耳にしたことはあっても、何をしているのかはよく分からない……「NPO」というと、そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。一体どんな組織なのか?普通の会社とは何が違うのか?NPOの定義や設立・運営のルールなどについて解説します。
NPOとは?
そもそも「NPO」は、「Nonprofit Organization」もしくは「Not-for-Profit Organization」の略で、日本語では「非営利団体」を意味する言葉です。つまり営利を目的としない民間団体を指します。
一般的にイメージされるボランティア活動や社会貢献活動などはもちろん、生活協同組合や労働組合、学校法人、宗教団体、共済、自治会、同好会なども広い意味ではNPOと言えます。
NPO法人と任意団体の2種類がある
法律に基づく一定条件を満たすことで、法人格を取得しているNPO団体を「NPO法人(特定非営利活動法人)」と呼びます。
そもそもNPO活動をする上で、法人化は必須条件ではありません。しかし法人格を持つことで、社会的な信用度が高くなり、さまざまな契約や取引を団体名義で行うことが可能です。また、法人住民税が免除されるなどの税制優遇措置もあるほか、助成金や委託事業に応募する際の条件として、法人であることが求められる場合などもあり、多くのメリットが得られます。
一方で、法人化していない団体は「任意団体」と呼ばれます。法律によらず、あくまで任意で活動しているため、電話や事務所などの契約も代表者が個人名義で行わなければなりません。しかし、法律に縛られない分、煩雑な手続きや届出などの必要がなく、自由に活動できるという側面もあります。
そのため、まずは任意団体から活動を始め、規模の拡大などにより、必要に応じて法人化を検討する方が、確実な運営につながるとも言われています。
NPO法人と会社との違いは?
非営利というと、「お金を儲けてはいけない」と思いがちですが、そうではありません。事業の売上や寄付などによって収入を得ることも、職員に給与を出すことも可能です。
それでは普通の会社とは何が違うのでしょうか。NPOの非営利とは、「利益の分配をしない」ことを意味しています。営利を目的とする普通の会社であれば、株主などの出資者から集めたお金を元手に事業を行い、儲かった分、つまり利益を出資者に分配するのが通常です。
非営利で禁止されているのは、この利益の分配です。NPO活動では、儲かった分を利益ではなく余剰金と呼び、再び事業や運営に使用することになります。そのため、事業に必要となる人件費を出すことは可能ですが、株主のように実際には働いていない人に、余剰金を分配することはできません。
また、出資者がお金を出すことによって設立されるわけではないので、資本金という概念が存在しません。そのため一般的な会社あれば、設立時に登録免許税がかかりますが、NPOは資産が0円でも事業を始めることができます。
NGOとの違いは?
NPOとよく似た言葉に「NGO」がありますが、こちらは「Non-Governmental Organization」の略で、「非政府組織」を意味しています。もともとは国連が、国際会議に出席する政府以外の民間団体を指す言葉として使い始めたと言われていますが、今日では、政府に属さずに国際協力や環境保護などの社会貢献活動を行なう団体のことを指しています。
なお国連では、営利団体をNGOから除外しているため、そのほとんどが非営利で活動しています。一方のNPOも、そもそも政府には属さない組織です。そのため、多くの団体がNPOでありNGOと考えることができますが、一般的に、国内の課題に取り組むのがNPO、国際的な課題に取り組むのがNGOと使い分けられています。
ただし、日本にはNGOに法人格を与える制度が存在しません。そのためNGO団体であっても、法人化するためにNPO法人格を取得する場合もあり、NPOとNGOは両立する概念と言えます。
NPO団体の設立・運営方法
それでは実際に団体を設立し、NPO活動を行うにはどうすればいいのでしょうか。具体的な設立の手続きなどについて解説します。
任意団体の設立方法
まず、法人格を持たない任意団体として活動するのであれば、特別な手続きはありません。法律による制約がないので、メンバーがいるだけで、すぐに活動することができます。
ただし、きちんとした組織として活動するためには、何を目標に、どのような活動を行うのか、ルールなどを明確にしておくことが重要です。少なくとも、下記の書類を準備しておくといいでしょう。公共施設の利用登録や助成金の申請など、継続的に活動する上で役立ちます。
- 会則
- 会員名簿
- 役員名簿
- 事業計画
- 予算書
NPO法人の設立方法
一方、法人格を持ったNPO法人を立ち上げるには、「特定非営利活動促進法(NPO法)」という法律に基づく要件をクリアし、行政機関への手続きを行わなければなりません。設立の前提となる主な要件には、次のような項目が挙げられます。
- 10人以上の社員(会員)がいること
- 理事3名以上、監事1名以上の役員がいること
- 役員の内、3親等以内の親族グループが役員総数の3分の1を超えないこと
- 社員の入会または退会に不当な条件付けをしないこと
- 宗教や政治活動を主たる目的としないこと
- 「特定非営利活動」のいずれかの活動分野に属すること
「特定非営利活動」とは?
特に気をつけなければならないのが、活動内容が「特定非営利活動」と呼ばれる分野に限定されている点です。特定非営利活動に該当する分野は、以下の20種類で、少なくともどれか一つに該当している必要があります。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
法人化の手続き
大まかな手続きの流れは、次のとおりです。書類作成から手続き完了まで、4ヵ月程度はかかります。
- 所轄庁への申請・書類提出
- 審査・認証
- 法務局への登記
まずは都道府県や市町村など所轄庁の担当窓口へ、以下の書類とともに所定の申請書を提出します。
- 定款
- 名簿
- 事業計画書
- 活動予算書 など
なお一部の書類は、受理された日から1ヵ月間、市民が自由に見られるよう公開されることとなっています。申請は書面によって審査され、3ヵ月以内に認証または不認証の結果が通知されます。しかし、認証されても手続きは完了しないので要注意です。
設立認証の通知が来たら、2週間以内に法務局で設立の登記を行わなければなりません。登記が完了して初めて、法人として成立することとなります。6ヵ月以上登記せずに放置すると、認証取り消しの可能性もあるので、速やかに行うようにしましょう。
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NPO法人の運営ルール
NPO法人設立後は、他の法人と同様にさまざまなルールが課されることとなります。そのため登記完了直後も、所轄省庁への「登記事項証明書」や「財産目録」の提出、法人税や地方税についての届出などが必要です。収益事業を行う場合や有給の職員を雇用する場合にも、税務署などに届出が必要です。
また運営を続けていく上でも、事業年度ごとに事業報告書や活動計算書、貸借対照表などを提出する他、毎年少なくとも1回は、通常総会を開催しなければならないといったルールが定められています。事業報告が3年以上なされない場合には、認証を取り消されることもあるため、きちんと規程を把握し、それに沿って運営していくことが重要です。
税制優遇措置が取られる「認定NPO法人」
なお、適切な運営がなされているNPO法人は、所轄庁に申請することで「認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)」になることができます。認定のポイントは、事業年度(過去に認定を受けたことがない場合は2年、受けたことがある場合は5年)の実績判定期間で、一定の基準を満たしているかどうかです。
認定NPO法人になると、寄付してくれた人や企業の税金が控除されたり、法人税が優遇される「みなし寄付」ができるようになったり、税制優遇措置が取られることとなります。
ルールに沿ったNPO活動を
このように一口にNPOと言えっても、活動によっては細かい条件が定められています。立ち上げたいと考えている方は、NPOの定義やルールをしっかり理解した上で、活動を始めるようにしましょう!