仙台駅から車でおよそ30分。奥州三名湯の一つ「秋保温泉」にある「秋保の郷 ばんじ家」。
取材中も続々と日帰り温泉を利用するお客様が足を運び、駐車場は常にいっぱい。地元の方の憩いの場にもなっています。

ばんじ家正面玄関

ここには、二匹の愛らしい看板猫 たまちゃん と ハナちゃん がいます。たまちゃんは2021年2月22日に、全国の看板猫の総選挙「第一回看板猫大賞」でグランプリを受賞したばかり。

たまちゃん

今回は、ばんじ家さんに旅館のこと、そして看板猫であるたまちゃんとハナちゃんのこと、秋保温泉の地域猫活動などについてお話を伺いました。

旅館のコンセプトと「ばんじ家」ならではのおもてなし

ー 旅館を開館されたのはいつ頃でしょうか?

2008年7月1日に「秋保の郷 ばんじ家」として開館しました。肩を張らずにゆったりとお客様の思うがままにお過ごしいただき、「あ~、帰ってきた!嬉しいなぁ」と思っていただけるようにしたいという思いから、「我が家のような居心地」というコンセプトになりました。

ばんじ家入口

ー 旅館の「ここが自慢!」というポイントを教えてください。

まず、お出汁をしっかりと取り、味付けたお料理です。食材にもこだわり、旬の地のものやおいしい宮城県産のお米を使用しています。

こだわりの料理

次に、スタッフ全員のにこやかな応対です。女将も一年を通して、朝晩必ずお客様にご挨拶し、心からの笑顔でお客様に安心していただけるよう心がけています。

そして、看板猫たちのかわいらしく、素晴らしい接客です。

フロント前でお客様をお出迎えするたまちゃん

ー ばんじ家さんにとっての「おもてなし」とは何でしょうか?

ばんじ家は、16室の小さな旅館です。小さな旅館だからこそ、できるおもてなしがあると考えています。
例えば、素材にこだわり、心を込めて作ったお料理を、熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちにお出しできること。隅々まで清掃し、気持ち良いお部屋にお泊りいただけること。遠方から旅行で来てくださったお客様、そして地元の常連客の方々と、笑顔であたたかいコミュニケーションが取れること、などです。

こだわりの料理

13年間で忘れられないエピソード

ー お客様とのエピソードを教えてください。

忘れられないお客様とのエピソードはたくさんありますが、その中でも、特に2011年の震災時のことは忘れられません。当時、大手企業の方々が復興のボランティアとして、5月~8月までで延べ1,200人宿泊をされ、被災地に応援に行っていただき、私どもの旅館も助けていただきました。

ばんじ家フロント

ー 宿泊業ならでは大変さとやりがいは、どんなところにあると思われますか?

お客様は、十人十色です。お客様が望んでいることを瞬時に判断して対応することに、難しさを感じます。逆に、こちらの一生懸命さをわかっていただいた時の喜びはとても大きく、これがあるからこそ長く続けて来られたと思います。

ばんじ家ロビー

看板猫のたまちゃんとハナちゃん

ー ここからは、たまちゃんとハナちゃんについてお伺いします。たまちゃんとハナちゃんを旅館に迎えた経緯を教えてください。

従業員通路のある裏手に、野良猫さんがご飯をもらいに来ていました。この子が、のちの「たま」です。

たまちゃん

猫好きな従業員が多かったこともあり、毎日少しずつご飯をあげ、距離が近くなってきた頃、その野良猫さんは、茶トラの女の子(ハナちゃん)を連れてきました。

ハナちゃん

地域猫の知識を持つ従業員がいたため、TNRをすることとなり、動物病院で手術をしてもらいました。そしてサクラ耳の地域猫として、ばんじ家でお世話をすることになり、女将がたま・ハナと名付けました。

※TNRとは、野良猫を保護(Trap)し、不妊手術(Neuter)をして、保護場所に返して(Return)「地域猫」として見守ることを言います。
※サクラ耳とは、不妊手術をした地域猫の目印として、不妊手術時に麻酔下で耳の上部に三角の切り込みを入れることです。これにより、繁殖しないこと、見守る人がいることが外見から判断できます。

たまとハナのこれまでの自由な生活も尊重しつつ、安心して暮らせるように、当初、旅館裏手の倉庫の中に二匹のハウスを用意してお世話していました。しかし、猫好きなスタッフの戦略により、次第に看板猫としての地位を高めていき、多くのお客様に愛される人気の看板猫になったのです。

猫担当さんの戦略が光る

そしてついに、旅館の正面玄関脇のスペースをゲット!今年は寒さも厳しかったので、ホットカーペット完備の快適なハウスで暮らしています。

たまちゃん・ハナちゃんハウス

ー たまちゃんとハナちゃんが来てから旅館に変化はありましたか?

たまとハナの存在をきっかけに、旅館まで足を運んでくださるお客様もいらっしゃいます。また、二匹の存在により、旅館がさらに地元の方々の憩いの場になったような気がします。ありがたいことに、二匹にお土産まで持ってきてくださる方もいらっしゃり、大変ありがたく思っています。

ハナちゃん

ー たまちゃんはおもしろいエピソードをたくさんお持ちのようですね。

たまは玄関自動扉を自分であけて入ってきます(笑)。あるとき、だれにも気づかれず入ってきて、あろうことか女風呂に行き、「にゃ~ん」とアピールしてお客様をびっくりさせたことがあります(笑)。

そして、秋は狩りの季節。たまは一日に3回もお土産を持ってきたことがあります。日頃おっとりして優しい、そしてちょっとぽっちゃりしたたまが、実は狩りが得意というのは意外でした。

たまちゃん

ー たくさんの方に愛されているばんじ家さんですが、2021年3月29日をもって閉館すると伺いました。閉館に至る経緯を教えていただけますか?

昨今のコロナの影響により、昨年からご来館いただくお客様の数が減りました。特に年明け以降は顕著で、今年の2月下旬に本社より通達があり、残念ながら閉館することとなりました。

ばんじ家は日帰り温泉がワンコイン(500円)で利用できるため、ご覧の通り、地元の方も足しげく通ってくださいます。たま・ハナの存在もあり、温泉好きの方や猫好きの方の憩いの場にもなっているので、本当に残念です。

ー 今後のたまちゃんとハナちゃんの予定を教えてください。

ばんじ家閉館後は、猫好きなスタッフの家で家猫修行をします。今まで、お外と旅館内を自由に行き来していたので、お外での自由を奪うことは、今でも心苦しく思っています。それでも二匹が幸せに暮らせるように環境を整え、これからもずっと見守っていきます。

そして、今までばんじ家、そしてたま・ハナを応援してくださった方々にも安心していただけるよう、今後も二匹の元気な様子をInstagram等で発信したいと考えています。

たまちゃん

秋保温泉での地域猫活動

ー 秋保温泉では、地域猫活動や保護猫の譲渡活動なども行っているようですね。

地域猫活動や秋保エリアを元気にする活動がしたい、という共通の思いから「秋保猫街道」を立ち上げました。

たま・ハナグッズ販売の売上の一部をチャリティーに寄附したり、地域猫の認知とTNRやサクラ耳などの知識を啓蒙する活動など、猫全体が幸せになる活動を行っています。2021年の4月には、秋保ヴィレッジでイベントを行う予定です。

たまちゃん・ハナちゃんグッズの販売(売上の一部を寄付)

正しい知識を持ち、最後まで愛情と責任を持ってペットを幸せにする飼い主が増えること、そして一匹でも多くの猫たちが幸せになることを願ってやみません。

これまでたくさんの人々との思い出と絆を生んだばんじ家は、これからも人々の記憶の中で生き続けます。そして、たまちゃんとハナちゃんがもたらした絆やあたたかい活動は、これからも続いていきます。