個人事業主や小規模事業者として独立して働いていると、サラリーマンのように退職金をもらうことはできません。そのため、老後の貯蓄に不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで紹介したいのが「小規模企業共済」です。退職金として活用できるだけでなく、節税にも大きく役立ってくれます。

小規模企業共済とは

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などが利用できる積み立て式の退職金制度です。満期や満額の概念はなく、廃業などの際に、それまでの掛金に応じた共済金を受け取ることができます。

国の機関である独立行政法人「中小企業基盤整備機構(中小機構)」によって1965年より運営されており、全国で約147.5万人(2020年3月時点)が加入しています。

加入条件と申込方法

加入要件は事業内容によって異なります。フリーランスの場合には、開業届を出して個人事業主になっていることが前提となるので注意しましょう。

▼参考記事▼
個人事業主になるメリットやフリーランスとの違いは?|開業届の書き方・注意点を解説

加入条件

  • 従業員数20人以下の個人事業主または会社の役員(建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業など)、企業組合・協業組合・農事組合法人の役員
  • 従業員数5人以下の個人事業、会社の役員(卸売業・小売業、宿泊業・娯楽業を除くサービス業)、弁護士法人・税理士法人などの士業法人の社員
  • 上記に該当する個人事業主の共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

これらの従業員数には、家族従業員および共同経営者(2人まで)は含まれません。また加入後の事業拡大によって規定の人数を超えてしまった場合でも、契約は継続することが可能です。そのため加入手続きは事業の規模が小さい内に済ませておく必要があります。

申し込みは窓口で

加入の申し込みは、中小機構へ直接するのではなく、中小機構が業務委託している金融機関や商工会議所、事業協同組合などの窓口から行います。郵送による申し込みは、受け付けていません。

必要書類

申し込みには、「契約申込書」と「預金口座振替申出書」作成が必要です。あわせて以下の書類が必要になりますので、事前に用意しておきましょう。

個人事業主の場合

  • 確定申告書もしくは開業届の控え

法人の役員の場合

  • 履歴事項全部証明書(商業・法人登記簿謄本)など

共同経営者の場合

  • 個人事業主の確定申告書の控え
  • 個人事業主と締結した共同経営契約書の写し
  • 報酬の支払い事実が確認できる書類

申請日から40日ほどで加入手続きは完了します。

加入資格を得られない場合も……

ただし下記の項目などに該当する場合には、加入資格を得られないので注意してください。

  • 非営利目的の団体役員
  • 配偶者等の事業専従者
  • 学業を本業とする全日制高校生
  • 生命保険外務員
  • 「中小企業退職金共済制度」、「建設業退職金共済制度」、「清酒製造業退職金共済制度」、「林業退職金共済制度」の被共済者
  • 商業登記簿謄本に役員登記されていない会社役員

加入のメリット

小規模企業共済に加入するメリットは、大きくわけて3つです。

①掛金は全額控除される

まず、最大のメリットといえるのが、その高い節税効果です。1年間で支払った掛金は、確定申告の際に課税対象所得から全額控除(最大84万円)することができます。確定申告書にも、小規模企業共済等掛金控除の欄が設けられています。

掛金は月額1,000~7万円の内、500円単位で自由に設定が可能。加入後に増額や減額(減額については後述のデメリットあり)することもできるので、無理のない範囲で積み立てられます。

中小機構のホームページによるシミュレーションでは、節税効果は以下のとおり。例えば、課税対象所得が200万円で、上限額である月7万円を掛金とした場合、年間で合計129,400円の節税効果が期待できます。所得と掛金が大きいほど節税効果も高くなります。

掛金額ごとの節税効果

※平成29年4月1日の税率に基づき、所得税は復興特別所得税を含めて計算。住民税均等割は、5,000円としています。

なお、納付方法は月払いの他、半年払い、年払いから選択可能。また一括で前納すると、前納月数1ヵ月あたり1,000分の0.9に相当する前納減額金を受け取ることもできます。ただし前納減額金の支払いを受けた場合は、所得控除として申告する掛金額から、受け取り額を差し引く必要があります。

②共済金・解約手当金の受け取りでも控除が受けられる

小規模企業共済では、契約者の立場や請求を行う理由によって、受け取る共済金の種類や金額が異なります。共済金の種類には「共済金A,B」と「準共済金」「解約手当金」の4つがあります。
※共済金A,Bは6ヵ月以上、準共済金と解約手当金は12ヵ月以上の掛金納付が必要です。

「共済金A」(掛金の約1%〜1.5%で複利運用した元利合計額)は、事業の廃業時や法人の解散時などに、「共済金B」(掛金を約1%で複利運用した元利合計額)は、65歳以上(加入期間180ヵ月以上)で老齢給付として請求が可能。

「準共済金」(掛金合計額〜共済金の91%相当)であれば、個人事業の法人化に伴う加入資格喪失時などに、「解約手当金」(掛金の80%〜120%相当)であれば、任意解約もしくは掛金滞納による機構解約の際に、それぞれ請求が可能です。

ただ、これらの金額の受け取りには、税金が発生してしまいます。しかし税法上、共済金を一括で受け取った場合には「退職所得」として、分割で受け取った場合には「公的年金等の雑所得」として扱われ、所得控除を受けることが可能です。そのため「事業所得」などに比べて、税負担を軽減することができます。

中小機構のウェブサイトには、将来の共済金と節税効果を自分で試算できるシミュレーションサービスも用意されているので、気になる方は試してみましょう。

③貸付金制度がある

さらに、契約者は各種の 「貸付制度」を利用することができます。掛金の範囲内で、目的に合わせて上限1,000万円もしくは2,000万円まで借り入れることができます。
※限度額は掛金の納付月数により、掛金の7~9割

  • 一般貸付け(事業資金)
  • 緊急経営安定貸付け
  • 傷病災害時貸付け(病気の時など)
  • 福祉対応貸付け
  • 創業転業時・新規事業展開等貸付け
  • 事業承継貸付け
  • 廃業準備貸付け

なお利率は年0.9%もしくは1.5%、借入期間は借入金額に応じて最大60ヵ月間です。ただし延滞した場合には、年14.6%の利子が発生するので気を付けましょう。

加入のデメリット

小規模企業共済には、注意しなければならない点もあります。加入を検討する際には、十分な考慮が必要です。

12ヵ月未満で掛け捨て、解約手当金は20年未満で元本割れ

まず掛金納付月数6ヵ月未満で解約した場合、共済金を受け取ることはできません。また12ヵ月未満で解約した場合には、準共済金および解約手当金を受け取ることができないため、これらの掛金は掛け捨てとなってしまいます。

また解約手当金として受け取れる金額は、納付月数に応じて掛金の80%〜120%に相当しますが、240ヵ月(20年)未満で解約をした場合は、掛金合計額を下回り、元本割れしてしまうので要注意です。

掛金を減額すると、減額分は運用されない

さらに加入期間が240ヵ月以上でも、掛金を途中で減額する場合は気を付けなければなりません。

掛金を減額すると、その時点まで積み立てていた減額分が運用されなくなり、共済金を受け取るまで金利がつきません。また、減額分の納付月数が解約時に240ヵ月を下回る場合は、元本割れする可能性があります。

掛け金は自分で自由に設定できます。減額のリスクを考えて、無理のない金額設定にするべきだと言えるでしょう。

なお元本割れのリスクは、解約手当金に限られます。請求が共済金に該当する場合には、20年未満であっても元本割れの恐れはありません。

長期的な視点で検討を!

このようにさまざまな利点のある小規模企業共済ですが、短い期間で解約してしまうと、元本割れによる損失が節税効果を上回り、かえって損をしてしまうケースもあります。加入に際しては短期的な節税効果にとらわれず、長期的な視点からの活用を検討しましょう。

※掲載情報は2020/12/9時点