新商品の開発や販売を行う際の考え方に、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という言葉があるのをご存知でしょうか? マーケティングの基本概念とも言われるこの言葉ですが、聞いたことはあっても細かい意味や役割については、意外と知らない方が多いかもしれません。知っているようで意外と知らない、二つの概念の違いを分かりやすく解説します。

消費者が欲しいものを提供するのがマーケットイン

「マーケットイン」とは、ずばり「買い手の欲しいものを作る」という考え方のことです。市場におけるニーズや要望に着目し、顧客や消費者が求める製品やサービスの提供を行います。

一見、当たり前のことのようにも聞こえますが、その役割は決して単純ではありません。

そもそも日本では、長く続いた高度経済成長期の間、いい製品を作れば売れるという考え方が一般的でした。しかし80年代に入ると市場が飽和、大量生産技術の向上などもあり、各業界で製品の供給過多が発生するようになりました。

そこで提唱されるようになったのがマーケットインの考え方です。市場調査を行い、買い手の立場からニーズを分析。それをもとに製品やサービスの開発、販売などを行います。これによって、消費者が必要とするものを必要な数だけ提供できるようになるのはもちろん、競合他社に対する差別化につなげることができます。

企業が作りたいものを提供するのがプロダクトアウト

一方の「プロダクトアウト」とは、「売り手が作りたいものを提供する」という考え方です。売り手である企業側の技術やアイデア、方針などを優先して、製品やサービスの提供を行います。

もともとは高度経済成長期以前の従来的なやり方のことですが、2000年代以降、新たに見直されるようになった概念でもあります。

というのも、マーケットインのスタンスで買い手の声に耳を傾けるだけでは、今までにないような革新的な製品やサービスを生み出すことができないからです。買い手である消費者は、必ずしも自分が欲しいものにはっきりと気がついているわけではありません。商品の開発や販売については、あくまで素人であるため、消費者の意見に従うだけでは、市場に隠れた潜在的なニーズを拾い上げることができないのです。

これを象徴するかのように、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズは、こんな言葉を残しています。「顧客に何が欲しいかを聞いて、それを与えようとするだけではいけない。完成するまでに、彼らは別の新しいものを欲しがるだろう。」

そこで再び注目されるようになったのが、プロダクトアウトの考え方です。企業の持つ技術力やノウハウ、設備といった強みを生かし、独自のアイデアで売り手の立場から新たな需要を生み出していくことが、重要視されるようになりました

どちらか一方が優れているわけではない

マーケットインよりもプロダクトアウトの方が優れているということではありません。

消費者の意見を完全に無視して、企業の都合だけで製品やサービスを提供するのには、大きなリスクも伴います。どれだけ斬新でユニークな製品やサービスでも、消費者のニーズに合わなければ、決してヒットすることはないからです。

マーケットインとプロダクトアウトの調和が重要

そのため現在では、マーケットインとプロダクトアウトは、どちらか一方を選べばいいという二元論的な考え方では、捉え切れない概念となっています。

買い手が必要とする、まだ見ぬ革新的な製品やサービスを提供するためには、双方の考え方を融合させていくことが大切です。両者それぞれにメリットがありますので、皆さんが今後、新しいビジネスを考える際にも、この姿勢が役立つかもしれません。