年間の所得を申告する「確定申告」。
青色申告を選ぶと、最大65万円の控除を受けられますが、会計処理が難しくなるため、煩雑さを感じる方も少なくないはずです。
しかし、会計ソフトを利用することで、スムーズな確定申告ができるようになっています。今回は、会計ソフトの操作手順を交えながら、確定申告書類の作成準備やチェックポイントを解説します。
白色申告と青色申告の違いや提出時期など、確定申告の基本はこちらの記事をご確認ください。
確定申告の基礎知識|これで初めての申告も怖くない!
また、青色申告を希望する場合、あらかじめ税務署で「青色申告承認申請書」の申請手続きを済ませておく必要があります。申請書の提出期限は決まっているため、間に合うように提出してください。
青色申告承認申請書の書き方|提出方法や注意点も解説
青色申告書作成前の準備
いざ確定申告書類を作成してみると、「ここの会計がおかしい」「あの書類が足りない」と、なかなか作業が進まないことがあります。
ただ、事前に次の準備をしておくと、スムーズに青色申告を進めることができるでしょう。
項目 | 内容 |
①現金出納帳 | 現金出納帳のマイナスは、現金を作り出して取引をしたことを意味します。マイナスになる前の期日で、「事業主借」として処理しておきましょう。 |
②売掛金帳 | 売掛金帳は、プラスマイナスゼロが基本です。ズレがある場合は、売掛金の計上・回収を確認してください。 |
③総勘定元帳 | 内容に誤りがないかを今一度確認してみましょう。 |
④固定資産・減価償却 | 10万円以上のパソコンや営業車などの固定資産の登録は済ませているでしょうか。また、減価償却費は、法定の耐用年数に従って計上してください。ただし、30万円未満の減価償却資産は、一括で経費計上できます。 |
⑤保険・年金の支払証明書 | 国民健康保険や生命保険、火災保険、国民年金などの支払い証明書を、必ず準備してください。 |
⑥棚卸の資料 | 12月31日時点の在庫を算出します。 |
⑦請求書・領収書 | 売上や仕入、経費に関係している請求書や領収書は、すべて集めておきましょう。 |
⑧預金通帳・借入予定返済表 | 貸借対照表の作成で使用します。原則として、12月31日時点の通帳や借入金の残高と、貸借対照表の残高は合致します。 |
⑨賃貸契約書・賃金台帳 | 損益計算書の作成に使用します。 |
青色申告に関係する書類は、7年間保存しておきましょう。税務調査を受けた場合、提出を求められます。
【会計ソフトfreee】青色確定申告書類の作成手順
ここからは、会計ソフト「freee」で年度中の決算を終えてから、青色確定申告書類を作成する手順を解説します。
※操作は2019年度分で実施。操作画面は2020年1月現在のもの。
1. 確定申告書類の作成をクリック
freeeにログインしたら、メニューバーから「確定申告」を選びましょう。確定申告の「確定申告書類の作成」をクリックします。
2. 基本情報や提出方法を入力する|申告・納付期限延長も
次のページでは、住所、氏名、生年月日などの基本情報を入力します。
※すでに登録を終えている場合は、入力を省略できます。
申告書の種類は、「青色申告」を選んでください。
提出方法も選びましょう。
「e-Tax」とは、オンラインで申告書を提出する方法です。詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。
「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」を選ぶこともできます。
これは、新型コロナウイルスの影響で、期限までの申告・納付が困難な場合に期限の延長ができる制度です。必要な方は、申請しておきましょう。
3. 収支・支出を入力し、質問に答える
次に進むと、収入・支出の入力を求められます。すべての入力を終えている場合は、先に進んでください。
また、年度始めの残高や、地代家賃についても入力を求められます。
細かな状況について、10個以上の質問が表示されます。「はい」か「いいえ」で答えましょう。
「はい」を選ぶと、項目ごとに詳しい情報を求められます。場合によっては、別途、書類を準備することになります。
4. 作成した申告書類を確認する
書類の内容を確認してください。PDFを出力して確認することもできます。
5. 支払い方法を選び、マイナンバーを添付
最後の書類提出です。「申告書の支払い方法」を選んでください。これは、確定申告で追加の納付が必要となった場合の支払い方法です。
青色申告書類をPDFファイルでダウンロードできます。
申告書へ印鑑を押し、個人番号(マイナンバー)を記入、本人確認書類の写しを添付します。
最初に指定した方法で提出して、完了です。
ちなみにe-Taxで提出する場合は、システム上で本人確認を行うため、「本人確認書類の写し」は不要です。
確定申告書類作成のチェックポイント・注意点
青色申告の確定申告書類を作成する際は、以下の点に気をつけてください。
65万円控除を受けるには諸条件あり
青色申告では、10万円または65万円の控除を受けられます。65万円控除では、次の条件を満たさなければなりません。
- 青色申告承認申請書を提出
- 事業所得または事業的規模の不動産所得での申請
- 青色申告決算書(損益計算書とその内訳、貸借対照表)を提出
- 複式簿記を選択
- 発生主義を選択
事業的規模の不動産所得とは、10部屋以上の貸室のあるアパート・マンション、5棟以上の戸建て、50台分以上の駐車場などが目安となります。
複式簿記は単式簿記より会計が難しくなったり、現金主義ではなく発生主義に基づく必要がありますが、これらは会計ソフトを利用すれば簡単に処理できます。
所得・取引・扶養家族・保険料は抜け漏れなく!
本稿で紹介した3つ目の手順で入力する項目は、納税額や控除額に関わります。
抜けや漏れがあると、追加で納税を求められたり、本当は受けられたはずの控除を受けられなくなってしまいます。
以下に心当たりのある方は、必ず入力し、必要書類を提出してください。
※ケースごとに必要な書類がこまかく分類されるため、おおまかな準備項目を紹介します。
ちなみに、e-Taxでは、書類添付ではなくシステム上で内容を直接入力します。
税務署から提示を求められた際に書類を提出できなければ、提出していなかったものとして取り扱われるため、ご注意ください。
該当項目 | 準備 |
会社からの給与 | 源泉徴収票 |
事業所得、不動産所得、雑所得、配当所得、一時所得など | 取引の所得を証明するもの |
株式取引、FX取引、仮想通貨取引など | 取引にかかわる情報 |
家事按分(自宅兼事務所) | 不要だが客観的事実が必要 |
弁護士や税理士に支払った源泉徴収税 | 源泉徴収票など |
前年度に繰り越した損失 | 前年に青色申告をしている場合は、その確定申告書 |
扶養家族、扶養している配偶者 | 家族の氏名、収入の証明書など |
医療費 | 医療費の控除証明書など |
生命保険、地震保険など | 生命保険、地震保険などの控除証明書 |
国民年金、国民年金基金、国民健康保険、その他社会保険料 | 国民年金、国民年金基金、国民健康保険などの支払い証明書 |
ふるさと納税 | 寄付額の証明書など |
小規模企業共済、企業型・個人型年金の掛け金 | 掛け金の支払いの控えなど |
住宅ローン、リフォーム(過去10年以内) | 住民票の写しやローンの年末残高等証明書、計算明細書など |
予定納税額の通知書 | 受け取っている場合は、通知書 |
確定申告書類の提出方法・相談窓口
最後に、確定申告書類の提出方法・相談窓口について解説します。
書類の提出方法
主に3つの提出方法があります。
①税務署の窓口で提出
直接窓口に持参する方法です。提出書類に不備がないか確認してほしい場合や、期限が迫っていて、郵送などで間に合わない場合におすすめです。ただし、締め切り間際になると、窓口は混み合います。
②税務署に郵送
郵便局から税務署へ郵送しましょう。控えを受け取るための返信用封筒が必要となります。業務で忙しく、窓口まで行く時間がない場合におすすめです。
③e-Taxを利用
オンラインで提出する方法です。書類を印刷する必要がなく、郵送などの手間もかかりません。ただし、「電子証明書」「ICカードリーダライター」などを準備する必要があります。
「電子証明書」とは、インターネット上での本人確認の役割を果たすものです。前もって取得を済ましておきましょう。
「ICカードリーダライター」とは、電子証明書を読み取るための機器です。
また、e-Taxを行うパソコンの環境(OS/ブラウザ)が合っていることもチェックしてください。
確定申告の相談窓口
確定申告について相談したい場合は、次を参考にしてください。
税務署で無料相談(電話・相談会)
税務署では、電話・相談会で相談を受け付けています。
電話相談は、1年中受け付けています。受付時間を確認し、電話してみてください。ただし、電話相談では、提出書類や書き方など、基本的な質問にのみ対応しています。
個別の経費処理など細かな相談をしたい場合は、確定申告の相談会に参加してみてください。税務署職員だけでなく、地域の税理士などにも相談することができるでしょう。
会計ソフトで相談
会計ソフトサービスで相談することもできます。たとえば、「freee」ではチャットやメール、電話で相談ができます。
※サービス内容はプランにより異なります。また、すべての質問に答えられるわけではありません。
青色申告で65万円控除を受けよう!
会計ソフト「freee」での確定申告書類の作成手順や、事前の準備、チェックポイントを解説しました。
会計ソフトを使えば、日々の煩雑な会計処理もスムーズに行えます。会計処理について疑問点があれば、税務署に問い合わせたり、税理士などの専門家に相談してみてください。
青色申告は、複雑な部分もありますが、65万円の控除が受けられるメリットは大きいです。
これから確定申告をされる方は、ぜひ検討してみてください。