フリーランスになったら、これまで扶養に入れていた家族はどうなるのだろう……? 会社から独立して働くことを考えている人の中には、そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。実際にサラリーマンとフリーランスでは、扶養の扱いに変化が生じます。いったいどのような影響が出るのか、解説します。

そもそも扶養とは?

まず一般的に「扶養」とは、一定額以下の収入の家族や親族に対し、経済的な面倒を見て養うことを意味する言葉です。例えば「妻が夫の扶養に入る」と言った場合、妻には一定額以下の収入しかなく、主に夫の収入によって生活している状態を指しています。

家族や親族を扶養に入れると、税額の軽減や家族分の保険料の免除などが受けられる仕組みになっています。

税法上と社会保険上、2種類の扶養がある

一口に扶養と言っても、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があるのをご存知でしょうか? それぞれで意味や条件が異なるので、注意する必要があります。

税法上の扶養とは

まず税法上の扶養とは、税金の控除に関係するものです。会社員でもフリーランスでも、制度としては何も変わりません。納税者の働き方や職業に関わらず、家族を扶養に入れると、所得税や住民税の税額が軽減されるというメリットがあり、扶養に入れられるかどうかの基準は、家族の所得の額によって決まります。

▼参考記事▼
節税につながる「控除」とは? 所得控除と税額控除の仕組みについて

令和3年6月現在/オール図解でスッキリわかる 社会保険・労働保険の事務手続

社会保険上の扶養とは

次に社会保険の扶養です。こちらは健康保険および年金に関係するものです。
税法上の扶養とは異なり、会社員とフリーランスでは、はっきりとした違いが生じてしまうので、注意する必要があります。

社会保険上の扶養の対象

社会保険上の扶養の対象となるのは、75歳未満の配偶者と3親等内の親族だけです。ただし、法律的に家族にはならない内縁関係の配偶者や、亡くなった内縁関係の配偶者の父母や子どもも扶養の対象とすることができます。

なお、配偶者、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母は同居していなくても扶養にすることが可能です。しかし、ほかの3親等内の親族については同居の必要があるので注意しましょう。

加入できる社会保険の種類

そもそも社会保険は「公的医療保険」と「公的年金」の2つからなる制度で、会社員とフリーランスでは、それぞれ加入できる保険が異なります。

①会社員が加入する社会保険(保険料は会社と折半)

公的医療保険: 勤務先の健康保険組合の健康保険
公的年金: 厚生年金

対象となる親族の年収が130万円未満(60歳以上または障害を持っている場合は180万円未満)であれば、扶養に追加することができます。被扶養者は保険料を支払うことなく、健康保険の給付を受けることが可能。また、20歳以上60歳未満であれば、国民年金第3号被保険者として保険料の負担なく、国民年金に加入することができます。

②フリーランスが加入する社会保険(保険料は全額自己負担)

公的医療保険: 国民健康保険
公的年金: 国民年金

一方、フリーランスが一般的に加入する国民健康保険および国民年金には、そもそも扶養の仕組みがありません。そのため家族の所得に関係なく、加入する人すべての保険料が必要となります。

つまり、会社を退職してフリーランスになると、それまで社会保険上の扶養に入っていた家族は、自動的に扶養から外れることになります。このため扶養家族が多い人の場合、国民健康保険に切り替えたとたん保険料が大幅に上がってしまうので注意しなければなりません。

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保険を「任意継続」すれば、扶養も継続可能

しかし、フリーランスの人でも社会保険の扶養を利用できる方法があります。退職した勤務先の健康保険を「任意継続」する方法です。

任意継続とは、それまでの会社で加入していた健康保険に、退職後も最大2年間は継続して加入できる制度です。それまでの健康保険を任意継続している間は、退職前と同じように社会保険の扶養を引き続き利用することが可能。それまで扶養に入っていた親族も、扶養から外れることはありません。

ただし会社で折半してくれていた保険料は、全額自分で負担しなければなりません。また公的年金については、それまでの厚生年金を継続することはできないため、必ず国民年金に加入し、配偶者も保険料を支払う必要があります。

家族への影響も考えて独立を

このように、会社員からフリーランスになると、社会保険上の扶養には大きな変化が生じます。また、税法上の扶養についても、配偶者や家族の働く量が増え、所得が一定額を超えれば、扶養から外れてしまう可能性があるため、事前に収入を計算するなどの注意が必要です。

フリーランスになるのであれば、家族にどのような影響が出るのか、よく理解した上で、独立するようにしましょう。

令和3年6月改訂 社会保険・労働保険の事務百科