ワーケーションとの出会い

2019年10月、Team WAA! のプロジェクトで、福岡県うきは市の地域創生プロジェクトに参加させていただいたことが私とワーケーションとの出会いでした。Team WAA! 主宰の島田由香さん、メンバーの皆様はもちろん、ワーケーション研究で著名な田中敦教授(山梨大)との出会いもあり、ワーケーションについて深く知ることになります。

ちなみに、それまでの10年近くは、飛行機か、オフィスか、というくらいの出張族で、10年パスポートを増刷するほど、国内だけでなく、海外にも頻繁に行っていました。よって、東京にあるオフィスには殆どおらず、正に、WAA(Work from Anywhere and Anytime:働く場所や時間の制約を受けない働き方)の実践者でありました。そんな仕事人間であった私なので、プライベートの旅行先でも、PCやスマホを広げて仕事をしていました。ワールドカップでロンドンやロシアに行った際も、仕事をしていたのを思い出します。

そんな生活をしていた私にとって、ワーケーションは既に自分のライフスタイルそのものだった気がしますが、実は2019年まであまり意識していませんでした。今思えば、ワーケーションのライフスタイルを通して、クリエイティブなアイディアが沢山浮かんだり、仕事にもポジティブなインパクトがたくさんあったように思います。

コロナ禍での気付き

そして、コロナ禍という大きな転機がやってきます。出張が減ったこともあり、2020年3月からほぼ完全在宅勤務となりました。私自身は会社に行かないことに慣れていましたし、チームメンバーとの関係性もしっかりとできていましたので、むしろ6月くらいまでの数ヵ月間、完全リモートワークは本当に快適でした。このままずっとできるかも!と思ったくらいでした。

但し、正確に言うと、リモートワークには慣れていましたが、毎日モニターとにらめっこをしてオンラインミーティングをする生活には慣れていませんでした。出張や旅行などで得られる五感への刺激や余白時間が無くなったことにより、自分が少しずつ疲弊していっていることにこの時はまだ気づいていませんでした。

そして8月、例年より遅めの梅雨明けとなり、外は40度近い気温に。ますます家から出なくなり、バルコニーに設置したホームジムで筋トレを継続していたものの、どうも調子が上がりません。最後に旅行をした3月以降、5ヵ月に渡る自宅籠城生活により、相当疲弊していることに私は初めて気付きました。と同時に、この10年くらい続けていた出張やワーケーション的旅行の価値に気づいた瞬間でもありました。そして「どうせオンラインミーティングばかりであれば、どこでやっても同じでしょ!」という気持ちが高まり、ワーケーションを実施するに至りました。

初のワーケーション

「真夏の8月にどこでワーケーションをしよう?」と考えました。そんな時に、「夏休み」というキーワードが出てきました。小学生低学年の時は、両親の田舎(農家)である宮城県で1ヵ月ほど過ごしていたこと、中学高校では、合宿で長野に行っていたことを思い出しました。小さい頃から、ワーケーション的生活をしていたのです。

そして、東京と福島県喜多方市で2拠点生活を送る友人の秋山綾子さんとの会話から、喜多方市でワーケーションをすることになりました。東京から郡山までは1時間半くらいですが、喜多方市は、郡山から更に少し時間がかかります。

 

郡山から喜多方へ向かう車窓から、磐梯山

決して行き易い場所ではないですが、両親の田舎と近い田園風景、そこでできる農業体験、美味しい空気、水、綺麗な山脈、そして裏磐梯に行けば湖もあり、五感の復活、エネルギーチャージには最幸な場所です。更に、日本酒、喜多方ラーメン、温泉(熱塩温泉)などもあり、正に私にはピッタリのワーケーションプレイスでした。

喜多方には、多数の酒造があるので、ご当地のキリっとした日本酒が飲めます

ちなみに、お隣の会津磐梯町には、ワーケーションライフには心強い「リビングエニウェアコモンズ(LAC)」があり、会津若松市には、スマートシティ会津若松、アクセンチュア福島イノベーションセンターもあります。
リビングエニウェアコモンズ(LAC)
あらゆる制約に縛られることなく、好きな場所で、やりたいことをして暮らす生き方を実践するための“コミュニティ”。現在、会津磐梯、伊豆下田、岩手県の遠野など日本全国5カ所に展開する。いずれもWi-Fi環境や電源などを完備したワークスペースと、長期滞在を可能にしたレジデンススペースからなる複合施設だ。現在全国に17拠点を展開中。

1日の過ごし方は、平日は、朝一で温泉に入り、その後、農業体験で一汗かき、朝ラー(喜多方では朝からラーメン屋がやっています!)をし、リモートワーク。業務終了後には、美味しいご飯と日本酒が待っています。小休憩時に、周りを散歩するとリフレッシュできます。

リモートワーク、オンライン疲れに、農業は最高です!

私の感じたワーケーションの効果

喜多方市でワーケーション体験によるエネルギーチャージをして、ワーケーションには次の5つのような効果があると気づきました。都心から離れた農村地帯や、温泉地などという喜多方市の地域性からもポジティブな影響がありました。

① アクティビティの選択肢が増え、オン・オフの切り替え効果

リモートワークの弱点であるオンとオフの切り替えがうまくできるため、就業前の朝の時間、夕方、就業後の夜の時間を有意義に使うことができます。また、ワーケーション期間中のリラックスタイムはオンライン疲れの回復時間となり、明らかな違いを感じられます。

都会でのリモートワークの場合は、就業前後に、テレビやスマートフォンなどのデジタル機器に触れる時間が多く、加えて、どうしても運動不足になりがちになるため、疲労やストレスが溜まり易い状況にあります。これに対し、ワーケーションにおいては、様々なアクティビティの選択肢があるため、この弱点を解消できると思いました。

② 農業体験からの五感活性効果

農業体験など自然と触れ合うことで、触覚、匂い、目から入ってくる情報が増えるなど、五感が活性化されます。これは今回の最大の気付きであり、都会でのオンライン業務により、いかに五感が鈍っていたのかを痛感しました。例えば、視覚においては顕著で、毎日モニターばかりを見ていたら、それだけで疲労してしまいます。自然に触れたり、農業などの非日常体験の効果を実感しました。

農業体験 秋の陣

③ 地域の文化資源に触れて脳内活性効果

温泉(朝は最高)・郷土料理(今回は日本酒、ラーメン)など、楽しみがあり、メリハリが出ます。加えて、伝統工芸の体験や新宮熊野神社「長床」でのヨガ体験など、旅行でも体験できないようなスペシャルなものもあり、これらを体験することで、明らかに脳の活性化を感じました。地域独自の文化資源に触れることも楽しみでした。

漆塗り体験

新宮熊野神社「長床」でのヨガ体験

④ 週末をまたぐ長期滞在によるリラックス効果

アウトドアな活動ができる場所(山・湖・川)がすぐ近くにあることのメリットが大きいです。もし、週末に都会から移動しようとすると、渋滞に巻き込まれるなど、逆に疲労してしまいがちですが、週末をゆっくり過ごすことで移動による疲労を回避できます。大自然の中で、新鮮な空気を吸って、体を動かすことは、最高の充電方法です。仕事疲れを解消し、翌週のパフォーマンスに繋がっていくと確信しています。

裏磐梯より。桧原湖でのカヌーは最高に気持ちかった!

⑤ 個人・チームのアウトプット活性効果

グループ(会社のメンバー)で参加した場合、共通体験を通して感動や笑いから脳のパフォーマンスが良くなるので、創造性の向上が期待でき、ブレーンストーミングなどに向いていると思います。逆に定例ミーティングは向かない気もしますが(笑)。

私が考えるワーケーションに最適な場所とは?

ポストコロナ禍の世界でウェルビーイングが高まる働き方として、ワーケーションは益々注目されると思いますが、喜多方市以外にも様々な地域でワーケーションを体験しました。私見ながら、ウェルビーイングが高まったワーケーションに適した「場所」について3つの共通点を挙げてみたいと思います。

① 有名な観光地、完全なリゾート地ではない場所

2020年、私がワーケーションを体験した場所は、南紀白浜、沖縄、八ヶ岳、蔵王、鎌倉などがあります。例えば、夏の八ヶ岳は、私以外は観光客ばかりで、どちらかというと、バケーション気分になってしまい、仕事モードでは少し複雑な気分でした。ちなみに、沖縄であれば、久米島などの離島、かつオフシーズンがワーケーションに向いているように感じました。

② 少し不便な場所

これも上記と若干重なるのですが、観光客が少ない点、そしてワーケーションだからこそ行ける場所の方が良い気がしています。すぐ帰れない場所、つまり“退路を断つ”もキーワードになるかもしれません(笑)。また、ポストコロナに予想される、国内旅行ブーム、そしてインバウンドツーリズムの再活性化により、人気観光地は、かなりの混雑が予想されるため、「少し不便な場所」はキーワードになりそうだと予測します。

③ 自然、温泉、アウトドア、パワースポット、酒造、伝統工芸など付加価値がある場所

あくまでも私見ですが、今回の喜多方のように、地域独自の文化資源や、そこでしかできない付加価値があると、ワーケーションの効果は更に高まると思います。ワーケーション体験をする場所については、ポジティブ心理学で著名なタル・ベン・シャハ―博士の「SPIRE」モデルを満たしているような土地には拘りたいと思いました。
※「SPIRE」とは、タル・ベン・シャハ―博士が提唱する有意義で充実した日々を満たす5つのウェルビーイングを構成する要素、Spiritual (精神性)、Physical (身体的)、Intellectual(知性)、Relational (人間関係)、Emotional(感情)を示しています。「SPIRE」は、株式会社YeeYが商標登録出願中です。

最後に、これからワーケーションを体験してみたい方に

まずは、心から一度体験して欲しいと思います。もちろん、会社で制度がない等、様々な制約があるかと思いますので、旅行先でのプチワーケーション体験からでも良いと思います。

コロナ禍によって加速した、オンラインミーティング(Zoom、Teams)によるリモートワークという手段は、多くの企業でポストコロナ禍の働き方の選択肢の一つとして定着しそうです。リモートワークの働き方は、ワーケーションにとって追い風になることは間違いありません。

人生100年時代における新たな働き方、具体的には、二拠点生活、ワーケーションやパラレルワークなど、今後 益々個人の働き方の選択肢のあることが重要になってくると思います。そして経済的な視点のみならず、個々の人生の豊かさ、Wellbeingが浸透する日本になってほしい。そして、それを達成すべく、私自身も積極的に活動をしていきたいと思っています。

ライタープロフィール
栗原大(くりはら だい)

外資系企業シニアマネージャー。営業、マーケティング部門長を経て、現在は、人材開発部門に従事し、イキイキワクワク、Wellbeingな人材育成、研修設計を実践している。JPPI認定ポジティブ心理学トレーナー、JISE認定自己肯定力トレーナー。