痛ましい事故が後を絶たないのに、まだまだなくならない飲酒運転。飲食店の経営者、スタッフにとって、飲酒運転は事故の被害者を生んでしまうだけでなく、店の評判にかかわる大問題です。事前にできる予防策、そしてお客様への働きかけを考えてみましょう。

今回は、外食繁盛サポーターとして、飲食店の開業サポートなどを行なっている中島孝治さんにお話を伺い、飲食店ができる飲酒運転防止策についてまとめました。

絶対に止めることがお店もお客様も守る

「よく来てくれる、大きなお金を落としてくれる、いいお客様だから飲むなと言いづらい」「飲酒運転を止めたら二度と来なくなってしまうかも」といった、車を運転して来店している(のではないかと思われる)お客様の飲酒を止められない、あるいは車に乗って帰らないでと言えない、という飲食店側の声はよく聞きます。しかし私は「良いお客様だと思うなら、なおのこと止めろ」と、あえて言います。

飲酒運転は、あなたのお店によくしてくれるお客様の人生をめちゃくちゃにしてしまう、地獄への曲がり角です。お客様だけでなく、そのご家族も、自損事故でなければ相手の方の人生も、そして飲酒運転幇助罪に問われるあなたの人生も、めちゃくちゃになります。お酒を飲んで判断力が低下している人の「大丈夫」という判断を、なぜ受け入れてしまうのでしょうか。冷静な判断ができるあなたが、お酒を飲んでいる人に判断をゆだねてはいけません。大事なお客様の人生を守るために、そしてあなたのお店を守るために、飲酒運転は止めなければなりません。

また飲酒運転を止められたら来なくなるお客様は、あなたのお店を大事に思ってくれないお客様です。あなたに迷惑を掛けてもいいと思っているのですから。そういうお客様を受け入れていることで、本当にあなたのお店を大事に思ってくれているお客様が離れていきます。長い目で見てどちらを大事にすべきかは、おのずからわかるはずです。

入店時からの関係性が大きなカギに

とはいうものの、やはり「言いづらい」というのはわかります。またお客様が聞き入れてくださるように言わなければ、意味がありません。その大きなカギはお客様との距離感です。

それは入店時のあいさつから始まります。型どおり「いらっしゃいませ。何名様ですか?」で席へご案内しているのでは、お店側とお客様の間につながりは生まれません。そこで「今日はお寒いですね」など、マニュアルにはない言葉を交わすことが大切です。礼儀正しく、しかもお客様に「大勢のお客様の一部」ではなく「あなた」と「私」という関係で接しているという言葉や態度が、お店側とお客様の間につながりをつくります。これがあるとないとでは大違いです。入店から席にご案内するまでに、こうしたつながりをつくっておくことが、飲酒運転の注意のみならず、そのお客様にお店のファンになっていただくための大きな一歩になります。

こうしたつながりのあるお客様には「お願い事」もしやすくなります。それは「お飲みになったら運転してお帰りにならないでくださいね」もそうですし、「もうちょっとお声を小さくしていただけますか?」もそうです。また「代行はいつ頼みましょうか?」と、こちらから「当然、代行を頼みますよね」という言い方も出来ると思います。

飲酒運転撲滅への取り組みを“見える化”する

店側はお客様が車で来店していると知らずに飲酒させてしまい、飲酒運転でお客様が逮捕されるという事態も起こります。その捜査の過程で警察がお店に来るということも、当然あります。そうしたとき「お客様が車で来ていることを、お店側が知っていたかどうか」が問題です。言った言わない、聞いた聞かないの水掛け論になることもあるでしょう。

そんなときに、やはり重要になってくるのが、「この店は日ごろから飲酒運転撲滅に積極的」という、実績をつくっておくことです。言葉は悪いですが、「うちの店は飲酒運転撲滅を推進していますよ!」というアピールをしておくことも、必要ではないかと思います。

例えば店のトイレなどに「飲酒運転撲滅ポスター」を貼っておく、ハンドルキーパー(お酒を飲まない人)のステッカーや代行運転の案内をテーブルスタンドなどに貼っておく、ハンドルキーパー用の割引特典を用意するなど、飲酒運転対策の “見える化” にはいろいろできることがあります。飲酒運転撲滅ポスターは、地元警察署に行けばもらえますが、デザインやサイズがお店のスタイルに合わなければ、自作のものでもかまいません。

さらには、近隣の飲食店仲間、あるいはスタッフを集めて、地元警察に「飲酒運転対策の講習会」の講師に来てもらいましょう。依頼すれば無料で来てくれることが多いですよ。人数を集めるのが難しかったら、地元警察で「飲酒運転撲滅ポスターをください」と頼んで、店の名刺を置いてきましょう。警察へ「うちの店は飲酒運転撲滅に取り組んでいます」ということをしっかりアピールすることも、やっておいて損はないと思います。

中島孝治(外食繁盛サポーター)
1961年鹿児島県生まれ。2001年、(株)ナレッジ・ネットワークスを立ち上げ、飲食店専門のシステム開発に従事する。2003年3月、千葉の南行徳で「手羽矢南行徳店」を開業。オープンから半年間、店長任せで倒産寸前まで陥ったが、その後は自ら現場に立ち、計数管理を活用しながらメニューや接客改善に努め、33カ月連続で前年同月売上100%以上を達成。2019年9月に飲食店を卒業し、外食向けeラーニング普及とコンサルティングに専念。
著書に『ラストオーダーは稼ぎ時』(商業界)がある。