飲食店を経営したい――。その夢を実現させるためには、いくつもの準備をこなす必要があります。資金を調達して、物件を探し、改装プランを練り、必要な道具を買いそろえ、仕入れ業者と交渉する。考えなければいけないこと、決断すべきことがたくさんあるので、円滑に準備を進めるには情報の整理が不可欠です。

ここでは、飲食店を開業する場合を想定し、フレームワークを活用した実践的な開業計画の立て方をご紹介します。

フレームワークとは?「飲食店開業フレームワーク」の使い方

フレームワークは、事業企画やマーケティング戦略において、情報整理のために使われる手法の一つです。専門知識がなくても、体系立ててまとめられた枠組み(フレーム)の中に必要事項を埋めていくことで、計画を遂行するためにすべきことが明確になり、プランの精度を上げられます。

今回用意した「飲食店開業フレームワーク」を使うことで、お店のコンセプト立案から資金計画、店舗やメニューの開発、スタッフの採用や配置など、開業にあたっての方針が明確になります。また、開業と同時にしっかりした営業・運営を行うためのチェックリストとしても機能しています。

フレームワークのダウンロードはこちら
※「飲食店開業フレームワーク」はExcelファイルです。ダウンロードしてお使いください。

「飲食店開業フレームワーク」の構成は以下の通りです。

FW1 ショップコンセプト…………お店のコンセプトを具体化しよう ←今回はココ
FW2 資金計画1 ……………………開業までに必要な費用を試算しよう
FW3 資金計画2 ……………………月次収支(売上とランニングコスト)を予測しよう
FW4 資金計画3 ……………………資金の調達先と返済計画をたてよう
FW5 店舗開発/設備備品リスト…物件探しの条件、委託業者との交渉結果を記録しよう
FW6 メニューと売上………………売上高と食材原価から客単価を検討しよう
FW7 メニュー原価表/食材一覧…メニューの原価と原価率を計算してみよう
FW8 人員配置と人件費……………営業に必要な人数と、人件費のコストを管理しよう

8つのステップごとに、対象のフレームワークの空欄を埋め、表を完成させます。飲食店のスタイルは多様ですが、極力シンプルに、ミニマムに作成しています。必要に応じて、カスタマイズしてお使いください。

お店のコンセプトを具体化しよう

まずは、お店のコンセプトを決めましょう。「飲食店開業フレームワーク」の一枚目「FW1 ショップコンセプト」を使用します。

「FW1 ショップコンセプト」シート

各欄を埋めながら、お店の全容を明らかにしていきます。

1.オリジナリティ

他にない魅力、自分のお店ならではの特長、誇れることなど、お店の独自性を示します。

※例)国産素材を格安料金で、ベジタリアンやヴィーガン向けのメニューを用意、など

2.時代背景

社会的な風潮や時代の傾向から、店が時代にマッチしていると思われる理由を挙げます。

※例)高齢化社会が進む中での健康意識、1人暮らしの健康志向(塩分・糖分・グルテンフリー)が求められている、など

3.立地特長

店を構えたい場所の地域的な特長を書き出します。

※例)1人暮らしの若者が多い、ファミリー向け住宅街、昔ながらの下町の雰囲気、など

4.コンセプト

上段に書いた1~3の内容を踏まえて、自分の店がお客様から「選ばれる理由」として考えられることを短い文章でまとめます。

5.業種 / 6.業態

業種および業態は、「何を、どのように提供するのか」を表す分類です。
一口に飲食店といっても、そば、うどん、ラーメン、洋食、中華、焼肉、寿司、カフェなど、提供する料理の分野によって方向性は変わります。この分類が「業種」です。

業種の分類例:総務省、経済産業省「経済構造実態調査による事業活動の区分

これに対して「業態」はサービスのスタイルです。例えば、そば店を営むにも、テーブル席、座敷、立ち食い、出前専門など、様々なスタイルが考えられます。どのように売るかは自分次第なので、自由に決めて構いません。

7.店名

店舗名の案を書き入れておきます。来店前のお客様は、お店の名前からイメージを膨らませることも多いので、できるだけ覚えやすく、コンセプトの雰囲気が伝わるものが望ましいでしょう。

8.ターゲット

商売繁盛の秘訣は、お客様が喜ぶサービスやメニューを提供することです。どんな人なら喜んでくれそうか、ターゲットとなるお客様の姿をできるだけ具体的に絞り込んでイメージしましょう。年齢層、性別、職業、グループ、キャラクター特徴などを想像しながら、仮想の人物像(ペルソナ)を作っておくと、お客様のニーズを考えやすくなります。

また、人口密集地ではターゲットを絞り、密集地でないところでは、ターゲットをやや広げることが重要です。例えば、駅前では専門店が成り立ちますが、郊外型・住宅地では、お子様~お年寄りの家族層、近隣会社勤めをイメージする、といったことも検討しましょう。

9.セールスポイント

お店の魅力として伝えたいことを書き出します。

※例)古民家で和の情緒を楽しめる、女性ひとりでも入りやすいおしゃれな内装、など

10.代表メニュー

定番としたいメニュー、イチ押ししたいメニューを書き出します。

11.店舗規模(席数)

テーブル席とカウンターで20人ぐらいなど、だいたいの規模感を考えておきます。物件を探す時の手がかりの一つになります。

12.営業日・営業時間

定休日、開店時間・閉店時間などを暫定的に決めておきます。

13.立地

希望する立地条件を考えておきます。

※例)大通りに面している、テナントビルの低層階、隠れ家的雰囲気のところ、など

店のコンセプトは店舗経営の大切な道標

「FW1 ショップコンセプト」は、店の魅力や価値をどのようなものにするのか検討するためのシートです。プランを立てながら、何度も見返して内容を追加・修正し、内容を充実させていくことを想定しています。

そのため、最初から完璧に書き入れる必要はありません。簡潔なキーワードや短い文章の箇条書きだけでも十分ですので、書けるところから、少しずつ書き入れていきましょう。

コンセプトは、店のこだわりであり、お客様の興味を引く魅力です。コンセプト作りはおろそかにせず、目標とする姿をイメージしながら、練り上げることをおすすめします。コンセプトがきちんと確立していれば、方向性の指標となるので、次の行動が決断しやすくなります。

次回は、「FW2 資金計画1」を使って、開業までに必要な費用を試算する方法をご紹介します。

【監修】中島治孝(外食繁盛サポーター)