「新規事業を立ち上げたい」「大きな案件を受注し、その間の運転資金を調達したい」など、個人事業主が融資を必要とする場面があります。
ただ、開業間もない個人事業主は融資を受けづらいと思っている人も多いでしょう。

では、個人事業主として活動をはじめてから融資を受けたいとき、どこに相談したらよいでしょうか。
「まだまだ駆け出しで実績が乏しい」「民間の金融機関で一度断られてしまった」という方には、「日本政策金融公庫」がおすすめです。

名前は聞いたことがあるかもしれませんが、具体的にどういった面で個人事業主が利用しやすいのでしょうか。
今回は、日本政策金融公庫を利用するメリット・デメリットや融資の流れ、利用できる制度、必要な準備について解説します。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、政府が100%出資している金融機関です。
政府の政策指針に基づいて運営されるため、「長期的な経済活性化」を目標のひとつに掲げており、個人事業主や中小企業を資金面で積極的にサポートしてくれます。

日本政策金融公庫を利用するメリット

駆け出しの個人事業主が日本政策金融公庫を利用するメリットは、以下4点です。

①創業期でも融資を受けやすい

創業期は、取引実績や売上に乏しく、返済能力を示すことも難しいため、民間の金融機関では融資審査に通りにくい傾向にあります。
一方で、日本政策金融公庫は、経済活性化のため創業期の個人事業主にも積極的な融資を行っており、審査のハードルは他と比べて低いと言えるでしょう。

②低金利で融資を受けられる

日本政策金融公庫の金利は、申し込む融資制度や審査を受ける方の状況により異なります。
たとえば、「新創業融資制度」の年利は、もっとも高くて2.41%〜2.90%、もっとも低くて1.01%〜1.50%となっています。※2021/3/9時点

融資総額が大きくなればなるほど、金利で支払う総額も大きくなるため、少しでも低金利の融資を受けることをおすすめします。

③無担保・無保証人で受けられる

日本政策金融公庫には、無担保・無保証人で受けられる制度があります。
具体的には、「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」「新創業融資制度」「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」などです。

④他の金融機関から融資を受けやすくなる

日本政策金融公庫から融資を受けることにより、「融資実績がある=信用力がある」ことを示すことができ、他の金融機関から融資を受けやすくなります。
「一度断られた金融機関に、日本政策金融公庫の融資を受けた後でなら、審査が通った」というケースもあるほどです。
それほど、日本政策金融公庫の審査はしっかりしていると言えるでしょう。

日本政策金融公庫を利用するデメリット

以下、2点のデメリットがあります。

①申し込み時に準備する書類が多い

申し込む制度によりますが、書類の準備に手間がかかります。
たとえば、「創業計画書」や購入する設備の「見積書」、「最近2期分の申告決算書」、担保を希望する場合に「不動産の登記簿謄本または登記事項証明書」などが必要となります。

特に創業計画書は、販売戦略からマーケットの状況、事業の見通しなど、記入する項目も多岐にわたり、作成に時間を要します。

②審査基準が厳しい

審査基準に達しない場合は、当然ですが融資を受けることができません。
よく審査に落ちやすいのは、「支払いの延滞」「自己資本のマイナス」といったケースです。

日本政策金融公庫は、面談時に預金通帳を確認し、毎月の入出金や、家賃・ローンの支払い、クレジットの引き落としなどの状況をチェックします。
「収入と支出のバランスが偏っている」、「支払いに遅延がある」といったお金の管理に問題があると審査落ちにつながりかねません。

「自己資本」とは、総資産(預金や株式、車、不動産など)から負債(車や住宅のローンなど)を差し引いたものです。
自己資本がマイナスとなると、負債が膨れ上がって倒産・廃業のリスクが高いと評価されてしまいます。

審査に通るよう、普段からお金の管理に気をつけ、自己資本のバランスを整えておく必要があるでしょう。

一般的な融資を受ける際の流れ

日本政策金融公庫を利用する際の一般的な流れは、次の通りです。

<STEP1>電話また支店の窓口で相談する

まずは、融資制度・申込み手続きについて相談しましょう。
2021年3月現在、一部の支店では、新型コロナウイルス感染症対策のために予約制としている場合もあります。

<STEP2>必要書類を準備して融資を申し込む

必要書類は、申し込む制度や状況により異なります。
「借入申込書」に加えて、「最近2期分の申告決算書(申告している場合)」や購入する設備の「見積書」、「創業計画書」、「企業概要書」などを提出します。

<STEP3>面談・審査を受ける

事業計画や資金の使い道などについて、面談で聞かれます。場合によって、店舗・工場などを視察されることもあります。

<STEP4>融資を受け、返済をはじめる

無事、審査に通ったら融資を受けることができます。日本政策金融公庫から送られる契約書類の手続きを済ませ、完了です。

原則として月賦払いの返済となるため、期限に遅れず入金しましょう。

駆け出しの個人事業主が受けられる融資の種類

日本政策金融公庫が提供している融資のうち、個人事業主が創業期に受けやすい主な融資制度を紹介します。

新創業融資制度

対象者:新たに事業を始める方または事業開始後で税務申告を2期終えていない方
融資限度額:3,000万円(うち運転資金1,500万円)

新規開業資金

対象者:新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)

女性、若者/シニア起業家支援資金

対象者:女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)

生活衛生新企業育成資金

対象者:生活衛生関係の事業を創業する方または創業後おおむね7年以内の方
融資限度額:設備資金:7,200万円~7億2,000万円、運転資金:5,700万円

ご自身の状況に合う融資制度を検討してはいかがでしょうか。

融資を受けるために最低限やっておくべきこと

日本政策金融公庫からの融資を希望する場合は、最低限、以下のことを押さえておきましょう。

開業届を提出する

個人事業主は、原則、税務署に「開業届」を提出することを義務付けられています。
しかし、なかには「会社勤めをしながら副業として始めてから、本業に切り替えた」といった状況で、まだ開業届を提出していない方もいるでしょう。
開業届を出していなくとも特別な罰則はありませんが、個人事業主として融資を検討している場合は、申し込みまでに開業届の提出を済ませておきましょう。「開業届の控え」を求められた場合にも、すぐに対応できます。

確定申告をする

審査では、確定申告書類や決算書などの資料を参考に、融資の可否が判断されます。毎年の青色(白色)確定申告をしっかりと行い、資料を提出できるよう準備しておきましょう。
また、確定申告を通して、「事業が黒字であること」「納税をきちんと行っていること」を証明できるとプラスの評価につながるでしょう。

日本政策金融公庫で融資を受けてみよう!

日本政策金融公庫の融資は、創業期の個人事業主であっても、審査のハードルが他と比べて低いと言えます。
ただし、普段からのお金の管理や、自己資本のバランス、開業届や確定申告といった準備も必要となります。

個人の状況に応じた制度を利用するため、まずは窓口で相談してみてはいかがでしょうか。