サウナで整う、温泉でも整う

空前のサウナブームが訪れています。サウナで熱し、水風呂や休憩を繰り返すことで訪れる快感のことを、「整う」と呼んでいます。

このメカニズムは、実は温泉・入浴でも可能であることをご存知でしたでしょうか?今回は、私たちの自律神経を構成する「交感神経」「副交感神経」に着目して、仕事はかどる温泉・入浴、及びリラックスモードを引き出す温泉・入浴の方法についてご紹介します。

整う、とはどういうことなのか

「整う」とは、高温のサウナに入り、その後、水風呂に繰り返し入ることで訪れる快感のことを指します。リラックス感、幸せ感を伴い、ふわっとした恍惚感など、人によって様々ですが、この快感は、「自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが取れた状態」から生まれてくることがわかっています。

高温のサウナに入り、水風呂に入るとなぜその自律神経のバランスが取れるのか?
またそれが温泉・入浴でもかなうのか?

温泉医学、温熱生理・治療学等の基礎的な知識に立脚し、温泉の持つ保健的機能を応用した健康増進及び疾病予防のための温泉利用を安全かつ適切に実践できるように指導する「温泉利用指導者」という資格がありますが、この有資格者であり、保健師・看護師でもある、おんせん県大分に居住している熊谷麗さんにお話をお伺いしてきました。

熊谷麗氏:温泉利用指導者・保健師。
大分県内温泉利用型健康増進施設で、温泉による健康相談や指導を行っている。湯治ぐらしでは「みんなの保健室」を開催し、血圧・唾液アミラーゼ計測、心理テストを通じて、ひとりひとりに合った温泉・泉質・温泉地等のカウンセリングもしている。

入浴による効果とは

熊谷氏「入浴による効果は様々あります。浮力作用、粘性効果、静水圧効果、清浄作用、温熱作用の5つが代表的に挙げられます。」

浮力作用とはなんでしょうか?

「入浴すると、ふわっと浮く感覚がありますね。浮力が働いて、肩まで浸かると自分の体重のおよそ1/8ほどの重力になります。この浮力効果を生かして、例えば足腰に負担がある方が入浴しながら足腰を用意に動かすことができるわけです。重力から解放されるのが、温泉・入浴になります。」

粘性作用とは?

「粘性というのは、その字の通り、粘り。水の中で腕を動かすと抵抗を感じますね。水が身体に粘って抵抗を引き起こします。運動効果がこのため高まるんですね。かけた力の分だけ、水の力が返ってきます。」

静水圧効果とは?

「肩まで入浴した時に、水の力で圧力が全身にかかってきます。胸の辺りだと1cm程度へこんでしまうくらいの圧力です。加圧トレーニングがいっとき流行しましたが、入浴しながらでもそれが叶いますので、温泉やお風呂に入浴しながら深呼吸すると、いつもの力よりも大きな力が必要で、心肺のトレーニングにも役立ちます。足のむくみがある方も、入浴することで足に圧力がかかってくるのでむくみを防ぐのにも効果的です。入浴するだけでまるで全身マッサージになっているわけです。逆に、心臓や肺に心配がある方は、”半身浴”で胸部をつけずに入浴すれば、浮力や清浄、温熱作用を受けることができると思います。」

清浄作用とは?

「入浴したら水の力で身体がきれいになりますね。そのまま清浄されることを指しています。」

最後に、温熱作用とはなんでしょうか?

「温める作用のことで、血管を広げ、身体の隅々まで、酸素を送り込んでくれる、つまり新陳代謝を促進してくれます。36度台の体温である人が気持ちいいと感じる温度帯は、38-42度のあたりかと思います。この2度から4度違う温度帯の温水に入ることで、温めて熱することに快感を覚えます。そして自律神経を整えてくれる入浴法があります。」

自律神経「交感神経」「副交感神経」とは

「自律神経」とは、内臓の動き・血圧・呼吸等、意思に関係なく、刺激に反応して身体の機能を調整する神経のことで、食欲や緊張、呼吸が深い・浅い等、私たちが身体で感じる様々な反応が出てくることがあります。

このうち、「交感神経」は、身体の各機能を活動的にさせ、「副交感神経」は逆に活動を緩やかにしていく作用がある神経になり、このふたつのバランスが整っていることが「自律神経が整っている」という状態となるそうです。

「整う」とは、この自律神経のバランスが整うということ。

熊谷氏「交感神経は、戦いのための神経、副交感神経は、リラックスのための神経とも呼ばれています。この神経のどちらかが強いままだと、バランスが崩れたままで、体調にも心理的にも不調に陥ります。そのため、ふたつとも整っている・・・という状態が最もよいと考えます。たとえば、仕事に向かうときには戦いモードで交感神経が優位、自宅に戻ったらリラックスモードで副交感神経が優位、と自分で切り替えができると良いのですね。」

交感神経・副交感神経をONにすることで生まれる作用

自律神経は、自分の意思によって調整はできないはず。どのようにして、自律神経を整えさせればいいのでしょうか。

熊谷氏「環境によって気持ちを切り替えることで自ずとできれば最も良いのですが、意思では調整ができません。そのため、入浴のチカラを借りて、それを手伝ってあげることができるのです。」

交感神経が優位になるとどんなことが起こるのでしょうか。

熊谷氏「血圧を上昇させ、心臓の動きが促進されます。胃腸が抑制されて、発汗が促進、筋肉を収縮させると言われています。そのため、身体が興奮状態になるんですね。緊張するとお腹が空かず、ごはんが食べられなくなったりしますね。これを意思によらないで、外部からの刺激で促進することができます。それは「42度以上の熱い湯」に短時間入浴すること。そのことで、交感神経を刺激できるという研究が進んでいます。」

副交感神経優位となるとどうなりますか?

熊谷氏「血圧を下降させ、心臓を抑制、胃腸促進、発汗抑制、筋肉は弛緩します。つまり、身体がリラックスしていくように作用するんですね。リラックスするときにお腹がすいてきます。これは、「38度〜40度のぬるい湯」に入浴することで叶います。ぬるい湯にじっくり浸かり、ふぅっと深呼吸すると良いでしょう。」

入浴のチカラを借りてそれを手伝ってあげることができるということは?

熊谷氏「42度以上の熱い湯に入ることで交感神経をON、38〜40度のぬるい湯に入ることで副交感神経をONにでき、その中間点を探っていくこと・・・つまり繰り返し「温冷交互浴」を行うことで、自律神経のバランスの置きどころがおのずと見えてきます。人間が本来持っているバランスを取るチカラを、入浴のチカラを借りて、引き出すようなイメージです。」

「心身整う」お風呂・温泉の入り方=「温冷交互浴」とは

42度以上の熱い湯に入ると、交感神経を優位にすることが期待できるとすれば、これは仕事に向かう前に是非とも活用したくなります。最大にそのパフォーマンスを発揮できるような温泉、入浴方法があるのでしょうか?

熊谷氏「42度の温泉は、熱く感じるため、しっかりかけ湯をして体をならしていきましょう。そして、鼻に汗をかく程度に短時間、お湯に浸かります。洗い場にあがって休憩することも、また露天風呂があって外気に触れられる場所があればそこで休憩しても良いでしょう。そしてまた身体が冷えてきたら、熱い湯に再び、さっと浸かって・・・ということを繰り返すことです。これで、身体を興奮状態へ導くことができ、頭もかなりすっきりすることが実感できるかと思います。
仕事にいく前に、42度以上の温泉に浸かる、温泉がない自宅などは、給湯器で42度に設定をした湯船に浸かることで充分です。お湯に浸かる時間さえない、という方は、シャワーで42度設定で身体にシャワーという刺激も加えて入るのでもいいと考えています。」

38~40度のぬるい湯に入ると、副交感神経を刺激するとなると、夜、眠る前はぬるめの湯に浸かるほうがいいということでしょうか?

熊谷氏「その通りですね、夜眠る前、就寝時間の2時間前に、ぬるめの湯に10分〜20分程度じっくりと浸かるといいと考えます。全てを弛緩させて、リラックスモードONになります。就寝時間2時間前に入浴すると、その頃には温められた身体がすぅーっと体温へ近づき、眠りを誘ってくれるのです。温泉はぬるめの温泉を、自宅では38-40度に設定して、好きな入浴剤を入れたり、シャンプーやコンディショナーも好きな香りのものを選んで、自分がリラックスできる環境づくりをされるのもお勧めします。入浴の温度だけじゃなく、香り、光、音・・・五感をくすぐる工夫もいいですね!」
これが整う、というメカニズム。サウナでも整う。温泉でも整う。それだけではなく、自宅の入浴でも即実践できそうです。

温泉、お風呂いずれも、”自分の体と心を整えるため”に活用してみませんか。