個人事業主やフリーランスの方が確定申告を行う際、目にすることがあるのが「貸借対照表」と「損益計算書」という書類です。なかには、なんとなく名前は聞いたことはあるけれど、具体的にはどういうものかわからない、という人もいるのではないでしょうか。
これらの書類には、一体どのような意味があるのか? それぞれの役割や違いについて、分かりやすく解説いたします。

「貸借対照表」と「損益計算書」は決算書の中心となる書類

そもそも「貸借対照表」と「損益計算書」は、いずれも事業における1年間の活動成果を報告するための書類「決算書」の一つです。決算書は正式には「財務諸表」や「計算書類」と呼ばれ、作成することで1年の間にどれだけの収支があり、経営状況がどのように変化したのかを把握することができます。

これらの書類は、商品の販売や仕入といった日々の取引を「複式簿記」によって帳簿に記帳し、最終的にそれらを決算処理することで作成されます。

複式簿記とは?

そもそも簿記の記帳方法には「複式簿記」と「単式簿記」の2種類があります。「複式簿記」とは、一つの取引に対して、取引の結果であるお金の増減と、その原因という二つの側面から記録する記帳方法のことです。

例えば現金1,000円を払って商品を仕入れた場合、現金という資産が1,000円減少したという「結果」だけでなく、仕入という費用が1,000円発生したという「原因」についても記録します。その商品を1,500円で販売した場合も同様です。現金1,500円の増加と併せて、売上という収益が1,500円発生したことも記録します。

このように、一つの取引が持つ二つの側面を同時に記録することで、収支だけに限らず、全体的な財産の状態を把握することが可能になります。その最終的な結果報告に用いられるのが、貸借対照表と損益計算書です。

単式簿記との違いは?

一方の「単式簿記」は「簡易簿記」とも呼ばれ、収入と支出という現金の増減だけに着目したシンプルな記帳方法です。家計簿やおこづかい帳のようなイメージで、収入から支出を引けば残高を把握することができます。

ただし、なぜどのようにしてお金が使われたのか、またその元手が何であったのかが分かりづらく、財産状況全体までは管理することができません。そのため単式簿記による記帳だけでは、貸借対照表と損益計算書は作成することができないのです。

貸借対照表と損益計算書が必要なのは青色申告!

企業であれば原則として、事業年度ごとに必ず決算書を作成することが義務付けられています。しかし個人事業主やフリーランスの場合、必ず作成が必要というわけではありません。それでは、どのような時に貸借対照表と損益計算書が必要になるのでしょうか?

それはずばり、確定申告で「青色申告」を選択した場合です。確定申告の方法には、「白色申告」と「青色申告」があり、それぞれ提出書類や記帳方法が異なります。

シンプルな手続きの「白色申告」では、貸借対照表と損益計算書の提出は必要ありません。しかし「青色申告」を選択した場合、貸借対照表と損益計算書からなる「青色申告決算書」を提出するなどの条件をクリアすることで、最大65万円の「青色申告特別控除」や赤字の繰り越しといった独自のメリットが得られます

貸借対照表と損益計算書の違いは?

それでは貸借対照表と損益計算書には、具体的にそれぞれどのような役割があるのでしょうか?

一定時点での「財政状態」を表すのが貸借対照表

貸借対照表は、ある時点において財産や借金がいくらあるのかを示す表のことで、「B/S(Balance Sheet)」とも呼ばれます。事業の財政状態や安全性を表す書類です。

貸借対照表(B/S)
資産(保有しているすべての財産)
負債(他者からの借入金など)
純資産(当期純利益や資本金など)

左側の「資産」には期末など、一定時点において保有しているすべての財産の内容とその金額を記載します。現金や預金、土地、建物、備品などのほか、貸付金のように後から現金を受け取ることができる権利(債権)もこれに該当します。

一方、その財産をどうやって調達してきたかを示すのが、右側の「負債」と「純資産」です。負債には他者からの借入金など、返済する義務(債務)のある金額を記載。「純資産」には事業で得た当期純利益や資本金など、返す必要のない自らの資産を記載します。

このように貸借対照表では、保有している財産の総額が左側に、その出どころが右側に表示されます。そのため、「資産 = 負債 + 純資産」という計算式が成り立ち、左右の合計が必ず一致するのが特徴です。

一定期間における「経営成績」を表すのが損益計算書

損益計算書は、一定期間においてどれだけの金額をどのように儲けたのか、または損したのかを表す書類のことで、「P/L(Profit & Loss Statement)」とも呼ばれます。事業の経営成績や収益性の把握に役立ちます。

損益計算書(P/L)
費用
収益
利益(当期純利益)

右側の「収益」には、商品やサービスの販売によって得た売上を中心に、すべての収入の内容と金額を記載します。一方、左側の「費用」には、それに対してかかった売上原価をはじめ、人件費や減価償却費、広告宣伝費といった経費などを記載します。
最終的に「収益」から「費用」を差し引くことで算出されるのが、「利益(当期純利益)」です。

もしも収益が費用を下回ってしまった場合には、下記のように「損失」が算出されます。損益いずれの場合でも、貸借対照表と同様に左右の総額は一致する仕組みです。

損益計算書(P/L)
費用
収益
損失(当期純損失)

貸借対照表と損益計算書の関係性とは?

これら二つの書類は、一見関係のない計算をしているように見えるかもしれません。しかし損益計算書で算出される当期純利益(または当期純損失)は、貸借対照表の純資産に含まれる当期純利益(または当期純損失)と必ず一致するようにできています。

儲けが増えれば財産も増え、儲けが減れば財産も減るように、売上や仕入れといった取引によって変動する損益と、その結果である事業の財政状態は連動しているからです。そのためお互いの計算も結びついているのが、複式簿記の特徴とも言えます。

貸借対照表と損益計算書の作成方法

青色申告を行うにあたっては、貸借対照表と損益計算書を含めた「所得税青色申告決算書」のフォーマットを国税庁のWebサイトからダウンロードすることができます。

所得税青色申告決算書のフォーマット(国税庁Webサイトより)

貸借対照表のフォーマット(国税庁Webサイトより)

また、同じく国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」では、案内に沿って必要な金額を入力していくだけで、「青色申告決算書」を作成することも可能です。

しかしながら、前述したとおり貸借対照表と損益計算書の作成は、複式簿記による帳簿付けが前提となっているため、会計知識がない方にはハードルが高く感じるでしょう。

税理士さんに頼むという選択肢もありますが、近年では『freee』や『やよいの青色申告オンライン』、『マネーフォワードクラウド』など、初心者でも簡単に使える会計サービスもさまざまな企業から提供されています。これらを活用すれば、簿記の知識がなくとも、手順に沿うだけで帳簿付けが可能。賃貸対照表と損益計算書も自動作成してくれます。できるだけ自分で行いたいという場合や事業規模によっては、これらのサービスを利用してみるのもオススメです!

クラウド会計ソフト「freee」

クラウド会計ソフト「弥生会計オンライン」

クラウド会計ソフト「Money Forward」

節税のためにも決算書の作成を!

以上、「貸借対照表」と「損益計算書」について解説しました。難しいと思う方も多いかもしれませんが、青色申告で65万円の控除を受けるためには、複式簿記による記帳および貸借対照表と損益計算書の作成が必須となります。さらに2020年分の申告からは、e-Taxによる申告もしくは電子帳簿保存を行っていないと、55万円までしか控除を受けることができなくなってしまいました。

ちなみに青色申告特別控除には、単式簿記での記帳が可能な最大10万円の控除も存在します。こちらを選択した場合には、貸借対照表の作成は不要です。

しかし最大65万円の特別控除は、白色申告にはない大きなメリットです。少し手間はかかりますが、要件が当てはまる方は節税対策のためにも、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。