テレワークと地方の観光振興を目指して国が推奨する「ワーケーション」。
これにより、旅先で仕事をする「ワーケーションプラン」を新たに提案している宿泊施設が増えています。
しかし、単に「ネット完備、ビジネスでも利用できます」とうたうだけでは、十分なワーケーションプランとは言えません。お客様のニーズをつかみ、適切な利用環境を用意したり、プランを設定したりする必要があります。
この記事では、利用環境の整え方やプランの立て方、料金プランの事例など、ゼロからワーケーションプランを導入するためのポイントについて解説します。
ワーケーションを利用したいお客様のニーズとは?
ワーケーションとは、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、リゾート地や地方の旅先で仕事と休暇を両立させる新しい働き方です。
ワーケーションプランを提供するためには、まず、お客様のニーズを理解する必要があります。ワーケーションでは具体的に、次のような利用シーンが想定されます。
①個人で利用する
「温泉でリラックスしながら働きたい」「仕事に没頭できる場所に行きたい」などのニーズから、会社員やフリーランス(個人事業主)が利用するケースです。普段の疲れを癒し、何かと集中しにくい会社や自宅から離れて働くことができます。
②家族で利用する
「仕事と家族サービスを両立させたい」「フリーランスの夫婦でワーケーションをしたい」などのニーズから、家族で利用するケースです。家族サービスをしながら、仕事中だけ別行動もできます。宿泊用の部屋とは別に、仕事に集中できるスペースを用意してあると親切でしょう。
③会社のメンバーやチームで利用する
「プロジェクトを集中して進めたい」「自然に触れてクリエイティブに働きたい」などの理由で、会社のメンバーやチームで利用するケースです。会社にいると日々の雑務や会議などに追われ、プロジェクトがなかなか進まない、ということもあるでしょう。
ワーケーションは、短期集中でプロジェクトを進めるチーム合宿に適しています。会議室やホワイトボード、モニター、プロジェクターなどが用意してあると仕事がはかどります。
具体的なプラン設計方法
需要が高まりつつあるワーケーションですが、決まったフォーマットは特になく、宿泊施設独自プランを作ることが差別化につながります。
ここからは、具体的なプランの作り方を4つのステップで解説します。
STEP1:他社を参考に料金設定・サービス内容を決める
実際に各地で提供されているワーケーションプランを参考に、イメージをつかんでみましょう。
地域 | 料金設定 (2名1室 1人あたり) |
食事 | 特徴 |
熱海(静岡県) | ¥6,490~¥20,350 | 朝食付き | ・2日目以降は550円の割引 ・Wi-Fi完備 ・エステやアミューズメント利用可 |
安比高原(岩手県) | ¥7,600~¥15,100 | 2食付き | ・5泊以上が条件 ・ラウンジ利用可 ・別途ワークルーム利用可(2,000円/日) ・Wi-Fi完備 ・無料コーヒーサーバー有 |
久米島(沖縄県) | ¥8,000〜¥37,900 | 朝食付き | ・ラウンジ・テラス利用可 ・Wi-Fi完備 ・FAX・コピー・プリンター利用無料 ・フリードリンク付 ・プール利用可 |
※各社Webサイトの2020年9月の料金設定を参照
Wi-Fi完備は当然で、仕事をできる共有・占有スペースを提供している宿泊施設が目立ちます。連泊を条件に価格設定を安くしているところもあり、このほかには一棟貸しで完全なプライベート空間を提供しているプランも。
一方で、ホワイトボードやモニター、プロジェクターなどの完備、高度な通信環境を用意している宿はまれで、それらを提供するだけで差別化につながるかもしれません。特にインターネット回線は、ビジネス利用に適したセキュリティと、動画視聴やビデオ通話等をスムーズに行える高速通信を確保できるといいでしょう。
観光地巡りや体験型アクティビティをプランに組み込み、周辺の観光資源を有効活用することもできます。インターネット検索で、「地名+ワーケーション」で競合のワーケーションプランを調べてみましょう。
STEP2:補助金制度を活用する
ワーケーションプランを提案する際には、政府や都道府県の実施する補助金制度を活用することもできます。
ワーケーションの推進事業費補助金
環境省は、新型コロナウイルスの経済対策(雇用維持)として、温泉地や国立・国定公園でワーケーションやエコツアーを企画する事業者を対象に、補助金を提供しています。ネット環境の整備費用や、歩道の修繕・海岸清掃などの人件費や諸経費まで支援の対象になっています。
すでに1,100件以上の応募に対し、501件の事業者に支給が決まりました。令和2年度の募集は終えていますが、環境省に限らず、各都道府県などでもワーケーションプランの補助金事業を行っています。事業所のある都道府県のホームページや窓口に確認を取ってみましょう。
Go To トラベルキャンペーン
観光業の需要喚起を目的とした「Go To トラベルキャンペーン」では、第一弾として宿泊・日帰り旅行の代金の35%を割引し、割引分を給付します。(2020/7/22出発の旅行から)
例えば、宿泊旅行で1人あたり50,000円の注文を受けた場合、割引額(給付額)は17,500円、旅行者の支払い額は32,500円となります。連泊・利用回数の制限はありません。
※ただし、支援額には上限があります。(宿泊の場合1泊2万円/人。日帰りの場合1万円/人)
9月以降は旅行代金の割引に加え、旅行先で使える地域共通クーポンも付与される予定です。
本事業に参加するには、事業者の申請登録が必要です。詳しくは「Go To トラベル事業者向け申請サイト」をご確認ください。
STEP3:試験的に導入してみる
ワーケーションプランを決めたら、正式にプランを提供する前に、試験的にお客様の満足度を確認してみるといいでしょう。
提供するプランに合わせて、個人・家族・会社のチームのモニターを募集します。事前に了承を取った上で、旅行中の様子を撮影させてもらい、宿のWebサイトやSNSへの掲載・発信に協力してもらうといいでしょう。
そこで得た感想や意見を元にプランを改善し、本格的なプランの提供につなげてみてください。
STEP4:正式に受付を開始する
WebサイトやSNSで告知の上、正式にワーケーションプランの受付を開始します。利用していただいたお客様にはアンケートを取り、プランの改善に努めましょう。
予算が許すなら、ホワイトボードやモニターなどのビジネスツールを導入してみてください。もしくは、周辺のレンタルオフィス・研修施設と提携してサービスを提供することも手段の一つです。
柔軟な発想でワーケーションプランを作ろう!
ワーケーションは、新しい働き方として今後広がっていくでしょう。
宿泊施設の設備や地域の観光資源を活かし、独自のワーケーションプランでニューノーマルの時代に適した宿泊施設の戦略を取ってみてください。