年末調整や確定申告、税金関係の手続きでよく目にする「控除」。言葉は知っていても、具体的な意味や仕組みについては、知らない人も多いのではないでしょうか。

一見ややこしく感じる控除ですが、きちんと申告することで、節税対策にもつながります。個人事業主はもちろん、サラリーマンでも知っておきたい控除の種類や適用方法について、分かりやすく解説いたします。

そもそも控除とは?

そもそもの「控除」とは、金額や数量などを「差し引く」ことを意味する言葉です。そのため税制上は、課税の対象となる所得から一定の金額を差し引くことを指しています。

控除は大きく分けて2種類

節税になる控除には、大きく分けて「所得控除」と「税額控除」があります。どちらも、国税である「所得税」および地方税である「住民税」の二つに適用されますが、所得税と地方税では、差し引かれる控除の額は異なります。

所得控除とは

まず「所得控除」は、課税の対象となる「所得金額」を減らすことができる制度です。我々が支払わなければならない税金の額は、所得金額を基に計算されます。そのため、控除によって所得から一定額を差し引くと、その分だけ税金の支払いを減らすことができ、結果として節税につながります。

税額控除とは

もう一方の「税額控除」は、算出された税額から一定額を差し引くことで、「税金の支払いそのもの」を減らすことができる制度です。税額を直接的に差し引けるため、所得控除以上に高い節税効果が期待できます。

所得税の計算方法

これを踏まえた所得税の算出方法は、次のとおりです。

・収入 − 必要経費(会社員の場合は給与所得控除) = 所得
・所得金額 − 所得控除 = 課税所得
・課税所得金額 × 税率 = 所得税
・所得税額 − 税額控除 = 基準所得税

最終的にはこの「基準所得税」に「復興特別所得税」を加えた額が、納税額となります。

住民税の計算方法

住民税については、計算がかなり複雑で、正確な税額は税理士など専門家でなければ難しいとされています。一般的に「住民税は課税所得の10%程度」と理解をしていれば問題ないでしょう。

控除できる金額とは?

それでは控除の種類について、具体的に見てみましょう。

所得控除は全14種類(住民税では13種類)

まず所得控除は、納税者個人の経済的な事情を考慮して、それを税額の計算に反映する仕組みです。例えば収入が同じだとしても、その人に家族はいるか、また家族に収入はあるかといった要素によって、経済的な事情はそれぞれ異なり、税金の負担能力に差が生じます。

そこで所得控除には、そうした事情を考慮した14種類の控除が設けられています。これによって同じ収入でも個々の税額が調整され、納税者ごとの不公平感を減らす役割を担っています。

なお「寄附金控除」は、住民税では所得控除ではなく、税額控除として適用されます。

※以下の控除額は、令和2年分から適用される法令に基づいた金額です。

1. 基礎控除

ほとんどの納税者の所得から一律で所得税48万円、住民税43万円を控除。合計所得が2,400万円を超える場合は金額に応じて控除額が減少し、2,500万円超の人は適用外となります。

2. 配偶者控除

生計を一にする配偶者がいる人の内、本人の年間合計所得金額が1,000万円以下、配偶者の合計所得48万円以下または給与所得のみであれば給与収入103万円以下の場合に、一定額(所得税上限48万円、住民税上限38万円)を控除。

3. 配偶者特別控除

生計を一にする配偶者がいる人の内、本人の年間合計所得金額1,000万円以下、配偶者の合計所得が48万円を超え133万円以下の場合に、一定額(所得税上限38万円、住民税上限33万円)を控除。

4. 扶養控除

生計を一にする控除対象扶養親族(16歳以上で合計所得金額48万円以下または給与所得のみであれば給与収入103万円以下)がいる人に対し、一定額(扶養親族の4区分に応じて所得税38万〜63万円、住民税33万〜45万円)を控除。

5. 障害者控除

障害者に対して所得税27万円、住民税26万円を、特別障害者に対して所得税40万円、住民税30万円を控除。また特別障害者と同居して生計を一にしている場合(同居特別障害者)は、所得税75万円、住民税53万円を控除。

6. ひとり親控除(寡婦控除)

合計所得金額が500万円以下のシングルマザーもしくはシングルファザーに対し、一律で所得税35万円(子を扶養していない寡婦には寡婦控除27万円)、住民税30万円(子を扶養していない寡婦には寡婦控除26万円)を控除。

7. 勤労学生控除

合計所得金額が75万円以下で、勤労による所得以外の所得が10万円以下の学生に対し、一律で所得税27万円、住民税26万円を控除。

8. 雑損控除

災害、盗難、横領によって、住宅家財など「通常の生活に必要な財産」に損失が生じた際、損失額の一部を控除。

9. 医療費控除

10万円を超える多額の医療費がかかった場合、その一部(上限200万円)を控除。

10. 社会保険料控除

国民年金や厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険といった社会保険料の年間合計額を全額控除。

11. 小規模企業共済等掛金控除

個人事業主や中小企業の役員などが加入できる「小規模企業共済」や「確定拠出年金」などの掛金を全額控除。

12. 生命保険料控除

民間の生命保険など、任意で加入した保険料の一部または全額を控除(所得税上限12万円、住民税上限7万円)。

13. 地震保険料控除

地震保険や、地震に対する損害保険などの保険料の一部または全額(所得税上限5万円、住民税上限2万5千円)を控除。

14. 寄附金控除(所得税のみ)

「ふるさと納税」などで寄付した「特定寄附金」の合計額(総所得金額等の40%が上限)から2,000円を引いた金額を控除。

なお、所得税における寄附金の控除については、税額控除である「寄附金特別控除」を適用することも可能です。寄附先によって計算方法が変わりますが、一般的には税額から直接差し引くことができる「寄附金特別控除」の方が有利になります。

ただし、住民税では「寄附金税額控除」として、税額控除でしか適用できません。

税額控除は全19種類(住民税では4種類)

続いて税額控除は、所得控除を差し引いて最終的に算出された税額から、さらに一定額を差し引くことのできる制度です。ただし、この税額控除は一部の限られたケースにあたるため、あまり一般的ではなく、馴染みのない方のほうが多いかもしれません。

所得税と住民税の両方に適用でき、なおかつ身近なものとして挙げられるのは、住宅ローンで住宅の購入や増改築を行った場合に申請できる「住宅借入金等特別控除」でしょう。また、株などによる配当所得から一定割合を差し引く「配当控除」や、国外で所得税の支払いがある場合に受けられる「外国税額控除」などもあります。

所得税単体では、この他にも全19種類の控除を適用可能。国税庁のウェブサイトにて、詳細を確認することができます。

どんな種類の税額控除があるのか、年末調整や確定申告時に何か見落としているものがないか、一度確認してみるといいかもしれません。

控除を受ける方法とは?

これらの控除を適用するためには、年末調整か確定申告で申請を行う必要があります。

会社員でも確定申告が必要な控除もある

個人事業主やフリーランスの場合、基本的に確定申告は毎年行わなければなりませんが(基礎控除額を超える所得がある場合)、サラリーマンは会社側で行う年末調整で控除も申請してもらえるため、原則として手続きは不要です。

ただし「医療費控除」、「雑損控除」、「寄附金控除(ふるさと納税など)」については、自ら確定申告をしなければ控除を受けられません。また「住宅借入金等特別控除」についても、最初の年のみ確定申告をする必要があるので注意しましょう。

ふるさと納税にはワンストップ特例制度でも申告可能

「ふるさと納税」に関しては、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」による手続きも可能です。わざわざ確定申告をしなくても、寄付の都度、その自治体に必要書類を送るだけで、控除の申請をすることができます。

なお、この制度を利用した場合、控除は所得税には適用されず、翌年の住民税が所得税控除相当額を含めて減額されます。そのため、結果として控除される金額は変わりません。

節税のためにも忘れず申告を!

このように、一見ややこしく感じられる控除ですが、きちんと適用することで、納税負担を減らすことのできる仕組みです。手続きを忘れると損をしてしまいますので、節税のためにも毎年忘れずに申告するよう心がけましょう。

※掲載内容は2020/10/13時点

監修:合同会社ハートコムF&A
中小企業や個人事業主の方々の右腕となるべく、日々の記帳処理から決算支援、起業・資金調達支援、給料等総務関連といったバックオフィス業務全般を柱に、各種経営・税務アドバイス、コンサルティング業務を受託。