個人事業主や中小企業が、事業で1年以上にわたって使う高額な物品(パソコン・車・製造機器などの固定資産)を購入した場合、一度に経費計上するのではなく、数年間にわたって経費に振り替えていく必要があります。この制度は「減価償却」といい、法律で定められています。

経営に関わる重要な会計手続きとなるため、概要を理解しておきましょう。今回は、減価償却の定義や範囲、計算方法などについて解説します。

減価償却とは?

減価償却費とは、経理処理で使う「勘定科目」の一つです。

勘定科目とは、事業に関する取引を、その性質ごとに振り分けるための項目です。たとえば、スマホ代は「通信費」、出張代は「旅費交通費」といった勘定科目に振り分けます。

勘定科目を使うことで「いつ何にいくら使ったか」を把握することができます。

減価償却ってなに?

減価償却費は、事業のために購入した高額な物品などの固定資産を、年度ごとに経費に振り替えていくために用いる勘定科目です。固定資産によって基準の使用期間(耐用年数)が法律で定められています。減価償却の対象となる固定資産は、高額な車やパソコン、家具などの物品が当てはまります。

たとえば、300万円の車を買った場合、その年に300万円すべてを経費にするのではなく、毎年50万円ずつ経費にしていきます。

減価償却しなければダメ?

個人事業主と法人で扱いが異なります。

個人事業主は、「強制償却」を法律で定められています。固定資産がある場合、毎年、償却限度額まで減価償却費を経費計上しなければなりません。
※償却限度額とは、後述する減価償却費の計算方法で定められている上限額のこと

法人は、「任意償却」となります。固定資産がある場合、0円〜償却限度額の間で任意の金額を減価償却として経費計上できます。ただし、当年に経費計上しなかったからといって、翌年に2年分の償却限度額をまとめて計上することはできません。

減価償却は何の役に立つ?

会計における減価償却の目的は、「時間が経って劣化し価値の減っていく固定資産を、年ごとに分割して経費にすることで正しく資産の会計処理を行うこと」です。

一方、事業の収支バランスを保つためにも減価償却は重要です。たとえば、1,000万円の機械を購入した場合、事業にとって必要な投資ですが、その年に全額を経費にすると、会計上は赤字になってしまうかもしれません。銀行などの融資機関から、「あの事業は赤字で不安定」と判断され、融資を打ち切られる恐れもあります。そこで、1,000万円を分割して経費にする(減価償却する)と、実質的な収支を提示することができます。

一方、税務的な側面からは、一度に大きな固定資産購入額を経費計上されると、年度によって税収にバラつきが出ることになります。それを避け、税収の平準化、公平感のためにある手続きとも言えます。

減価償却できる資産は?

以下の条件を満たす資産が対象です。

①業務に使う
②時間が経つと劣化する
③1年を超えて使用する

対象の固定資産には2種類あります。目に見える資産を「有形固定資産」、目に見えない資産を「無形固定資産」といいます。

減価償却できる 減価償却できない
有形固定資産 車両、機械(パソコン、プリンター)、建物、備品・工具など 美術品、骨董品など
無形固定資産 ソフトウエア、特許権、漁業権、意匠権、商標権、実用新案権など 土地・借地権、電話加入権など

時間が経っても価値が減らない可能性のある固定資産は、減価償却の対象外です。たとえば、土地・借地権は時間が経っても劣化せず、骨董品はむしろ価値の高まる可能性すらあります。

なお、使用期間が1年未満のものや、10万円未満のものは消耗品費として、その年の経費にすることになります。

一度に経費計上できる条件とは?

さほど高額でない固定資産については、減価償却で数年にわたって経費計上すると、かえって経理の手間になってしまいます。個人事業主は、一定の条件下で固定資産を一度に経費計上できます。

固定資産1個(1組)当たりの価格
青色申告者 30万円未満(※)
白色申告者 10万円未満

※「少額減価償却資産の特例」に基づく。令和4年3月31日までを特例期間としている

また、青色申告者・白色申告者、両方が「10万円以上20万円未満の固定資産を3年で均等に減価償却できる」特例(一括償却資産の特例)も設けられています。

減価償却の計算方法

「固定資産を毎年いくら減価償却費に計上できるのか?」を計算するための基準となるのが、「耐用年数」です。耐用年数とは、その固定資産が利用(劣化)に耐えられる年数のこと。固定資産ごとに耐用年数が法律で定められています。

この耐用年数を基準とし、「定額法」と「定率法」のどちらかを選んで計算を行います。ただし、個人事業主の場合は原則「定額法」となります。法人の場合も、固定資産の種類や取得日ごとに償却方法が定められているので、償却方法は選べません。定められた償却方法以外を選びたい場合は、税務署に届出をする必要があります。

毎年決まった額の減価償却を行う「定額法」

定額法は、以下の計算式を用います。

減価償却費 = 取得価額 × 耐用年数に応じて定められた定額法の償却率

普通乗用車を300万円で買った場合

法定の耐用年数:6年
6年の償却率:0.167

減価償却費 = 300万円 × 0.167 = 50.1万円

毎年50.1万円を6年間にわたって、経費計上します。

「定額法」は毎年決まった額の減価償却を行う

だんだん減価償却費が少なくなる「定率法」

定率法は、以下の計算式を用います。

減価償却費 = 前期末の帳簿価額(取得した年は取得価額)× 耐用年数に応じて定められた定率法の償却率

普通乗用車を300万円で買った場合

法定の耐用年数:6年
6年の償却率:0.333

取得した年の減価償却費 = 300万円 × 0.333 = 99.9万円
翌年の減価償却費 = (300万円 – 99.9万円)× 0.333 = 約66.6万円

上記計算方法で、各年の減価償却費は以下のように算出できます。
※未償却残高とは、まだ経費計上していない残高です。

減価償却費 未償却残高
1年目 ¥999,000 ¥2,001,000
2年目 ¥666,333 ¥1,334,667
3年目 ¥444,444 ¥890,223
4年目 ¥296,444 ¥593,779
5年目 ¥197,728 ¥396,051
6年目 ¥131,885 ¥264,166

このように、定率法の場合、減価償却費が毎年減、6年目以降も経費計上しなければならず、全てを計上までかなりの年数がかかってしまいます。

「定率法」はだんだん減価償却費が少なくなる

そこで、途中から別の計算式を用いて減価償却費を算出することができます。ただし、計算方式はかなり複雑になるため、会計士・税理士などの専門家に頼る、もしくは会計ソフトで対応することが望ましいでしょう。

定額法と定率法のメリット・デメリット

2つの計算方式には、以下のメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
定額法 ・計算方法が分かりやすく、帳簿の扱いがシンプルになる
・初期の利益を多く見せられる
・節税効果を見込めない可能性がある
定率法 ・始めの頃は節税効果が大きい
・早い段階で購入費用の回収ができる
・計算方法が複雑
・年数が経つほど節税効果が薄れる

定額法は、一定額を毎年経費に計上するため、定率法に比べると帳簿をつけやすくなります。また、最初から最後まで一定額となるため、定率法に比べると始めの年度の減価償却費が少なく、利益を多く見せられます。

一方で、始めの年度の減価償却費が少ない分、そのタイミングでの節税効果を狙いにくくなります。中には、定額法だけを指定される固定資産もあります。

定率法は、始めの年度で減価償却費が高く、節税効果を見込めます。早期に購入費用を回収したい場合に適しています。

一方で、計算方法が複雑になりがちで、自分で行うには負担が大きいです。また、後半の年度では、節税効果も薄れていきます。

資産の会計処理を正しく行おう!

個人事業主の場合は原則、定額法となります。法人の場合も原則、固定資産の種類や取得日ごとに償却方法が定められているので、しっかり確認する必要があります。ただ、法定の償却方法以外を適したい時は、届け出をすることにより変更が可能です。

複雑ではありますが、減価償却は経理の基本の1つですので、正しく理解してビジネスに活かしていきましょう!

監修:合同会社ハートコムF&A
中小企業や個人事業主の方々の右腕となるべく、日々の記帳処理から決算支援、起業・資金調達支援、給料等総務関連といったバックオフィス業務全般を柱に、各種経営・税務アドバイス、コンサルティング業務を受託。