新しい資金調達の方法として、クラウドファンディングが定着しつつあります。
クラウドファンディングは、Crowd(群衆)とFunding(資金調達)からできた造語で、インターネットを通じ、不特定多数の人からプロジェクトや事業を行うための資金を集める方法です。
一人あたり数百円〜数千円といった少額から支援を受けられることもあり、金融機関やベンチャーキャピタルからの出資より多くの資金を集められる可能性がある点が一番の特徴です。
新型コロナウイルスの影響で、苦境に立たされている事業者やクリエイターなど、今まさにクラウドファンディングを検討されている方もいるかもしれません。今回は、クラウドファンディングの定義や種類、メリット・デメリット、各社のサービスについて解説します。
クラウドファンディングの定義と種類
まずはクラウドファンディングの定義や種類について解説します。
クラウドファンディングとは?
これまでの一般的な資金調達の方法は、金融機関からの借入や、知人・ベンチャーキャピタルからの出資などでした。
一方で、クラウドファンディングは「オンラインの拡散性」や「資金調達の手軽さ」、「テストマーケティングに有効」といったこれまでの資金調達にはない魅力を持っています。
矢野経済研究所の調査によると、国内のクラウドファンディングの市場規模(新規プロジェクト支援額)は、2014年の約222億円から2018年の約2,044億円まで右肩上がりで拡大しています。
最近では新型コロナウイルスの影響で売上の低迷した事業者やクリエイターなどを支えるためのプロジェクトも盛んになっています。
クラウドファンディングの主な3種類
クラウドファンディングには、主に「購入型」「寄付型」「金融型」の3種類があります。
購入型クラウドファンディング
出資してくれた支援者に対し、商品・サービスをリターンとして提供します。支援者は、「これから開発(発売)される新しい商品・サービスを先んじて購入する」という感覚で出資を行えます。一番一般的なクラウドファンディングです。
寄付型クラウドファンディング
支援者へのリターン無しに、寄付を募ります。リターンの代わりに手紙や写真をお礼として贈ることもあります。社会貢献性の高いプロジェクトでよく行われます。
金融型クラウドファンディング
支援者に対して、金銭的なリターンを提供します。「融資型(貸付型)」「ファンド型」「株式型」の3つに分けられます。
- 融資型(貸付型)
クラウドファンディング事業者が、複数の個人投資家からの小口の出資をまとめ、プロジェクトの起案事業者に大口で融資する仕組みです。起案事業者は、支援の募集スタート時にリターンの利率を発表し、支援者に毎月金利を支払うこととなります。
融資型(貸付型)は、2018年のクラウドファンディング国内市場の約9割を占めています。 - ファンド型
ビジネスに対する出資を個人投資家から募り、ビジネスから得た利益を分配金として支援者に配ります。利益額に応じて分配金が変わるため、支援者の収益はビジネスの成功に左右されます。 - 株式型
個人投資家の出資に対して「企業の未公開株」をリターンとして提供します。支援先の企業がM&AやIPO(新規上場株式)を視野に入れている場合、支援者は株式の売却による収益を期待できます。
クラウドファンディングの2種類の達成基準
クラウドファンディングを始めても、100%プロジェクトが成立するとは限りません。クラウドファンディングの成立基準は、「All or Nothing型」と「All In型」の2種類に分けられます。
All or Nothing型
募集期間中に目標金額を達成した場合のみ、プロジェクトが成立します。もし、目標金額に達成できなければ、支援者からの支援はすべてキャンセル・全額返金され、リターンも行う必要がありません。
目標金額に達しない限り、プロジェクトの実行が難しい場合におすすめです。
All In型
募集期間中に目標金額を達成できなくともプロジェクトの成立が認められ、終了時点の支援を受け取ることができます。
ただし、目標金額に達成しなくてもプロジェクトを必ず実行し、リターンを提供する必要があるため、プロジェクトの内容を「目標金額の不足で実行が困難になる」と判断された場合、クラウドファンディングサービス側の審査に落ちることもあります。
クラウドファンディングのメリット・デメリット
クラウドファンディングのメリット
利用者が増えている背景には、クラウドファンディングのメリットによるところが大きいです。主に3つのメリットがあります。
資金調達できる可能性が広がる
金融機関やベンチャーキャピタルからの出資を受けられなかったビジネスやプロジェクトでも、支援者の共感・支持を得られれば資金調達を行えます。
また、テストマーケティングとして商品・サービスを市場に提供し、ユーザーの反応を試験的に確認することもできます。
現金以外のリターンを設定できる
支援者へのリターンを現金以外の商品やサービス、株式などで設定することができます。寄付型クラウドファンディングは、そもそもリターンを設定しなくても構いません。
ファンを獲得しやすい
支援者は、ビジネスやプロジェクトに賛同しているからこそ、支援を行います。商品やサービスのファンになり、継続的な顧客になってくれる可能性も高いでしょう。
クラウドファンディングのデメリット・注意点
気軽に始められるクラウドファンディングですが、実際にやってみると、実は大変なポイントもあります。安易にクラウドファンディングを行わず、まずデメリット・注意点も理解しておきましょう。
資金調達の目処が立ちにくい
支援の募集期間中に目標金額が集まる保証はありません。スピーディな資金調達を行いたい場合、希望したタイミングで資金を得られない可能性もあります。ビジネスやプロジェクトの資金調達に期限がある場合は、資金調達のすべてをクラウドファンディングに頼ることは避けた方が良いでしょう。
認知してもらえないと支援を受けられない
募集開始までにプロジェクトの周知を徹底しておく必要があります。プロジェクトの共感・賛同を得る以前に、「そもそもプロジェクトの存在を知られていない」ために目標金額に達しない可能性があるからです。
また、「今日は何人に支援してもらえた」「目標達成まであと○人…」など、募集終了まで常に気を配る必要があり、人によっては精神的な負担になるケースも。
クラウドファンディングサービスのサイトから流入する支援者は限られているため、SNSでの発信や、WEB広告の運用などが必要となるでしょう。
管理コストがかかる
大勢の支援者から資金調達を受けた場合、リターンとして商品・サービスの発送、分配金の振込といった業務、手続きが大量に発生します。人手やシステムなどの管理コストが発生し、事業やプロジェクトの負担になりかねません。
プロジェクトは簡単に中止できない
特に「All In型」のクラウドファンディングは、一人でも支援者がいれば、特別な事情が無い限り、最後までプロジェクトをやり遂げなければなりません。
また、目標金額を達成してプロジェクトを進めたにもかかわらず、何らかの事情で失敗してしまうと、社会的信用を失う可能性があります。
成功するクラウドファンディング―――「あったら楽しそう」のワクワク感にお金が集まる
有名なクラウドファンディングサービス
有名なクラウドファンディングサービスについて種類別にご紹介します。基本的には、これらのサービスを活用して資金調達を行う代わりに、手数料を支払います。
購入型クラウドファンディング
CAMPFIRE
2011年のサービス開始から、2019年2月に累計流通額100億円、同年10月に150億円を突破したクラウドファンディング企業です。
新型コロナウイルスサポートプログラムでは、通常のサービス手数料12%および決済手数料5%を無料で提供しています。
Makuake
株式会社サイバーエージェントのグループ企業である株式会社マクアケが運営しています。2019年9月に会員数75万人を突破し、同年12月に東証マザーズ上場を果たしました。
グリーンファンディング(GREEN FUNDING)
出版・CD・DVD・ガジェットといったプロダクトを多く扱っています。CCC(TSUTAYA)グループの店舗と連携して、店舗での展示や販売、体験会も行えます。
寄付型クラウドファンディング
FAAVO(ファーボ)
「まちでいちばん身近なクラウドファンディング」として、地域活性化につながるプロジェクトに特化しています。
Readyfor(レディーフォー)
日本初のクラウドファンディングサイトであり、購入型のプロジェクトも行っています。寄付型特化の「Readyfor Charity」だけでなく、ふるさと納税に特化した「READYFOR ふるさと納税」、国際協力活動応援プログラム「Readyfor VOYAGE」、大学向けの「READYFOR Colleage」など、さまざまなプログラムを有しています。
金融型クラウドファンディング
CAMPFIRE Owners(キャンプファイヤーオーナーズ)
株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITALが運営する融資型クラウドファンディング。投資は1万円から可能です。
セキュリテ
ファンド型クラウドファンディングのプラットフォームです。ファンドの審査基準にSDGs(持続可能な開発目標)を採用しているのが特徴です。
FUNDINNO(ファンディーノ)
株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームです。リターンの一つである「FUNDINNO型新株予約権」を得ると、株式を取得する権利を行使できるようになります。
事業やプロジェクトに応じたクラウドファンディングを選ぼう!
新型コロナウイルスの影響で、クラウドファンディングを検討されている事業者の方もいるかもしれません。今回ご紹介した通り、クラウドファンディングの形態は多岐にわたるため、事業に適した方法で資金調達を行いましょう。実行の際にはデメリット・注意点を踏まえ、プロジェクトの成功につながる準備を進めましょう。