美容室の開業にあたっては、その形態や事業計画に応じた届出を出す必要があります。開業前後は、ただでさえ店舗の準備や資金計画などで忙しいもの。準備を進めるなかで「書類を準備するのを忘れていた」という事態にならないよう、あらかじめ何が必要なのかを知っておきましょう。
ここでは美容室を開業する際、どのような書類を用意し、いつ、どこに提出しなければならないのかを解説します。
開業の届出で用意すべき必要書類は?
美容室を開業する際に用意すべき書類は、開業時の状況によって異なります。
例えばもともと美容室を経営していた人が別の支店を出す場合と、雇用されていた人が新たに独立する場合。また人を雇うのか、自分一人で開業するのかによっても必要な書類は変わります。
ですから、まずは“自分自身がどのような状況で美容室を開業するつもりなのか”を考えましょう。具体的には下記のような事柄について、ある程度方向性を定めて事業計画を立てる必要があります。
- 個人事業主なのか、法人なのか
- 店舗は自宅を改装するのか、テナントを借りるのか
- 人を雇うのか、自分一人で開業するのか
- 自宅を納税地とするのか、店舗がある場所を納税地とするのか
方向性が決まったら、それに応じた手続きを行いましょう。
開業に伴う書類一覧・申請先・申請時期
美容室を開業する際に必要な書類は以下の3点です。
- 保健所への開設届
- 税務署・都道府県事務所への開業届(個人事業として開業する場合)
- 市町村への償却資産申告書
それぞれの届出先・提出期限は下記のとおりです。法人を設立する場合については後述します。
届出先 | 書類名 | 届出期限 |
保健所 | 開設届他
(要事前相談) |
開店前に余裕をもって(1週間以上前の提出が目安。相談はそれよりも前に) |
税務署 | 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業開始から1ヵ月以内|参考 |
都道府県事務所 | 事業開始(廃止)等申告書 | 事業の開始から15日以内(東京都の場合)|参考 |
市町村(東京23区は区内の都税事務所) | 償却資産申告書 | 1月1日時点の償却資産を1月31日までに|参考 |
保健所への届出
保健所への届出をするためには、事前相談が必須です。開業する美容室の構造設備等がわかる図面を持参して、事前相談に行きましょう。このとき、具体的な必要書類やその後の手続きについて説明を聞くことができます。
最終的に届出の際に必要な書類は下記のとおりです(東京都の場合)。
- 開設届
- 構造設備の概要(施設の平面図)
- 従業者名簿(有資格者の免許証と3ヵ月以内に発行された医師による診断書、管理美容師の講習修了証)
- 検査手数料(24,000円)
- 開設者が法人の場合は、6ヵ月以内に発行された法人の登記事項証明書
- 開設者が外国人の場合は、国籍等の記載がある住民票の写し
美容室のオープンまでの流れは下記のとおりです。
- 保健所に事前相談
- 書類提出
- 美容室の完成
- 保健所のチェックを受ける
- 保健所長の確認を得る
- 美容室オープン
ケースによって届出が必要な書類
青色申告を希望する場合
青色申告を希望する場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。青色申告をしようとしている年の3月15日まで(1月16日以降、開業の場合は事業を開始した日から2ヵ月以内)が提出期限です。
美容室の所在地を納税地にしたい場合
自宅の住所ではなく美容室がある場所を納税地にしたい場合は、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を税務署に提出します。提出期限はとくに設けられていません。提出の翌日から納税地が変更されます。
参考URL:所得税・消費税の納税地の変更に関する届出手続|国税庁
消防署への届出が必要な書類
テナントを借りて美容室を開業し、内外装の工事を行う場合には、着工7日前までに消防署へ「防火対象物工事等計画届出書」を提出する必要があります。開業場所のビルを管轄する消防署や、ビルを借りる場合はオーナーや管理会社、施工会社等と相談しながら漏れがないように手続きを進めましょう。
美容室開業に必須の届け出とは?必要な書類をまとめて解説
従業員を雇う場合は、年金事務所への届出(従業員が厚生年金・健康保険に加入する場合)や、労働保険、雇用保険に関する手続きが必要です。
具体的な届出の種類は下記のとおりです。
提出先 | 書類名 | 提出期限 |
税務署 | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(個人事業の開業・廃業等届出書を提出した個人事業主は提出不要) | 事務所の開設から1ヵ月以内|参考 |
日本年金機構 | 新規適用届 | 人を雇用してから5日以内|参考 |
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 人を雇用してから5日以内|参考 | |
労働基準監督署 | 労働保険関係成立届 | 人を雇用した翌日から10日以内|参考 |
概算保険料申告書 | 人を雇用した翌日から50日以内|参考 | |
公共職業安定所 | 雇用保険適用事業所設置届 | 事業所の設置翌日から10日以内|参考 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得の翌月10日まで|参考 |
公共職業安定所への届出は、労働基準監督署への届出のあとで行います。
なお、日本年金機構への届出が必要なのは、下記の場合に該当する美容室のみです。
- 法人を設立して従業員がいる場合(事業主のみの場合含む)
- 社会保険加入を希望する理美容業の個人事業主
人を雇う場合、労働保険の加入は必須ですが社会保険はそうではないため、加入・未加入、どちらのメリットが大きいかを考えて判断しましょう。
なお、青色申告を行う個人事業主が、配偶者等、生計を一にする家族を雇用する場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出します。提出期限は青色申告を行う年の3月15日まで(1月16日以降の開業の場合、事業を開始した日から2ヵ月以内)です。
法人設立に伴う書類一覧・申請先・申請時期
法人を設立する場合は、以下の書類を提出します。
提出先 | 書類名 | 提出期限 |
税務署 | 法人設立届出書 | 設立の日以後2ヵ月以内|参考 |
法人税の青色申告の承認申請書 | 原則として事業年度開始の日の前日まで|参考 | |
都道府県 | 法人設立届出書 | 地域による |
市区町村 | 法人設立届出書
(地域によっては不要) |
地域による |
なお、法人を設立するためには、法務局で法人登記をする必要があります。この手続きや定款の作成は専門的な知識を要するため、司法書士等に依頼して代行してもらうのが一般的です。
届出の不備にはご注意を
スムーズな美容室開業には、事前の準備が大切です。提出書類に不備があった場合は修正が必要になりますし、思わぬところで準備に時間がかかってしまうことも。いつ、何をしなければいけないのかを書き出して、開業までのロードマップを作っておくと安心ですよ。
また、情報収集や各種申請書類の雛形のダウンロードを行うためには、インターネットが必要です。美容室を開業する際は、ネット回線やWi-Fiの契約も忘れずに行いましょう。スムーズなWi-Fi導入なら、法人向けビッグローブ光がおすすめです。