近年、多くの店長や店舗オーナーは慢性的な人手不足に悩まされています。人手不足を解消するために外国人をアルバイトとして雇う機会も増えてきました。国内での外国人労働の状況や、雇用の注意点について解説します。

増え続ける外国人労働者

日本は人口減少や少子高齢化といった課題に直面しています。それにより発生した問題の1つが労働人口の減少です。1997年から2016年の間で15歳~64歳までの生産年齢人口は約1,000万人減少しました。
※総務省「労働力調査」及び「人口推計」より

しかし、女性や高齢者を雇用する取り組みが進み、人口減少の一方で就業者数は2009年から2019年までに約410万人増えています。
※総務省「労働力調査(基本集計)2019年(令和元年)平均(速報)結果の要約」より

同時に外国人雇用も進み、政府は外国人労働者を受け入れられる環境作りを進めています。2018年12月には新しい在留資格である「特定技能」の創設などを盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法」改正案が衆議院で可決され、2019年4月より施行されました。

2019年9月に内閣府の発表した「企業の外国人雇用に関する分析」によると、外国人労働者が就業者全体に占める割合は、2008年の0.8%(48.6万人)から2018年の2.2%(146万人)へ上昇していることが分かります。

「企業の外国人雇用に関する分析|内閣府」より引用
(引用元:企業の外国人雇用に関する分析|内閣府

今後も、小売店や飲食店といったお店の人手不足を解消するために、アルバイトとして外国人を雇う機会も増えてくるでしょう。

外国人を雇う際の注意点

人手不足解消のために、外国人人材の活用は非常に有効です。しかし、1つ間違えれば法律違反になったり、文化や宗教、考え方の違いでトラブルになったりします。

外国人アルバイトを雇う際の注意点を正しく理解しておきましょう。

在留資格を確認する

万が一、在留資格を持たない、持っている在留資格ではお店で働くことのできない外国人をアルバイトとして雇った場合、そのお店のオーナーは「不法就労助長罪」に問われます。これにより、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。

外国人を雇う場合、在留カードを確認して、本人の在留資格の有無と内容を必ず確認しましょう。在留資格とは、外国人が日本に入国して60日以上滞在する場合に、入管法に従って発行される資格です。

主に下記のような在留資格があります。

在留資格 条件
永住者 法務大臣が永住を認める者
定住者 法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者
日本人の配偶者等 日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
永住者の配偶者等 永住者等の配偶者又は永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者
文化活動 収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動又は我が国特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行い若しくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動(この表の留学,研修の項に掲げる活動を除く)
留学 各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動
家族滞在 芸術,宗教,報道,高度専門職,経営・管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,技術・人文知識・国際業務,企業内転勤,介護,興行,技能,文化活動,留学の在留資格をもって在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動
特定活動 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動(外交官等の家事使用人,ワーキング・ホリデー,経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者等)

(引用:在留資格一覧表(令和元年11月現在)|出入国在留管理庁

職種や業種を問わず、アルバイトやパートとして働ける在留資格は、「永住者」や「定住者」、「日本人の配偶者」、「永住者の配偶者」です。

一定の範囲内の職種、業種、勤務内容に限って働ける在留資格は下記の通りです。

  • 教授
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 高度専門職1号
  • 高度専門職2号
  • 経営・管理
  • 法律・会計業務
  • 医療
  • 研究
  • 教育
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 企業内転勤
  • 興行
  • 技能
  • 特定活動
  • 特定技能

特定活動の主なものはワーキング・ホリデーで、技能実習生等の法務大臣が指定した活動に限り、就労が認められています。技能実演については、技能実習法に基づいて実習という位置づけで働くことが認められています。詳しくはこちらでご確認ください。

ちなみに、これらの在留資格であっても、他の在留資格に属する事業や活動で収入を得ようとする場合、在留資格変更の許可が必要です。

また、「留学」、「家族滞在」に関しては、働くためにはそもそも「資格外活動」の許可をもらわなければなりません

特に留学生の場合について、以下で解説します。

留学生の場合

留学生は、勉学を目的に日本に訪れているため、原則アルバイトはできません。しかし、「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトすることができます。この取得のために入国管理局へ申請書を提出します。法務省は、申請の許可に2週間から2カ月かかると表記しています。留学生には、事前に申請を済ませておいてもらう必要があります。

許可を得ても、留学生の労働時間は「1週間で28時間まで」と制限されています。これは残業を含めての労働時間です。ちなみに、大学の長期休暇中は例外として「1日8時間・週40時間まで」の勤務を認められます。1週間で28時間と同様に残業を含めた時間です。

雇用の届出は必須

雇用対策法28条に定められているとおり、留学生を含め、外国人アルバイトを採用した際には、必ず届出をしなければなりません。届出は「外国人雇用状況届出システム」もしくは「ハローワーク」で、氏名や在留資格、在留期間などの情報を届出ます。

また、雇用条件により、雇用保険や社会保険の加入対象となる場合は、その手続きも必要です。

適切な労働条件で雇う

外国人が日本で働く際、彼らの母国の法律ではなく、日本の法律が適用されます。労働基準法や労働契約法、最低賃金法などの法律です。そのため、雇用契約書や労働条件通知書などの書類を作成しなければなりません。もし、日本語の苦手な外国人であれば、彼らの母国語で書類を作成する必要も出てくるでしょう。

実際に雇用したら、先ほどの時間の条件を超えないように注意しましょう。少しでも超過すると不法就労助長罪に該当しますので、注意してください。

宗教の違いを理解する

初詣やクリスマスなどのイベントからも分かる通り、日本は宗教に寛容な風土を持っています。しかし、外国人は必ずしもそうではありませんので、注意が必要です。次のポイントを押さえましょう。

不必要に宗教のことを聞かない

雇用する方の宗教については、事前に調べ、しっかりと理解しておく必要はありますが、本人に不用意に聞くことは避けましょう。「必要のない限り、聞かない」がマナーです。宗教上の理由で身につけている衣装や装飾品、書籍などについて、根掘り葉掘り聞くのは避けましょう。

食事の制限

宗派によって、食べてはならないもの、食べるのを避けるべきものがあります。例えば、イスラム教では、豚、アルコール、血液、宗教上の適切な処理が施されていない肉、うなぎ、イカ、タコ、貝類、漬け物などの発酵食品を禁じられています。

他の宗派については、こちらをご確認ください。もし飲食店でまかないを出すといった場合には、食べられないものがないか、事前に質問しておきましょう。

生活面

生活面でも注意しましょう。「1日に数回祈祷を捧げる宗派」もあれば、「クリスマスを祝わない」という人もいます。すべてを把握することは難しいかもしれませんが、特別な配慮を必要とすることを理解しておきましょう。

採用までの流れ

外国人アルバイトを採用するまでの手順を3つにまとめました。

1.在留資格を確認する

在留資格を「在留カード」で確認しましょう。在留資格と仕事内容や条件が合致しない場合は、雇用することができません。資格の変更が可能か、などについて確認し、雇用にあたり法律に抵触しないようにしましょう。

留学生の場合には、資格外活動許可を得ているかどうかも在留カードを見れば分かりますので必ずチェックしましょう。

2.雇用契約書を結ぶ

書面で雇用契約書を結びます。日本語の苦手な外国人であれば、彼らの母国語で契約書を作成する必要もあります。

3.各種届出や登録を行う

雇用の届出以外に、雇い入れる外国人本人に、就労資格証明書の交付申請や在留更新許可申請など、必要に応じて申請や届け出を指導しましょう。

外国人を雇える環境を整えよう

外国人アルバイトを雇う際の注意点について主に解説しました。「外国人を雇うには、注意点や配慮すべき点が多くある」とハードルを感じられたかもしれません。

一方で、人手不足を補うために、外国人雇用の必要性を改めて感じた方もいるでしょう。現場の状況を踏まえ、お店の店長やオーナーとして外国人雇用の判断をしていきましょう。

監修:デイライト法律事務所

※本記事の内容は、2020年2月27日現在の情報を元に掲載しています。