ホテルでも旅館でもない「湯治宿」とは?

湯治とは「温泉地で一定期間滞在して療養をすること」を指します。湯治を目的とする長期滞在者向けのお宿が、今回ご紹介する「湯治宿」です。ホテルや旅館とは違い、長期滞在をする人に向けたスタイルであるため、1泊あたりの宿泊料が手頃であることがメリットの一つ。部屋もコンパクトで、共同台所を備えている湯治宿が多く、自分たちで自炊をすることもできます。つまり、「自分たちが暮らすように過ごすこと」ができるのが特徴です。

また、湯治宿は湯で心身を治してきた宿、ということもあり、宿および周辺にある温泉は療養に適した「泉質」を持ち、温泉そのものの「フレッシュさ」「清潔感」も保たれているのです。

廃れつつある、日本古来の湯治文化

そんな湯治文化ですが、昔に比べて減少してきているのが現状です。昔は、病気やケガのために湯治をしたり、農閑期に体を休めるために湯治宿に訪れる人が多くいました。しかし、近年はリゾートホテルやビジネスホテルが増え、旅行スタイルが変化したこともあり、そもそも湯治宿を知らない人も多くいるようです。

「湯治宿で仕事をする」という選択

しかし、在宅勤務を主とするリモートワーカーにこそ、湯治宿がぴったりなのではないかと、筆者は考えています。その理由は、主に3つ。くわしく見ていきましょう。

干渉されすぎないスタイルであること

1つ目は「干渉されすぎない」ということ。旅館やホテルの良さは、チェックインからアウトまで、サービスにあふれているところですよね。食事時間や部屋の布団敷きまでを担ってくれるため、一通りをお任せできるというメリットがあります。

一方、湯治宿は、基本的には「セルフサービス」。自分の好きな時間に布団を敷き、基本的には食事も自分の好きなときに食べたいものを食べることができます。台所のある宿も多いため、そのときに自分の食べたいものを作ることができるという点もメリットです。「仕事中は集中したい」「オンラインミーティングの際には誰にも邪魔されたくない」そう考えているリモートワーカーのみなさまには、ぴったりの環境なのではないでしょうか。

部屋の作りが仕事をするのにぴったりなこと

2つ目は「宿の作りが仕事場に丁度いい」ということ。デスクと椅子がある湯治宿もあれば、特に用意をしていない宿もあります。デスクと椅子のある湯治宿は、普段の仕事環境とは変わらないパフォーマンスが可能です。しかし、デスクと椅子が部屋に常設されていなくても、気軽に宿の食堂やロビー、土間を使わせてもらうこともできるのが、湯治宿の良いところ。簡単な作業や仕事を終えたら、布団にゴロン、温泉にチャポンとできる環境があります。

リフレッシュする時間を挟むことができること

3つ目は「気軽にリフレッシュ時間を挟むことができる」ことです。湯治宿は温泉地にあるため、宿の周りにはたくさんの温泉があります。仕事の合間に温泉へ行くことで、心身ともにリフレッシュすることができるのも、温泉地で仕事をすることのメリットの1つ。また、都会では当たり前にすることができない「地域の人とコミュニケーションをとること」もリフレッシュにはぴったり。湯治宿に泊まっている人や温泉で出会った人たちと、他愛もない会話をすることで、心のリフレッシュにも繋がるのではないでしょうか。

ひろみや TOJI STAYでの過ごし方

そんな湯治宿のメリットを挙げた上で、湯治宿での過ごし方を覗いてみましょう!今回は、大分県別府市鉄輪にある「ひろみや TOJI STAY」さんでの様子をお伝えします。

ひろみや TOJI STAYは、鉄輪(かんなわ)という湯けむりの立ち込めた街にあります。毎日表情を変える湯けむりは、デスクワークで疲れたときに眺めるのにもってこい。なんだか穏やかな気持ちになり、焚き火のようなヒーリング効果があるのかもしれません。

鉄輪の街並み

そんな湯けむりを前に、作業をすることもできるのが鉄輪のいいところ。ひろみやTOJI STAYの前にある通りは、サクッと作業をするのにぴったりな場所。チェックインして浴衣に着替えたら、パソコン片手に作業するのもいいかもしれません。ちなみに、鉄輪は街のあちらこちらで写真のような椅子が置いてあるので、気分を変えながら仕事に打ち込むこともできます。

街中で気分転換をしながら仕事もできる
もちろん、部屋で作業する環境も整っています。ひろみや TOJI STAYは部屋がコンパクトな作りであるものの、ちゃぶ台が置いてあるので、オンライン会議も可能です。湯治宿によってはデスクと椅子が常設されていたり、布団のみの部屋だったり様々。鉄輪には、多様な湯治宿が集まっているので、仕事の内容やスケジュールによって泊まる場所を選ぶことができます。

多様な湯治宿からその時の自分に合った宿を選ぶことができる

仕事が落ち着いたら、近くの温泉に浸かりに行くこともできます。ひろみや TOJI STAYの周りには、「すじ湯」「渋の湯」「蒸し湯」など、いくつもの温泉があるため、その日の気分によって温泉を選ぶことができるのです。同じエリアにありつつも、温泉によって、含まれる成分は様々。体調に合わせて入る温泉を変えることができます。仕事の合間にサクッと温泉時間を挟むことによって、デスクワークで凝り固まった身体もほぐれます。

仕事の合間に温泉へ

仕事終わりには、近くにある商店やスーパーで夜ごはんを調達。ひろみやTOJI STAYから歩いてすぐの場所には「ことぶき屋」という商店があります。材料調達をして自炊してもよし、近くにあるごはん屋さんで食べてもよし、その日の気分で選ぶことができるのです。

近所の商店で食材を調達

ひろみや TOJI STAYには、キッチンが常設。まな板やフライパンなど、あるものは全て自由に使うことができます。調達してきた材料を使って、自分のペースで自分のために作ることができるのも、湯治宿の良いところ。窓の外に広がる湯けむりを見ながら、落ち着いた気分で料理をすることで、きっと心からリフレッシュすることができるはず。

共同台所で自炊する様子

湯治宿の女将さんや、温泉で一緒になった地元の人と他愛もない会話をすることも、心のリフレッシュに繋がります。ひろみや TOJI STAYの女将である美保さんは、いつでもパワフル。話しているだけで元気をもらうことができます。

ホテルステイだと、スタッフの人と他愛もない会話をすることは難しいかもしれませんが、地元の人も宿泊客も分け隔てなく接してくれるのは湯治宿の魅力かもしれません。仕事でうまくいかないことがあったときも、誰かと会話をするだけで気持ちが少し晴れますよね。湯治宿では必要以上に干渉をしてこないので、仕事に打ち込みたいときは部屋に籠り、人と話したいときは外に出る。そんなメリハリがハッキリしているのが特徴です。

ひろみや TOJI STAY

◉施設情報
名称:ひろみや TOJI STAY
住所:〒874-0043 大分県別府市井田4組
TEL:0977-66-0628
設 備:Wi-Fiあり、電源あり、台所あり、ランドリーあり
駐車場:あり(無料)

今回は、ひろみやTOJI STAYを例に挙げましたが、多様な湯治宿が存在している別府。仕事のスケジュールやその時の状況によって宿を選んでみてはいかがでしょうか?ひろみやTOJI STAYのあるエリアの他の宿は、こちらからご確認ください。

別府八湯でワーケーションしてみた:明礬&鉄輪エリア編

湯治宿でストレスフリーな仕事環境を

ここまで湯治宿のメリットを、実際に別府市鉄輪にある湯治宿「ひろみや TOJI STAY」を例に挙げてご紹介しました。

最後に、温泉のもたらすメリットとして「転地効果」があります。これは、温泉地の自然環境が身体に良い影響を及ぼすこと。それによって、日常生活やストレスから解放されることを言います。普段仕事をしている場所から少し離れることによって、頭もリフレッシュして新しい視点で業務に打ち込むことができるのではないでしょうか。

コロナ禍で謳われている「リモートワーク」や「ワーケーション」。コロナ収束後にも、もう一つの選択肢としてこれらの働き方があり続けることで、ストレスのない働き方が可能になるのではないでしょうか。

ぜひ、新しい選択肢である「湯治宿」を仕事環境に取り入れてみてはいかがでしょうか?

温泉でワーケーションしよう ONSEN WORK

 

ライタープロフィール
橋本明音(はしもとあかね)

橋本明音(はしもとあかね)

群馬県出身。駆け出しの、プロデューサー兼ライター。自分が見て感じたものを、文章やデザインに落とし込むことが好き。趣味は、料理、畑、キャンプ、コーヒー、お酒。インドアもアウトドアも楽しめちゃう人。