個人事業主が自宅や事務所を引っ越したら、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
「納税地がこれまでの管轄税務署から変わったとき」「従業員を雇用していたとき」など、状況によって、必要な手続きや届出は異なります。

今回は、個人事業主の住所変更にともなう、具体的な手続きや届出について解説します。

住所変更したらどんな手続きが必要?ケース別に解説

個人事業主は、引越しなどで住所変更をした場合、主に「納税」と「社会保険」にかかわる手続きをします。
特に「社会保険」については、従業員を雇用しているかによって必要な手続きは異なります。基本的にはこの2種類の手続きを、税務署などで行うこととなります。

どの住所を開業届で申請しているかによって異なる

個人事業主は、原則として事業を始める際に税務署へ「開業届」を提出します。この開業届に「納税地」や「事業所」として記載していた住所を、引っ越しなどの理由で変更する場合に、手続きが必要となります。

一般的に自宅兼事務所の場合、自宅の住所を納税地として登録しますが、自宅と異なる場所に事務所を構えている場合、事務所の住所を納税地とすることも可能です。自宅の住所は変更したけれど、納税地として登録している事務所の住所は変わらない、という場合は、申請は不要です。

従業員を雇っていない個人事業主の場合

自宅兼事務所を引っ越す場合

自宅が事業所であり、かつ自宅住所が納税地である場合は、以下の書類を提出します。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出

納税地として登録した事務所を引っ越す場合

自宅とは別に事業所を構えており、かつ事業所が納税地である場合に、事業所を引っ越した場合は以下の書類を提出します。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出

事務所ではなく自宅だけ引っ越す場合

自宅とは別に事業所を構えており、かつ事業所が納税地である場合、引っ越したのが自宅のみであれば、届出は不要です。

納税地ではない事業所を引っ越す場合

自宅を納税地としており、かつ事業所のみ引っ越した場合は以下の書類を提出します。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書

従業員を雇っている場合

基本的には以下の届出書を提出しますが、事業の状況によって提出する書類は異なります。

  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
  • 適用事務所 名称/所在地変更(訂正)届
  • 健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届

続いて、具体的な手続きの方法について解説します。

住所変更に関する手続きについて

住所変更に関する手続きは、管轄の税務署などで行います。提出期限を設けられている手続きもあるため、注意してください。

届出書の一覧

具体的に必要な届出書を紹介します。届出書は、国税庁のウェブサイトでダウンロード可能です。

① 個人事業の開業・廃業等届出書

納税地や事業所を引っ越した場合、提出します。提出期限は、廃業・移転した日から1ヵ月以内で、提出先は移転前の所轄税務署です。

個人事業の開業・廃業等届出書

引用元:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

書類の名称が「開業・廃業」という名称のため、移転は含まれないように思われるかもしれませんが、以下の通り記入する項目があります。

個人事業の開業・廃業等届出書内の移転に関する記入欄

[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁を元に作成

また原則として、給与を支払う従業員などがいる場合は、このあと説明する③の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出する必要がありますが、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する場合は不要です。

② 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書

これまで確定申告をして税金を納めていた管轄の税務署が変わり、納税地に変更がある場合は、こちらの届出書を提出しましょう。提出先は、変更前の移転前の管轄税務署です。

なお、同じ区内で引っ越しをするなど、管轄の税務署が変わらない場合は、この書類は提出不要です。

所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書

引用:[手続名]所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出手続|国税庁

また、納税地を指定されている場合も提出不要です。納税地の指定とは、その事業者の行う資産の譲渡等の状況からみて納税地として不適当であると認められる場合に、その納税地の所轄国税局長又は国税庁長官が納税地を指定することです。

③ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書

給与などの支払いを行う事務所を開設、移転、廃止などをした場合は、こちらの届出書を提出してください。
※「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出した場合は不要

提出期限は、開設・移転・廃止を行った日から1ヵ月以内で、提出先は移転前の管轄税務署です。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書

引用:[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

海外へ引っ越した際に必要な手続き一覧

個人事業主として国内で活動してきた方が、生活の拠点を海外へ移した場合に必要な手続きを紹介します。

廃業の手続き

海外に引っ越して国内に住所を持たない非居住者となった場合は、住所変更ではなく廃業手続きを進めましょう。実際に廃業するわけではなく、海外で仕事を続ける場合にも必要となります。
個人事業を廃止する場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。

青色申告の取りやめ

個人事業を廃止し、青色申告をやめる場合は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。提出期限は、青色申告をやめる年の翌年3月15日までです。
※提出期限が土日祝日の場合は、これらの日の翌日が期限

確定申告

海外に引っ越す場合は、1月1日~出国日までの確定申告書類を提出します。
もし、なんらかの事情により、代理人に確定申告をお願いする場合は、出国日までに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出し、代理人に翌年の2月16日〜3月15日までに申告してもらいましょう。
代理人には、親族だけでなく会社や税理士などを選ぶこともできます。

パスポート

パスポートは、通常の引越しでは手続き不要です。本籍地を移転した場合のみ、新規のパスポート発行あるいは「記載事項変更旅券」(手数料6,000円)の発行で変更します。

国民年金

海外へ引っ越す場合は、その国と日本間での「社会保障協定」締結の有無によって、手続きが異なります。
社会保障協定の無い国に行く場合は、その国と日本で社会保険制度へ二重に加入しなければならないケースもあります。
詳細は、日本年金機構のホームページをご確認ください。

従業員がいる場合は、厚生年金保険や労働保険の手続きが必要

ここまでで紹介した「移転に関する手続き」のほかに、従業員を常時5名以上雇用している個人事業所(※)など、厚生年金保険や労働保険に加入している事業所が住所変更する場合、加入状況に応じて書類を提出する必要があります。
※旅館、飲食店、理容店などのサービス業は除く

提出書類

  • 健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届
    提出期限は住所変更から5日以内で、提出先は移転前の管轄年金事務所です。
  • 労働保険名称、所在地等変更届
    提出期限は住所変更の翌日から10日以内で、提出先は所轄の労働基準監督署またはハローワークです。
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届
    提出期限は住所変更の翌日から10日以内で、提出先は所轄のハローワークです。

住所変更したら早めに手続き・届け出をしよう!

個人事業主の状況によって、必要な住所変更の手続きや届け出は異なります。また、書類提出時に添付書類が必要な場合もありますので、提出先の窓口に事前に確認しておきましょう。

引っ越し時は、なにかと忙しくなりますが、早めに手続きを終えることをおすすめします。