含め、2020/6/30までに申請することで、遡って特例を適用することが可能)

支援内容

  • 原則1年間の納税猶予
  • 担保の提供は不要
  • 延滞金なし

対象要件

以下の要件どちらにも該当する方。

  • 2020年2月以降の一定期間(1ヵ月以上)、収入が前年同期から概ね20%以上減少
  • 保険料を一度に納付することが困難

申請・問い合わせ先

問い合わせは、厚生年金保険料納付猶予相談窓口で電話相談が可能です。申請は日本年金機構ホームページから申請書を入手し、所轄の年金事務所に提出してください。

2.国民年金保険料の免除・納付猶予

また、国民年金についても2020年2月分以降の保険料を対象として、臨時特例による全額もしくは一部の免除や納付の猶予、および学生納付特例の申請を2020/5/1より受け付けています。

対象要件

以下の要件どちらにも該当する方。

  • 2020年2月以降に、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少
  • 当年中の所得が、現行の国民年金保険料の免除に該当する水準になることが見込まれる

申請・問い合わせ先

問い合わせは、日本年金機構ねんきん加入者ダイヤルで電話相談が可能です。申請は日本年金機構ホームページから申請書を入手し、所轄の市区町村の年金担当窓口または年金事務所に提出してください。

国民健康保険料の減免

自営業者が加入する国民健康保険の保険料にも、各世帯の状況に応じた特別措置が講じられています。

2019年度および2020年度の国民健康保険料の内、納期限が2020/2/1から2021/3/31までの保険料が、一部または全部減免されます。

対象要件

条件 減免額
新型コロナウイルス感染症により、主たる生計維持者が死亡、または重篤な傷病を負った世帯 対象となる期間中、保険料が全額免除
新型コロナウイルス感染症の影響により、主たる生計維持者の減収が見込まれ、次の要件すべてに該当する世帯

  • 収入(保険金などにより補填される金額を控除した額)が前年の7割以下
  • 前年における合計所得金額(総所得から特別控除額を引いた金額)が1,000万円以下
  • 前年における事業収入や給与収入以外の所得(雑所得、配当所得など)が400万円以下
前年の所得金額などから対象保険料額を算出。別表の割合を減免

所得金額と保険料減免の割合

2019年の合計所得金額 減免の割合
300万円以下または事業廃止・失業 10割
400万円以下 8割
550万円以下 6割
750万円以下 4割
1,000万円以下 2割

申請・問い合わせ先

申請は各市区町村のホームページから「国民健康保険料減免申請書」などの必要書類を入手し、担当窓口に提出してください。

粘り強くさまざまな制度の活用を!

今回紹介した制度の他にも、公共料金や介護保険料の支払いなどにおいて、猶予や減免といった措置を受けられる可能性があります。

感染拡大第二波の可能性も懸念され、先行きが見えない状況が続いています。この危機を乗り切るためにも、ぜひ各種制度を活用していきましょう!

監修:武井 綾子(中小企業診断士)