年間の所得を申告する「確定申告」。
白色申告は、青色申告より会計処理が簡単になるとはいえ、確定申告書の作成には時間がかかるものです。ただ、会計ソフトを利用することで、スムーズに確定申告書の作成ができます。
今回は、会計ソフトの操作手順を交え、確定申告書類の作成準備やチェックポイントを解説します。
白色申告と青色申告の違いや提出時期など、確定申告の基本はこちらの記事をご確認ください。
確定申告の基礎知識|これで初めての申告も怖くない!
白色申告書を作成する前の準備
確定申告書類を作成していると、足りない書類があったり、会計処理に誤りが見つかって、作業がなかなか進まない……ということも。事前に次の準備をしておくと、スムーズに進めることができるでしょう。
項目 | 内容 |
①帳簿 | 内容の正誤を再確認しておきましょう。 |
②固定資産・減価償却 | 10万円以上のパソコンや冷蔵庫などの固定資産の登録を済ませておきましょう。また、減価償却費は、法定の耐用年数に合わせて計上しましょう。 |
③保険・年金の支払証明書 | 国民健康保険や生命保険、火災保険、国民年金などの支払い証明書は、必ず準備しましょう。 |
④棚卸の資料 | 12月31日時点の在庫を算出してください。 |
⑤請求書・領収書 | 売上や仕入、経費に関係している請求書や領収書は、すべて集めておきましょう。 |
また、白色申告に関係する書類は、7年間の保存を義務付けられています。税務調査を受けた場合、書類を提出しなければなりません。
【会計ソフトfreee】白色確定申告書類の作成手順
会計ソフト「freee」ですべての勘定科目の入力を終えてから、書類を作成する手順を解説します。
※操作は2019年度分で実施。操作画面は2020年1月現在のもの。
1. 確定申告書類の作成を選択
freeeにログインし、メニューバーの「確定申告」を選び、「確定申告書類の作成」をクリックします。
2. 基本情報・提出方法を入力する|申告・納付期限延長も
次のページでは、住所、氏名、生年月日などの基本情報を入力します。
※すでに登録を終えている場合、入力不要です。
申告書の種類は、「白色申告」を選びましょう。
提出方法についても選びましょう。
「e-Tax」とは、オンラインで申告書を提出する方法です。詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。
「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」を選ぶこともできます。これは、新型感染症により、期限までに申告・納付できない場合の特例です。期限を延長する場合は、申請が必要です。
3. 事業・家庭の状況について答える
次に進むと、収入・支出の入力を求められます。売上や経費などの入力で抜け・漏れがあれば、ここで入力しておきましょう。
また、年度始めの残高や、地代家賃(事業を行う上でかかった家賃や共益費、月極駐車場の使用料やその他の土地の使用料など)についても入力を求められます。
事業・家庭の状況について、10個以上の質問を出されます。
「はい」を選ぶと、項目ごとに詳しい情報を求められます。ケースに応じて、必要書類を準備することになります。
4. 申告書類の内容をチェックする
書類の内容をチェックしてください。PDFを出力して確認することもできます。
5. 支払い方法を選んでマイナンバーを用意
「申告書の支払い方法」を選びましょう。これは、追加の納税を求められた場合の支払い方法です。
申告書をPDFファイルでダウンロードします。
印刷した申告書に印鑑を押して、個人番号(マイナンバー)を記入し、本人確認書類の写しを添付します。
あらかじめ指定した方法で提出して、完了です。
ちなみにe-Taxで提出する場合は、システム上で本人確認を行うため、「本人確認書類の写し」は不要です。
書類作成のチェックポイント・注意点
ここからは、白色申告の際に見落としがちなポイントを解説します。白色申告の確定申告書類は、以下の点に気をつけてください。
白色申告で提出する書類|印鑑を必ず!
白色申告では、3点の書類を提出します。
- 所得税及び復興特別所得税の申告書B
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書 添付書類台紙
- 収支内訳書
書類に印鑑を押し忘れると、再提出を求められるため、注意しましょう。e-Taxでの提出では、後述する「電子証明書」が印鑑の代わりとなります。
2の添付書類台紙には、本人確認書類のほか、控除関連の書類を添付しましょう。e-Taxでは、書類を添付せず、システム上でその内容を直接入力します。
ただし、税務署から提示を求められた際に書類を提出できなければ、提出していなかったものとして取り扱われます。
所得・取引・扶養家族・保険料は必ずチェック!
本稿で紹介した確定申告書類作成手順の3つ目で入力する「事業・家庭の状況について答える」という項目は、納税額や控除額にかかわります。
抜けや漏れがあると、税金を追加で支払ったり、本来の控除・還付を受けられなくなる可能性があります。
以下に当てはまる方は、必要な準備をしてください。
※ケースごとに必要な書類がこまかく分類されるため、おおまかな準備項目を紹介しておきます。
該当項目 | 準備 |
会社からの給与 | 源泉徴収票 |
事業所得、不動産所得、雑所得、配当所得、一時所得など | 取引の所得を証明するもの |
株式取引、FX取引、仮想通貨取引など | 取引にかかわる情報 |
家事按分(自宅兼事務所) | 不要だが客観的事実が必要 |
弁護士や税理士に支払った源泉徴収税 | 源泉徴収票など |
前年度に繰り越した損失 | 前年に青色申告をしている場合は、その確定申告書 |
扶養家族、扶養している配偶者 | 家族の氏名、収入の証明書など |
医療費 | 医療費の控除証明書など |
生命保険、地震保険など | 生命保険、地震保険などの控除証明書 |
国民年金、国民年金基金、国民健康保険、その他社会保険料 | 国民年金、国民年金基金、国民健康保険などの支払い証明書 |
ふるさと納税 | 寄付額の証明書など |
小規模企業共済、企業型・個人型年金の掛け金 | 掛け金の支払いの控えなど |
住宅ローン、リフォーム(過去10年以内) | 住民票の写しやローンの年末残高等証明書、計算明細書など |
予定納税額の通知書 | 受け取っている場合は、通知書 |
家事按分の割合に注意!
自宅兼事務所にしている事業者は、「家事按分」として経費を事業とプライベートに分けることができます。
たとえば、月額20万円の地代家賃で、事業用:プライベート用=4:6とすると、20万円のうち8万円を経費に計上できます。
ただし、事業用とプライベート用の割合には、「10畳のうち、4畳に事業用のデスクや書棚、プリンターを置いている」など、客観的事実が必要ですので、注意してください。
書類の提出方法・相談窓口
最後に、確定申告書類の提出方法・相談窓口について解説します。
書類の提出方法
主に3つの提出方法があります。
1. 税務署の窓口で提出
税務署の窓口で提出する方法です。提出書類に不備がないか確認してほしい場合や、期限が迫っていて、郵送などで間に合わない場合におすすめです。ただし、締め切り間際の窓口は混み合うため、注意しましょう。
2. 税務署に郵送
申告書類を税務署へ郵送する方法です。控えを受け取るための返信用封筒を同封します。
3. e-Taxを利用
インターネット経由で提出する方法です。郵送や印刷の手間、コストがかかりません。ただし、利用時には、「電子証明書」と「ICカードリーダライター」を用意してください。
「電子証明書」は、インターネット上での本人確認書類のことです。電子証明書は、早めに申請しておきましょう。
「ICカードリーダライター」は、電子証明書を読み取るときに使います。
また、e-Taxを行うパソコンの環境(OS/ブラウザ)が適しているかも確認しましょう。
確定申告の相談窓口
確定申告の相談は、以下の窓口で行えます。
1. 税務署で無料相談(電話・相談会)
税務署は、年間を通して、電話相談を受け付けています。受付時間を確認して、電話してみましょう。ただし、電話相談では、提出書類や書き方といった基本的な質問に限られます。
詳しく聞きたい場合は、確定申告の相談会に参加しましょう。税務署職員だけでなく、地域の税理士なども参加しているため、専門的な内容も相談できます。
2. 会計ソフトで相談
サービス内容によりますが、会計ソフトで相談も可能です。たとえば、「freee」ではチャットやメール、電話で相談ができます。
※サービス内容はプランにより異なります。また、すべての質問に答えられるわけではありません。
早めの着手でスムーズな確定申告を!
今回は、会計ソフト「freee」を使って白色申告の手順や、事前の準備、チェックポイントを解説しました。新型コロナウイルスにより事業に影響が出ている場合には、申告・納付期限の延長申請が可能です。早めに申告書類の作成に着手し、スムーズに提出しましょう!