新型コロナウイルスの影響で業績が低迷している観光業を支える一手として、新たな『マイクロツーリズム(小さな旅)』という旅行の形が注目されています。

これは、星野リゾートの星野佳路氏が提唱したものです。マイクロツーリズムに取り組んだ同社では、2020年8月までに4分の3の施設が前年比と同等の需要に回復しつつあります。

観光業がコロナ禍を生き残る手助けとなり得る、マイクロツーリズムの概要や実際の準備について解説します。

マイクロツーリズムは「ご近所観光」

まずは、概要について解説します。

マイクロツーリズムとは

近年、国内の観光業は、都市部や海外からの観光客を主なターゲットとしていました。しかし、新型コロナウイルスの影響により、観光客は都道府県や国を越えた旅行を避ける傾向にあります。

そこで、商圏内(片道1時間ほど)に住んでいる人々に近場の温泉地やグルメ、自然散策、文化体験などを楽しんでもらうのが「マイクロツーリズム 」です。

マイクロツーリズムは、コロナ禍であっても、長距離移動による感染リスクを避けながら旅行できるのが特長です。「外出自粛で遠方の旅行には行きにくいけれど、どこかに出かけたい」という観光客の心理を捉えたものです。

マイクロツーリズムでの売上回復事例

いち早くマイクロツーリズムに取り組んだ星野リゾートは、4月〜5月は苦境に立たされましたが、6月以降少しずつ回復の兆しを見せ、8月には運営する45施設中4分の3の施設で前年並みに回復しつつあります。

具体的な施設を挙げると、「界 遠州(静岡県浜松市)」では、元々インバウンド比率が4.3%と低かったのも要因でしたが、7月の稼働率は前年を超えました。そして、利用者全体におけるマイクロツーリズムの比率は、前年32.6%から58.4%に増えました。

「星のや京都(京都市)」では、訪日観光客が47.9%を占めていたものの、コロナ禍で0に。
そこから、7月の稼働率は前年よりも下がりましたが、75%ほどに戻っています。マイクロツーリズムの比率は、前年8.9%から29.1%に増えました。

このように、マイクロツーリズムの需要が伸び、施設全体の回復にもつながっています。

マイクロツーリズムに取り組む宿泊施設側の準備

ここからは、星野リゾートで行われている例を参考に、コロナ禍でマイクロツーリズムに取り組むための準備について解説します。

①3密回避の徹底

コロナ禍においては、お客様に安心感を与えることが最も重要です。
人の出入りがある場所でのアルコール消毒・定期的な換気だけでなく、より安心安全に利用できる環境を整えます。

自動チェックイン機の利用

スタッフとの対面ではなく、機械を利用してチェックイン手続きを行うのも、密を避ける一つの方法です。

貸し切りの実施

食事処など、お申込みのグループ単位で個室を貸し切って利用してもらいます。予約制で提供すると管理しやすいでしょう。

食事を客室へテイクアウト

「ビュッフェなどを楽しみたくても密になりやすいから心配」というお客様のために、客室にテイクアウトしてもらう形で提供する方法もあります。

浴場やプールなどの混雑状況をお知らせ

エリアの人の出入りを確認し、利用者に共有できるスマホアプリも登場しています。こうしたアプリを活用し、人の少ない時間帯に利用してもらうことで、密を避けることができます。

ただし、宴会など密を前提としたサービスは、抜本的に変えることは難しく、できる部分から取り組んでいくことが望ましいでしょう。

②自治体・企業との協力

施設単体ではなく、地域の自治体・企業と協力してマイクロツーリズムに取り組むことも、1つの方法です。

自治体との協力事例

京都市は、京都市観光協会と共同で「地元応援!京都で食べよう、泊まろうキャンペーン」を実施しています。キャンペーン期間中、対象の飲食店・宿泊施設では、京都市民・市内に勤める方への特別メニューや特別プランを用意しています。

企業との協力事例

星野リゾートの「奥入瀬渓流ホテル(青森県十和田市)」は、コロナで売上の厳しいバス会社から借りたオープントップバスの運用を行っています。お客様には、オープントップバスで自然の豊かさを感じてもらいながら、密を回避できています。

また、同じく星野リゾートの「リゾナーレ那須(栃木県那須町)」では、小学校の休校で牛乳のニーズがなくなった牧場が作ったミルクジャムを、リゾナーレブランドの3施設で扱っています。

企業と施設、双方にとってメリットとなりつつ、お客様にとっても新しい魅力が生まれている好例です。

③ニーズを捉えた広告宣伝・販売促進

マイクロツーリズムのニーズを捉えた効果的な広告宣伝・販売促進を行いましょう。

1.デジタルとアナログを組み合わせる

お客様のエリアが絞られているため、デジタルだけでなくアナログを組み合わせてみるのも良いかもしれません。ポスティングチラシ・新聞広告・看板などを活用しましょう。ご近所観光でアクセスしやすいことを踏まえ、リピーターを狙うことが重要です。

2.マイクロツーリズムのニーズを捉えて提案する

マイクロツーリズムでは、以下のキーワードなどのニーズを想定できます。施設や地域の観光資源を生かせるプランを提案してみてはいかがでしょうか。

キャンプ|ハイキング|トレッキング|バーベキュー|自然散策|露天風呂|離れ|コテージ|貸し切り風呂|ワーケーション |テレワーク|リモートワークなど

3.ポータルサイトではなく自社サイトで発信する

膨大な数の施設を取り扱うポータルサイトでは、価格競争になりがちで、コロナ禍での特徴的な取り組みがお客様に届きにくいです。そこで、自社サイト・SNSなどを通して、施設の取り組みについて発信しましょう。

地域・施設の魅力を再発見しよう!

マイクロツーリズム自体は、これまでにもお客様に提供されてきた旅行の形といえます。しかし、近年では訪日観光客の需要が伸び、積極的に取り組んでいなかった施設もあるかもしれません。

地域・施設の魅力を改めて見直してマイクロツーリズに取り組み、コロナ禍でもお客様の獲得を目指してみてはいかがでしょうか。