都市部で働くのではなく、地方に移住し、自分の手で農作物を育てる「農家」に憧れる方もいるでしょう。しかし、移住先で本当に農家として働くことができるか、不安があるかもしれません。

今回は、農業の種類や移住先で農業を始める方法、利用できる支援制度について解説します。

農業にはどんな種類がある?

農業には、主に以下の2種類があります。

耕種農業

田畑を耕して種や苗を植え、農作物を育てる農業です。
農作物は、米や麦、豆、野菜、果物、花き(観賞用の植物)などです。

栽培方法は、田んぼで育てる「稲作」、畑で育てる「畑作」、畑かつ屋外で育てる「露地栽培」、屋内で育てる「施設栽培」などを農作物によって使い分けます。

畜産農業

牛や豚、鶏、蜂などの動物・昆虫を育てる農業です。
耕種農業は基本的に1年ごとに出荷できますが、卵や牛乳以外の肉類の出荷は1年以上かかることもあるため、収支計画を立てる必要があります。

おおまかにはこの2種類ですが、科学的に合成された農薬・肥料を使わない「有機栽培」や、有機栽培飼料を使ってできるだけ自然に育てた「有機畜産物」など、栽培方法によってさらに分類されていきます。
自分がどういった農業を行いたいかも、見極めていく必要があるでしょう。

移住先で未経験から農業を始める方法

農業を始める方法には、主として「独立開業」と「農家への就職」という2つの方法があります。

独立開業して農業を始める

自分の農地を持ち、好きな農作物を育て、収入を得ていく方法です。いきなり独立開業するのではなく、まずは農業研修を受けることが一般的です。

研修後に農地を確保し、施設や機械をそろえて農作物を育てていきます。確保できる農地の有無は、移住前に自治体などで確認しておきましょう。

新規農家は初期投資が多くかかり、経験を積むまでは収入も安定しにくいため、自己資金だけでなく、後述する支援制度などを活用することをおすすめします。

農家に就職して農業を始める

地方農家(主に農業法人など)は人材確保のために、積極的に就農者を募集しています。
農家に就職すると、収入を得ながら農業のノウハウについて実践的に学ぶことができます。場合によっては、後継として農家を任せられることもあるでしょう。

農家の求人については、「農家のおしごとナビ」や「あぐりナビ」などで探すことができます。住みたい地域や育てたい農作物、雇用条件などから、就農先を探すとよいでしょう。

利用できる就農支援制度

ここからは、農業を始める際に利用できる支援制度について解説します。

農業人材力強化総合支援事業

農林水産省が行う「農業人材力強化総合支援事業」は、次世代の人材を育成・確保するため、就農の準備から実際の就農、経営の確立までをサポートする制度です。

4つある施策のうち、返済不要で資金交付されるのが「農業次世代人材投資事業」です。
これには、「準備型」と「経営開始型」の2種類があります。

準備型

対象者:就農予定時に49歳以下、前年の世帯所得600万円以下など
対象経費:就農に向けた技術習得などの研修費(1年間で1,200時間以上の研修)
交付額:最大150万円/年(最長2年間)

経営開始型

対象者:認定新規就農者、自営・独立就農時に49歳以下、前年の世帯所得600万円以下など
交付額:経営開始1〜3年目150万円/年、経営開始4〜5年目120万円/年
(最長5年間だが、前年の世帯所得が600万円を超えると対象外)

認定新規就農者とは、市町村から「青年等就農計画制度」で認定された個人・法人のことです。「青年等就農計画制度」とは、新規就農者の創出・育成のために市町村に合う人材を認定し、「農業次世代人材投資事業」や「青年等就農資金」などの支援事業を利用できるというメリットのある制度です。

青年等就農資金

「青年等就農資金」とは、日本政策金融公庫が実施する無利子の融資事業です。

対象者:認定新規就農者
対象経費:農業用の施設や機械、借地料、家畜・果樹の育成など
金利:なし
借入上限額:3,700万円(特認1億円)
償還期限:17年以内(据置期間5年以内)
担保:融資対象物件のみ
保証人:個人の場合は不要、法人は場合により必要だが代表者のみ

ただし、青年等就農資金では、新たな農地の取得にかかる費用は対象外となるため、土地を取得する場合には、次に紹介する制度を利用することをおすすめします。

経営体育成強化資金

日本政策金融公庫が提供する「経営体育成強化資金」とは、農業経営のために利用する資金を有利子で提供する制度です。

対象者:経営改善計画などを融資機関に提出した個人・法人
対象経費:農地の取得・改良・造成、施設や機械、家畜・果樹の育成など
金利:0.30%
借入上限額:個人1億5,000万円、法人5億円以内
償還期限:25年以内(据置期間3年以内)
担保・保証人:相談の上、決定

農業近代化資金

「農業近代化資金」は、主に経営改善を目的とする融資制度です。

対象者:認定新規就農者や主業農業者など、農業を営む者
対象経費:農業用の施設や機械、農地改良、家畜・果樹の育成など
金利:0.20%(※認定農業者は、借入期間により0.16%〜0.18%に設定)
借入上限額:個人1,800万円(知事特認2億円)、法人2億円
償還期限:7〜20年以内(据置期間2〜7年以内)

農業近代化資金の融資相談は、JAや金融機関、日本政策金融公庫支店などで行えます。

移住支援金

「移住支援金」とは、東京圏からの移住を支援する制度の1つです。

支援対象者は、次の3点に当てはまる方です。
①移住までの過去10年間で東京23区に通算5年以上在住または東京圏から東京23区に通勤している
②東京圏外(または東京圏の条件不利地域)に移住する
③各都道府県が指定する中小企業への就業、テレワークにより移住前の業務を継続、もしくは社会的起業をする

支援上限額は、100万円(単身者は60万円)以内です。
移住後、地方の課題解決のために社会的起業をする方には、「起業支援金」で別途、最大200万円を受け取ることも可能です。

詳しい条件などは、こちらの記事をご参考ください。
移住支援制度とは?もらえる支援金額や制度活用のメリット・注意点

各自治体の支援制度

この他に、各自治体で実施している独自の支援制度を利用することもできます。
都道府県ごとの就農支援制度を調べる場合は、全国新規就農相談センターの「農業をはじめる.JP」などを参考にしてみてください。

移住先での就農に興味を持ったらまずは相談を!

農業には種類があり、どういった農作物や家畜を育てるかによって学ぶべき内容も異なります。自分の希望を固めるために、都道府県にある「就農相談窓口」で相談することをおすすめします。

実際に就農を決意したら、支援制度を活用しつつ、経営・収入の確立を目指しましょう。
都市部とは違う働き方を地方移住で楽しんでみてはいかがでしょうか。

※掲載情報は2021/5/11時点