「通勤のストレスから解放されたい」「自然豊かな場所で子育てをしたい」などの理由から、人口が集中している東京に住み続けたり勤務したりするのではなく、その近郊や地方への移住を考える方が増えています。特に、昨今の新型コロナウイルスの影響で、その傾向はより強くなっているように感じます。

移住を希望する方を、経済面からサポートしているのが、国や自治体による「移住支援制度」です。今回は、国や自治体が行う移住支援制度の内容やメリット・デメリット、注意点などについて解説します。

移住支援制度とは

移住支援制度とは、地方などへの移住をサポートする制度で、国や自治体が主体となって行っています。東京の人口一極集中や、地方の担い手不足の解消が目的です。

2020年8月現在で実施されている移住支援制度をいくつかご紹介します。

国の移住支援制度

国が行っている主な支援制度は、移住支援金起業支援金です。

これらの制度をご紹介する前に、「東京圏」と「東京圏外」についてお話しておきたいと思います。まず、一都三県(東京・千葉・埼玉・神奈川)のことを「東京圏」といい、それ以外の地域を「東京圏外」と呼びます。

ただし、東京圏外には一都三県の条件不利地域が含まれます。条件不利地域とは、「過疎地域自立促進特別措置法」「山村振興法」「離島振興法」「半島振興法」「小笠原諸島振興開発特別措置法」の対象地域を有する市町村(政令指定都市を除く)のことです。

【東京圏外に含まれる一都三県の条件不利地域】
・東京都:檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村
・埼玉県:秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町
・千葉県:館山市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、東庄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町
・神奈川県:山北町、真鶴町、清川村

これらを踏まえたうえで、支援制度の内容を見ていきましょう。

移住支援金

移住支援金とは、東京23区から東京圏外へ移住し、「都道府県が選ぶ中小企業等に就業した方」又は「(後述する)起業支援金の交付が決まった方」に対して、国の財源を元に都道府県が主体となって支援金を支給する制度です。

移住支援金の対象者は、次の3点を満たす方です。

①移住までの過去10年間で東京23区に通算5年以上在住または勤務している
②東京圏外に移住する
③各都道府県の指定する中小企業への就業もしくは社会的起業をする

※「社会的起業」とは、社会性・事業性・必要性を満たす地域の課題に取り組む起業のこと。たとえば、買い物弱者支援や子育て支援など。

支援金額は、最大で100万円(単身者は最大60万円)です。

起業支援金

起業支援金とは、地域の課題解決のために新しく社会的起業をする方に対して、事業費を助成し、起業を促進することで地方創生の実現を目的とする制度です。この支援制度は、国の財源を元に都道府県が主体となって、2019年から6年間を目処に実施しています。

起業支援金の対象者は、次の3点を満たす方です。

①東京圏外で社会的起業をする
②公募開始日から補助事業期間完了までに個人開業届または法人の設立を行う
③起業地の都道府県に住んでいる(住む予定である)

支援金額は、最大で200万円です。

移住支援金と起業支援金は併用できるため、最大で300万円(単身者は最大260万円)を支援してもらうことができます。支援制度の詳細は、自治体によって異なります。

自治体の移住支援制度

国が行っている支援制度の他に、各都道府県の自治体も独自の移住支援制度を行っています。自治体によって支援の内容は異なりますが、代表的な支援制度では、以下のようなものがあります。

・結婚や子育ての支援金
・就農での支援金
・移住先の家賃補助
・マイホームの建築費補助
・移住体験の宿泊費支援

支援制度活用のメリット

支援制度を活用すれば、地方移住のハードルはぐっと低くなりそうです。支援制度を活用するメリットをご紹介します。

メリットは、主に2つあります。

まとまった資金を得られる

東京圏外に引っ越して就職することで、最大100万円を支援してもらえます。さらに自治体によっては結婚や子育て、住宅など、生活コストの支援も受けられる場合があります。

まとまった資金を得られれば、マイホームの購入や結婚の費用にもあてられるでしょう。引越しをするだけでも費用がかかるため、こういったサポートは有難いですね。

仕事を見つけやすい

国や自治体は、UJIターンの転職支援や起業支援を積極的に行っています。

UJIターンとは、都市の居住者が地方に移住する動きの総称です。出身地に戻る「Uターン」、出身地に近い地方都市に移住する「Jターン」、出身地以外の地方に移住する「Iターン」などの種類があります。

担当者にサポートしてもらいながら就職先を探すことができますので、自分が興味のある産業に強い地域を選んで移住することもできるでしょう。

支援制度を活用する際の注意点

支援制度だけで移住先を決めない

支援制度が充実している地域もありますが、それだけで移住先を決めるのは避けましょう。引っ越した後に仕事や、子育てなどで不都合が生じるかもしれないからです。

支援制度のみならず、住居や仕事、子育て、地域参加などから総合的に判断すべきです。

最新情報をチェックする

支援制度の内容は、毎年更新されています。自治体のホームページや電話窓口で、最新の情報を確認しておきましょう。

「古い情報を参考にしたために支援制度の条件から外れていた」ということもあり得ます。

移住体験は必ず行う

インターネット上の情報だけで、移住先を判断することは避けましょう。百聞は一見にしかずという言葉の通り、実際に行ってみなければ分からない情報がたくさんあるからです。

おすすめは、宿泊を伴う移住体験です。体験中は、長期間住んだ場合の生活をイメージしながら過ごしてみてください。

移住支援制度の調べ方

移住支援制度の調べ方は、主に5つあります。

自治体のウェブサイトで調べる

自治体は、支援制度の内容をウェブサイトなどで公表しています。インターネットで「地名+移住+支援制度」といったキーワードで検索して、公的なサイトから制度内容を確認しましょう。最新かつ信頼性の高い情報を集められます。

自治体の窓口に電話する

自治体の担当窓口に直接問い合わせる方法は、インターネットの利用が苦手な方や、希望の移住先が決まっている方におすすめです。インターネットの情報からは分からなかったことなど、より詳しい情報を確認できます。

移住専門サイトで調べる

最近では、全国各地の支援制度を集めた専門サイトも登場しています。

全国自治体支援制度検索|ニッポン移住・交流ナビ JOIN

専門サイトでは、地名や支援の内容などで条件を絞って、希望に合った地域を探すのに役立ちます。いくつかの地域の支援制度を比べたい場合に適した調べ方です。専門サイトの中には、無料でAIを使った移住シミュレーションを行えるサービスもありますよ。

移住相談会・移住体験に参加する

国や自治体の行っている移住相談会や移住体験に参加すると、直接情報を確認できます。移住体験は、特に現地の様子も把握できるのでおすすめです。

まとまった時間を作って、移住相談会や移住体験に参加してみましょう。

十分に検討してから移住先を決めよう

移住支援制度の充実により、地方への移住のハードルは以前より下がりつつあります。支援制度を活用して、新しい生活を始める方も今後増えていくでしょう。

暮らしやすい移住先を見つけるには、情報収集だけでなく現地に行って確かめることも重要です。十分に検討をした上で移住先を決めましょう。