美容院や床屋のオーナーさん、またフリーランスの美容師さん・理容師さんの仕事には、業務上さまざまな必要経費がかかります。中には他の職業にはないような、この業種ならではの出費も発生するため、どこまで経費にしていいのか悩むことも多いのではないでしょうか?しかし経費の計上は、税金額にも直結します。経費にできる費用をきちんと把握し、正しく計上できるようにしましょう!

経費にできる費用とは?

まず経費の考え方ですが、仕事のために使う支出であれば、基本的にすべて経費として計上することが可能です。

経費と所得税の関係

そもそも経費とは会計上、事業を行う上で必要となる費用(仕入は除く)を指しています。確定申告で計上した経費は、課税対象となる事業の売上から差し引かれるため、漏れなくきちんと計上することで、所得税の負担額が抑えられる仕組みです。

ちなみに経費の把握や管理には、お金を支払ったことを証明する領収書やレシートなどが必要になります。金額や日付、支払先などの詳細が分かれば電子記録も有効。確定申告の際に税務署への提出義務はありませんが、最大7年間の保管義務がありますので、税務調査などに備えてきちんと管理しておくようにしましょう。

仕事に関わる出費は経費にできる

経費にできるかの判断基準となるのは、「経営や仕事と直接関係があるかどうか」です。当然、プライベートでの出費は経費にできませんが、例えば以下のような実務上発生する費用については、経費で落とすことが可能です。

  • 店舗の家賃や光熱費
  • 従業員への給与
  • 取引先との飲食代
  • 仕事での交通費、宿泊費
  • 設備や備品、消耗品代
  • 広告、チラシ、ホームページ作成代

具体的な費用の種類については、確定申告の書類に特定の勘定科目が「経費」として用意されています。

所得税青色申告決算書

勘定科目は自分で追加できる

経費の振り分けは、必ずしも科目が一つに決まっているわけではありません。あらかじめ用意された科目に該当しない経費は、空白欄に直筆で科目を追加してもOKです。

  • スキルアップのための研修やセミナーの受講料:「研修費」など
  • お客様向けの雑誌や電子書籍、勉強用の参考資料代:「新聞図書費」 など
  • お客様用タオルのクリーニング代:「衛生費」 など
  • スタッフや同僚などとの打ち合わせ費用:「会議費」 など

判断の難しい費用について

しかし中には、この職業ならではの判断に迷う項目もあるのではないでしょうか。

店舗と自宅を兼用している場合

例えば店舗にかかる家賃は「地価家賃」として、電気代やガス料金などは「水道電気代」として、インターネット代は「通信費」として経費にすることができます。

しかし店舗を自宅と兼ねて経営している美容室では、どうでしょうか?この場合、残念ながら全額を経費計上することはできません。

ただし「家事按分」という制度により、仕事で使用している割合を算出することで、その分だけを経費として計上することができます。

例えば借りている敷地面積の内、6割を職場として、4割を自宅として使用している場合、家賃の6割を経費にすることが可能です。同様に光熱費なども、使用時間やコンセントの数から算出した仕事用の割合だけを経費にすることができます。

設備や備品について

また美容関係の仕事では、必要となる備品や器具が多く、その種類も多岐にわたります。例えばハサミや櫛、ブラシ、ドライヤー、コテなどの美容師自身が使う器具。またタオル、ケープ、パーマキャップといったお客様が使用する備品などです。

これらは税制上、値段が10万円未満、もしくは使用可能期間が1年未満であれば、すべて「消耗品費」として経費に計上することができます。椅子やテーブル、鏡といった設備も条件に該当していればこれに含まれます。

なお10万円を超える場合は「資産」と見なされ、扱いが変わるので要注意です。法律で定められた「耐用年数」に従い、購入価格を「減価償却費」として数年に渡って経費に計上していくことになります。

衣類やアクセサリーの計上について

気をつけたいのが、衣類やアクセサリーの計上です。

服は経費にできる?

服については通常、仕事でのみ使用する制服やユニフォーム、作業着などであれば「消耗品費」、もしくは従業員に対する「福利厚生費」として問題なく経費に計上できます。 一方で、私服として着ることのできる服に関しては、実務上の必然性がないことから、経費として計上することはできません。

しかし美容師にとって服装に気を遣うのは、職業上、必要不欠とも言えます。ファッションセンスが集客を左右することもありますし、特にトレンドを取り入れたファッションとなると、シーズンごとに購入の必要があるため、その費用もバカになりません。

このように美容師にとって、衣類は実務上、切り離せないことから、仕事でのみ着用しているのであれば、経費計上が認められる場合があります。その場合には、私服としての兼用などは決してしないようにしましょう。

アクセサリー類はNG

仕事上の衣服が経費として計上できるのであれば、時計や指輪、ピアスといったアクセサリー類も経費で落とせそうですが、残念ながらこれについては完全NGです。仕事をする上で必ずしも必要とは見なされないためです。

美容師の美容院代は経費にできる?

それでは美容師さんが自分の髪をケアしてもらうための美容院代はどう処理されるのでしょうか?

これも通常の場合はプライベートとの区別ができないため、経費にすることができません。ただし、芸能人やモデル、ホステスさんなど、美容費が仕事と直結する(業務上の必要性が明確な)ケースであれば、取材や宣伝用の写真撮影の際のヘアメイク代なども経費にすることが認められています。残念ながら美容師さんの場合は、これには該当しません。

しかし、他店の調査や研究、勉強の一環であれば「研修費」として経費計上が可能。また付き合いのある美容師さんに切ってもらう場合は「接待交際費」として計上してもOKです。

正当な経費計上を!

このように美容師や理容師の仕事には、計上の判断が厳しい費用も存在しています。

しかも美容室や床屋のように現金商売と呼ばれる業種は、特に税務調査が入りやすいと言われています。 日頃から経費にできる費用とできない支出を明確に意識し、細かく管理した上で根拠のある正当な経理計上を心がけましょう。

【監修者プロフィール】

きむら あきらこ(木村聡子)

木村税務会計事務所・所長。オンラインサロン「仕事に活かすブログ教室」運営。

税理士、ウェブメディアアドバイザー、著者、逆算手帳・認定講師など様々な分野で活動中。

主な著書に「あなたの1日は27時間になる。」(ダイヤモンド社)、「先輩に聞いてみよう! 税理士の仕事図鑑」(中央経済社)など。

ブログ:キムラボ