世の中には、手に取り切れないほどたくさんの商材が溢れかえっています。その中には、とっておきともいえるような優良品が埋もれていますが、見つけるのは至難の技。「本当に優れた商品を教えてくれる、眼識のある人が知り合いにいればいいのに」と思ったことはありませんか?

その役割を買って出てくれているのが、Facebookページ「タカとケイコの食&旅チャンネル」を運営する北村貴さん(以下、タカさん)と岡田慶子さん(以下、ケイコさん)。

タカとケイコの食&旅チャンネル

前編では、「タカとケイコの食&旅チャンネル」とは何か、なぜふたりが同チャンネルを始めるようになったのかについて聞きました。後編では、どのようなツールを使っているのか、これから同じようなことを始めたいと思う場合どのようにすればよいのか、などについて聞いていきます。

初期投資いらずで始められるライブ配信

現在、タカさんとケイコさんは、ライブショッピングをFacebookページに用意されているライブ動画投稿ツールを使って配信しています。これにより、Zoomミーティングやそのほかのライブストリーミングツール、Web会議システムなどを使って配信することができ、Facebookオリジナルの動画配信ツールではできない複雑なことが行えるようになります。

例えば、Zoomを使えば、多拠点を結び、1つの画面に全員の顔を映せますし、背景を変えたり、画面共有をすることもできます。StreamYard(ストリームヤード)を使えば、テレビ番組のようにチャンネルロゴを常時表示させておくことも可能です。

タカとケイコの食&旅チャンネルでFacebookライブに利用しているのは、Zoomミーティング。たまたまケイコさんが2020年初頭に、プロプランで契約しているアカウントがあったからというのがZoomミーティングを選んだ理由です。

「ケイコさんと話していて、『明日やってみるかー?』という感じだったから」と話すのはタカさんです。「Facebook純正のツールだと、生産者の顔を映せないし、何よりそのときわたしは北海道にいたので、3拠点つなぐには、Facebook純正以外のツールが必要だったんです」

ケイコさんも「Zoomミーティングを使ったキャリア系ワークショップを開催していたこともあり、Facebook連携だったらそんなに難しくないよなぁと、“アタリ”がついていたのも気軽に始める後押しになりました」と振り返ります。

急だったこともあり、配信に使った機材はスマートフォンとパソコンというシンプルさ。2回目の配信では、カメラに詳しい人の助けを借りて、「素晴らしいカメラとかマイクを」(ケイコさん)使わせてもらったそうです。

「PowerPointの資料を画面共有で表示しよう、など難しいことをせず、出演者の顔や商品を映すだけであれば、スマホだけで始められるのではないでしょうか。Zoomミーティングも、わたしは連続で24時間配信できるプロプランを契約していますが、無料プランでも40分は使えるので、番組を30分以内におさまるようにすれば問題ありませんしね」(ケイコさん)

ECなので受注システムも必要になります。こちらはタカさんが持っていたBASEのアカウントを活用しています。「使いやすいですか?」の問いには、「融通の利かないところがあるので、改善してもらえたら嬉しい」とタカさん。それでも、BASEに備わっている決済システムのおかげで、手間のかかる入金確認処理から開放されることから利用していると言います。

「飲食店であれば、すでにSquareなど遠隔でも支払いのできる決済システムを持っているはずだから、独自でフォームなどを作って受注するのもありかもしれませんね。1日に30件、40件となると難しいでしょうけど(笑)」(ケイコさん)

「BASEは月額利用料がかからない分、売上に対して一定割合で手数料がかかる。ある程度の売上が出てきたら、楽天などのシステムに移行するという方法もありでしょう。はじめから、全部決めておく必要なんてないんですから」(タカさん)

成功の秘訣はコミュニティの構築

気軽に始められるとはいえ、反響があるかないかはそれまで築いてきたコミュニティによる、とタカさんは言います。

「飲食店を経営している人であれば、Facebookページ、またはSNSのアカウントを作っていると思いますが、その投稿内容が、『今日、これが入りました』『本日のオープンは何時からです』『いついつは定休日です』だけではコミュニケーションが取れていないし、ファンも生まれない。そのうち、登録されてはいても誰も見に来てくれないアカウントになってしまうかもしれない。

発信だけでなく、双方向のコミュニケーションを取って、会話する。そういうコミュニティを作る。そのうえで、ライブ配信をするなり、動画を作って上げるなりするほうが、効果的なのではないかと考えています」(タカさん)

利益よりブランディングを高めることを目指す

1回目の配信で、500件の受注を受けるほどのタカとケイコの食&旅チャンネルですが、「利益はほぼ出ていません」とタカさんは言います。「手数料として生産者さんから頂いているのは売上金額の20%。そこからBASEの手数料を支払うと、わずかしか残らないんです。それでも、大好きな生産者さんたちをみんなに知ってもらいたい、生産者さんたちがこの販売を通じて勇気を得られればいい、という想いでやっているので、利益を得ようと思っていない、というのが本音です」と笑顔で語ります。

さらに、「本気でやろうと思えば、月に500万円は売り上げないと商売にならない」とも言います。

そのため、飲食店の経営者やシェフがライブ配信を始めるのであれば、商売と考えず、ブランディングの一環として行うほうがいいとアドバイス。「本気でやるには、人員を割く必要もあり、持ち出しが発生する。それより、お店のブランディングをして、『こういう状況だから、食べに行くことで応援したいな』と思ってくれるお客さん、ファンを増やすほうが、今の時代は大切なのではないでしょうか」とタカさんは解説します。

「ある種の実験だと思えばいいと思いますよ」と言うのはケイコさんです。「元手をかけなければ、こういうこともできるかもしれない、ああいうこともできるかもしれないと、型にはまることなく、いろいろと実験する場所にできますよね。新しい出会い、新しいビジネスがそこから生まれれば上等だ!くらいの気持ちで始めてみるのがいいのではないでしょうか」

配信をこれからしたいという人にとって現実的なのは、飲食店であればメニュー紹介や、そのメニューを家庭料理に落とし込んだレシピ動画をFacebookのストーリーズで配信することではないか、とタカさん。「パーティー料理を作るのは大変だから、あまり視聴する人が増えないかもしれないけど、みんなが大好きな料理に落とし込んだり、またはシェフによる家庭料理への工夫というのは、みんな見たいですからね。動画配信から利益が生まれなくても、強い絆で結ばれるファンが育てば、長期的に見て良い結果を生むと思いますよ」とアドバイス。

ケイコさんも、「まず、Facebookページの『いいね』を最低300ほどは集めてからストーリーズで配信すれば、数名が見てくれるようになるでしょう。見ている人が多ければ多いほど、関心を持つ人も増えますよ」と具体的な方法を解説してくれました。

まずはやってみてからクオリティを上げていく

今のところ、主にZoomミーティングをFacebookのライブ配信ツールとして使っているタカとケイコの食&旅チャンネルですが、使えそうなツールをいろいろ試している最中でもあります。

特に気になっているのは、前述の「StreamYard」。「ティッカー(テキストを流して表示するもの)を設定できるし、テレビ番組のようにチャンネルロゴも表示できる。Zoomミーティングより番組らしくできるのがいいですね」とケイコさんが説明します。

「StreamYardなら、数台のカメラのスイッチングもスムーズにできるし、それによって1枚絵では表現できない立体感が映像に生まれる。プロの手法が使えるんです」(ケイコさん)

「わたしたちが始めたばかりの頃は珍しかったライブ配信も、今では一般化しつつあります。となると、わたしたちの次のステップは、いかにクオリティを上げていくか。機材にしろ、ツールにしろ、内容や配信時間のコンパクト化など、商品だけでなく、番組自体も価値あるものにしていきたいですね」(タカさん)

ツールや機材に頼らず、人間の手でできることを心を込めて行うのも、タカさん、ケイコさん流です。番組内で使うか使わないかわからなくても、フリップを手作りするケイコさんと、発送メールやイレギュラー対応メールにテンプレ通りの文言ではなく、一言添えるタカさん。

ライブ配信前の生産者とのやり取りや、セット商品の組み合わせの際にも、「これだったら、食べたいと思うよね」「これぐらいの価格だったら購入しやすいかな」と、タカさんは生産者のことだけでなく、顧客のことも考慮しながら入念に準備をしていきます。

「番組では、わたしが進行役として話すことが多いんですが、番組の前後に大変な作業をしているのはタカさんです」とケイコさん。「タカさんの商品選びの確かな目だけでなく、商品の説明ページや商品への同梱メッセージの作成など、そういう細やかな配慮が、この番組のクオリティの基礎になっているのかなと思います」と語ります。

クオリティを高めつつ、今後は生産者と視聴者がお互いの顔を見られるような取り組みをしていきたいというタカさんとケイコさん。これから始めたいと考えている人に、次のようなアドバイスをしてくれました。

「ビギナーズラックがあってもなくても、続けていってください。動画に限らず、どんどん情報を発信していってください。ファンコミュニティができてくれば、自ずと結果はついてきます」(ケイコさん)

「放送で食べているようなテレビなどのマスコミでさえ、いろいろとやらかしているんです。ましてや、今はコロナ禍にあるわたしたちが失敗したっていいじゃないですか。そう考えたら、何も恥ずかしいことなんてないんです。まずはやってみる、そして修正を重ねながらクオリティを追求していくということが重要なんです」(タカさん)